料理開始
「10日間、よく生き残ったね」
「長かった…ね、料理教えてくれるんだよね!?」
「勿論、約束したしね、それによく分かったと思うけど
料理の時もちゃんと食材に感謝をすることが大事だからね?」
「はい、身に染みて分かりました」
全員、かなりやつれているな、10日間だしな。
とは言え、10日間の時間を感じたのは茜たちだけだろう。
俺達はそこまで時間を感じていない、5時間程かな。
「長かったですね」
「煎餅を食べながら机に膝を付いて喋るな、だらけすぎだろ」
「何か、あなた時間が経つにつれてだらけていくわよね
最初の方は、あんな無駄に勿体ぶった事言って神聖な雰囲気醸し出してたのに」
「自分より下の相手しか居ない場合は神聖さを出してますが
やっぱり同格や格上の前だと維持できませんね」
「同格や格上の前でだらけるな」
ま、格上だとか格下だとかを考えるような場所でも無いけどな。
しかし、普通は格下の前ではだらけて、格上や同格の前では
だらけないと思うが、どうやら普通とは違うみたいだな。
まぁ、同格の前ではだらける、と言うのはあるかも知れないけど
格上の前でだらける、とかは絶対にあり得ないな。
「しかし、その理論じゃ最初に私達と会話をしたときは
私達の事を格下にみてたと言う事になるのかしら」
「いえいえ、話を良く聞いてください、維持できないと言ったんですよ?
短期間なら維持が出来ます、初対面とかだとね。
何だかんだでなれ始めたらだらけてきます」
「そりゃそうね」
最初からだらけた姿は見せられないだろうしな。
一応は面子があるし、出来れば隠そうとするはずだ。
でも、なれ始めて面子とか気にならなくなってきたらだらけると。
実に自然ではあるが、それでもやっぱり格上と見なしてる相手の前で
だらけるというのはどうかと思う。
「それじゃあ、約束通り料理を教えよう。
まずは今まで教えた基本を思いだして」
「はい」
「思いだしてきたら、厨房へ行って手を洗いましょう」
「分かりました!」
「今日、あなた達が料理を出す相手は神様3柱だから
失礼が無いよう、全力で料理を作るのよ」
「はい!」
予想は出来ていたけど、俺達が審査員役になるんだな。
時間的には夕食くらいになりそうだ。
「そうなると、料理が完成するまで退屈ですね」
「料理、食べられるの? ずっとお菓子食べてたけど」
「大丈夫ですよ、流石に5時間ずっとお菓子を食べてたわけじゃありません」
「そうね、10分に1回くらいの頻度でお菓子を食べてたわね。
確かにずっとでは無いけど、決してあまり食べてないとは言えないわよ?」
「太るんじゃねーの?」
「太りませんって、私は神ですよ? 姿など自在です」
「便利なもんだな、そりゃ好き放題するわけだ」
「一応、私達のこの姿は素の姿なんだけどね、体格は変えられても
顔までは変えられないし、その内、顔だけ太るんじゃ無いの?」
「…想像するとかなり奇妙な姿になりますね…お菓子は少し控えます…」
「顔の肉は変えられないんだな」
「顔までころころ変えられてたら、どの神が何の神か分からなくなるしね」
「因みに、性別を変える事が出来る神は、私が知る限りあなただけです」
「そうなんだ、意外だな」
「元の四宮の神も性別変えられたのかしら、ずっと女だった記憶があるけど」
「分かりません…しかし、考えてみると男の神はかなり少ないですね」
「そう言えばそうだな」
男の神は今の所俺くらいしか見たこと無いからな。
時江も時音も時雨も、皆して女だから。
「ふーむ、男は女神の方が憧れを抱けて
女は女神の方が親しみを抱きやすいのでしょうか?
あるいは、男の神というのが圭介さんを指し示す形になってて
女神が生まれやすいのか、いえ、違いますね。
巫女です、大体の信者は巫女をみて神を想像しますからね。
その巫女をみて、この神社の神は女神なのだと感じやすいのでしょうか」
「あり得るわね、男の神主とか…でも、何か気にくわないわね」
「えぇ、人間のくせに神の主等と名乗るとは」
「宮司で良いんじゃねーの?」
「大体は神主と言いますしね、女の方は巫女と呼ぶのに
男が神社に居れば宮司では無く神主と殆どの信者は呼びます。
そもそも、神その物が具現化している状態で宮司など必要無いでしょうが」
神社の代表者を宮司と言うが
現状では神その物が具現化しているから、その神自身が神社の代表だから
神主、もとい宮司などは必要ないと言うことだろう。
巫女は神に仕える女性を指すから、代表である神が居る現状でも問題は無い。
「後、神社内に男をすませるとか、正直勘弁して欲しいわ…」
「私達は女神ですしね、男が居ると少し気まずいです」
「男である俺がそこそこ泊まったり泊めたりしてるけど
気まずそうにした姿を見たことが無いが?」
「いやほら、圭介は圭介だし」
「男ではありますが、ハッキリとした安心感があります」
「謎の信頼だな、意味が分からない」
「いや分かるでしょ、こんなに女に囲まれてる神社で寝泊まりして
何かしらの関係を持って無いってだけで十分過ぎる程信頼に値するわ」
「しかも全能神、その気になれば全ての女性と関係を持てるほどの地位で
それをしてないと言うだけでも、やっぱり信頼できます」
「これはまた、素直な褒め言葉だな」
割とディスってくるのに、今回は普通に褒められた、少し驚きだ。
「だから安心なのよね、水希に手を出される心配も無いし」
「巫女の方の心配だったのか」
「勿論よ、私は別に姿を消して眠りゃ良いだけだし」
「それで良いとは、また随分と…やはり乙女ではありませんね」
「軍神よ、私、戦いの神よ?」
普通なら性別は男であるべき神だが、女なんだよなぁ。
「何故男ではないのですか?」
「な! まぁ実際、本来なら男であるべき神だけど!」
「妖怪達の影響だろう、最初に復活したのは妖怪達の信仰のお陰だしな。
文月山の妖怪達は水希とも水菜とも交流があっただろうし
だから、最初に戦いの神で想像したのが女性だったと言うだけだろう
ほら、あの2人かなり強いし、特に水菜」
「水希、水菜、ありがとう…」
「それはありそうですね、圭介さんの例もありますし
でも、時音さんは昔から女でしたが」
「そうなのか?」
「まぁ、山明神社の歴代巫女は例外なく強いからね、その影響が大きいんでしょう」
「流石は軍神の巫女、としか言えませんね」
やっぱり山明の巫女達は全員強かったわけだ。
そうなると、水希達の実力がどこら辺なのか気になるけど。
「その話の流れで、私は問います、水希さん達は歴代巫女で何番目に強いのですか?」
「そうね、私の記憶では、2番目ね」
「ほぅ、1番が居ると」
「えぇ、神々の戦いで派手に暴れてた子。
あいつは強かったわ、まさしく戦いの申し子って感じだったしね」
「あぁ、四宮の巫の女次に強かった」
「やっぱり四宮の巫女もその時が強かったんだな」
「化け物でしたよ? あらゆる攻撃に対し的確な反撃を入れてました」
「へぇ、茜と同じ戦い方なのか」
「えぇ、当時の巫女と茜さんの戦い方は大分似てますね
茜さんの反撃を手加減無しに容赦なく圧倒的な力で叩き込んでた感じです。
攻撃も積極的でしたし、動きも素早かったものです。
しかしながら、その巫女ですら神降ろしは不可能でした。
つまり、茜さんの潜在能力は当時の四宮の巫女よりも高いと言う事です」
へぇ、そりゃ凄いな、本気で修行をすればすぐに吸収するし
このまま鍛えていけば、そん時の四宮の巫女よりも強くなれるだろう。
「因みに、その時も四宮の巫女は刀を使っていました」
「やっぱり刀なんだな、四宮の巫女は」
「舞に刀を使うほどだしね、代によって剣術は違うっぽいけど」
葵と茜でも戦い方違うからな、同じ刀を使っていても。
「茜さんの才能は色々な方面に成長しますよね、今は料理の才能が成長してるでしょう」
「鍛えて貰ってるからな」
「あ、良いに追いしてきた、ヤバ、お腹空いてきたわ…」
「俺も…」
「本来食べる必要が無いはずなのに、美味しい物は食べたいですよね」
茜たちの料理、早く出来ないか、少しワクワクしながら待つことになった。




