海の対談
インフルエンザも完治したので、投稿を再開します!
「うん、いいですね」
「……」
女に変化しろと言われた上に、水着まで着せられた。
非常に不愉快だ…ふざけやがって、一応主神だろ?
まるでおもちゃみたいに扱いやがって、マジで。
「はぁ…しかし、ここにいる全員の中で1番胸が大きいのね」
「それは言うなよ」
「……」
やっぱりこの姿になると、茜は自分の胸を気にする。
いつも通り少しだけ自分の胸を撫でた後、少しがっくりした。
仕方ない反応ではある、俺の見た目、なにげに茜そっくりだからな。
「しかし、何の模様も無い白の水着を選ぶとは、遊び心がありませんねぇ」
「うっさい」
「服装を気にしてたら女装を楽しんでるように思えるし…いや、女装…?
女その物になってるんだし、女装とは違う…のかな?」
「まぁ、女の性と男の性、両方持ちたいという人はいるでしょう。
色々な憧れを吸収してしまう圭介さんが
その能力を得たとしても不思議はありません」
「それも要員としてはあるんだろうな」
色々な憧れを吸収してしまうと言う能力はたまに面倒だな。
まぁ、今回はどう考えても時雨が悪いんだけど。
抵抗しても、最終的に承諾した俺にも問題はあるかも知れんが。
「で、この後はどうするんだ? 俺を女にしてよ」
「いえ、別に何も? むしろ何かあると?」
「やっぱりウザいでしょ? さっさと」
「ごめんなさい!」
何故かすごい勢いで暴落していく時雨の株。
どこら辺に叡智の神としての威厳があるのか不思議なくらいだ。
しかし、何だか憎めないところがチラホラあると言うのもまた不思議。
「と、とにかく一緒に泳ぎましょう」
「はいはい、分かったよ」
俺は茜たちと同じ様に海に入る事にした。
やっぱり海は冷たいな。
まぁ、ぬるい海って何だよって感じだけど。
「うーん…」
俺が海に入ると、今度は時江が何かを考え始めた。
「時江、どうしたんだ?」
「え? いや…この浅瀬じゃ旬の魚は来ないだろうと思っただけだよ」
「…この騒がしい砂浜に何故魚が来ると思うよ」
海の中では既に茜たちが全力で遊び回っている。
水希と茜がお互いに水を掛け合っていたり
キキとキャンが血眼になって一緒に泳いだり
藜と葵が泳ぐ練習をしていたり
刀子が少し離れた海中で震えていたりする。
「ま、まぁ…でも、魚が来る場所には来てるみたいだよ? ほらあそこ」
「ん?」
時江が刀子の方を指差した。
少しだけ近づき、刀子の方を見てみると
小魚が刀子に群がり、刀子をツンツンとつついている。
しかし、刀子はそんな魚に対し微動だにもせず
ただただ直立不動のままで海面だけを見ていた。
「……とう」
「だ、大丈夫‥‥」
と、言っているがとてもじゃないが大丈夫そうには見えなかった。
いやうん、全く見えない…目がマジなんだからな。
足が付いてるはずなのに目がマジで海面を見ている、海面だけを。
景色を楽しんでるとかじゃな…スゲー必死だ。
「…‥‥刀子、無茶すんなよ?」
「む、むむ、無茶なんて」
「やー!」
「うわぁああ!」
そんな刀子にトドメを刺したのは海水をぶっかけたサラだった。
サラは刀子の顔めがけて水を笑いながら掛けた。
その行動に一切の悪意は無い。多分、茜と水希の真似をしただけだ。
現に近くに居た四季にも海水を引っ掛けていたようだしな。
「うわぁああ! 錆びる! 錆びるぅ!」
「え? え?」
海水を引っ掛けたことで刀子が異常な程に反応したことに対し
流石のサラも困惑の表情を隠せなかったようだ。
キョトンとした表情で口をあんぐりと開けポカーンとしてる。
ただ海水を掛けただけで、ここまで暴れるとは思っていなかったんだろう。
「錆びねーよ」
「錆るっぅう!」
そして、あまりにも混乱していたからなのか
刀子は近くに居た俺に思いっきり抱きついてきた。
丁度身長差のせいで、刀子の顔面はこの身体の胸部にうずくまる。
「……」
同時にさっきまで暴れていた刀子が完全に沈黙した。
「刀子、何黙ってる」
「うわぁああ! こ、これは邪念! これは邪念なんだぁああ!」
「うぉ!」
しばらくの沈黙の後、刀子は俺の胸部から顔を出し
脱兎の如きスピードで海水から飛び出して、砂場へ逃げた。
「お、おい」
「く、来るな! この妖怪デカ乳め!」
「おいこら! 誰が妖怪だ! 妖怪はお前だ馬鹿!」
「うるさーい! お前の胸! 母親みたいで何かいやなんだ!」
「は、母親って…」
「人を堕落させるおっぱいと言う事でしょうか」
「……時雨、お前なんかドンドン変な方向を向ってるよな、マジで」
やはり時雨の暴走がおかしな方向へ展開している気がする。
いや、最初からこいつは変な奴だった気がするが。
それでも、ここまで変態チックな発言をするような奴では無かったと思う。
「あー…絶対あるわ、今のあなたに母性的な魅力」
「なんでそう言いきれるよ」
「いやだってね…山童と河童が居るからね、信者に。
私にはあまり母性的な魅力は無いから、あなたにあると考えるのが自然よ」
「そう言う母性的な魅力は男である俺では無く、女であるお前にあるべきだったと思う」
「私、結構厳しい達だから母性とか感じないでしょ」
それは分かる気がする…修行もかなりスパルタみたいだし。
いやまぁ、俺の修行も相当苛烈だとは思うけど。
「むしろ母性的な魅力は私にあるのでは無いでしょうか。
叡智って母親っぽいと言うか」
「……へ」
「なんで笑ったんですか今」
「お前に母性的な魅力は無い」
「そんな断言します!? 普通!」
「どっちかというと、母性的な魅力がありそうなのは時江だ」
「あ……不覚!」
ま、時江は全くこっちの話を聞いていないんだけどな。
ひとまず、今回は時雨が自爆したり散々やらかした感じだったな。
最近の時雨は大概そうだけど。




