目覚めたもう1匹の妖精
恐らく植物の妖精のサラ、多分土の妖精の四季を新しく迎え、少し経った。
ずっと眠っていた四季が目を覚ました。
「ん・・・ここは何処かな?」
「あぁ、起きたか、ここは四宮神社だ」
「四宮神社・・・あ、あぁ!神様!」
「ん?俺が神様だって知ってんのか?」
「はい!もちろん!もちろんです!」
四季はもの凄く元気だ、と言うか、どうやらこの子の方は記憶があるみたいだ。
と言うことは、サラの事も知ってるのかもな。
「ふむ、じゃあ、お前の事、聞かせてくれ」
「はい!」
四季は嬉しそうに自分の事を話し始めた。
「私は土の妖精です、実はこの神社の境内の土から生まれました!」
「ふむ、やっぱり妖精か」
「はい!あと、私の上に生えていた植物も同時に妖精になったと思うんですけど・・・」
「ばぁ!」
「ひゃーーー!!」
四季が少し周りをキョロキョロしている時に、後ろからサラが大声で驚かせた。
まぁ、気が付いてなかったようで、四季は思いっきり驚愕していた。
「あ、起きたんですね、その子」
「あぁ」
「あはは!!そんなに驚かないでも良いのにね~」
「いきなり後ろから大声を出されたら驚くだろうさ」
「あれ? 茜はそこまで驚かないよ?」
「そりゃあ、いつも後ろに幽霊を連れてたらな」
「もう慣れました!」
睦月が憑いてから、最初の頃は茜は良く驚いてた。
それが今では一切驚かなくなっている。
成長を感じるな。
「び、ビックリしたぁ・・・」
「災難だったな」
「うぅ・・・いたずらっ子の妹を持つと大変なんですね・・・」
「お?え、何?あたしはあなたの妹なの?」
「そうだよ、あなたは私の妹、同時に生まれたけど、土だった頃に私はあなたを養ってきたし」
「土?あんた何言ってんの?あんたは妖精じゃん」
「うーん、妖精は元は自然その物なんだよ?まぁ、あなたは覚えてないだろうけどね」
「???」
何だろう、この姉妹、姉は非常に優秀なのに妹は馬鹿って、それとも姉が異常なのか?
よく分からないが、まぁ、今のところは良いか。
「うーん、なんだかよく分からないけど、分かった!あたしはあなたの妹なんだね!」
「うん、そうだよ」
「分かった!これからよろしくね!お姉ちゃん!」
「うん!」
とりあえず、俺達は2人に自分たちの名前と彼女らの名前を教えた。
どうにも、四季の方も名前は無いそうで、俺の付けた名前を受け入れてくれた。
「それで、お前らはこれからどうすんだ?」
「どうするってどういう意味ですか?」
「家だよ、住むとこが無いと不便だろ?」
「うーん、私達はまだこの場所でしか存在できないんですよね」
「どうしてだ?」
「神社は神様のお陰で穢れが殆ど無いので大丈夫なんです」
「でも、神社の外はまだ穢れが充満してるって事だよね~」
「はい、だから、神社の外には出られないんですよ」
うーん、と言うことはだ、こいつらは今は俺の周りでしか存在できないのか。
妖精ってのは不便だな。
「と言うことはだ、この周りでしか過ごせないって事か」
「そうなりますね」
「よく分からないけど、つまり!あたしは神様の近くにいれば良いんだね!」ペタ
そう言うと、サラは俺に張り付いた。
何か、良い香りがする、植物の妖精だってのがよく分かるな。
「何引っ付いてんだよ」
「近くにいないと消えるらしいから!」
「こんなに近寄らなくても良いだろ?」
「そうなんだけどさ、もうちょっとこのままいさせてよ!」
何でまた・・・まぁ、良いか。
「しかし、まぁ、こいつは何処の植物だよ」
「私の記憶が正しかったら、神社の裏の植物だったはずです」
「あぁ、あの植物達か、毎日水をやってただけはあるな」
この神社の裏には2年前から生えている珍しい植物達がある。
まぁ、最初に育てようと言ったのは茜で、世話は俺がしてたな。
もしかして、それで懐いてるのか。
「うーん、神様って暖かいんだね」
「人間も暖かいぞ?」
「確かに!茜ちゃんも暖かかったね!」
「だから、離れてくれないか?」
「もうちょっとお願い!」
うーん、何で俺は子どもにもてるのかね、まぁ、世話はするが。
いや、動物にも懐かれてたな。
そうして、しばらく経ち、サラはようやく離れてくれた。
「ふぅ、ようやく」ギュウ
サラが離れてすぐに、今度は茜が抱きついてきた。
「何だよ」
「いや、その、羨ましくて・・・」
「ふぅん、そうか」
「じゃあ、ついでに私も膝に座るよ~」ボン!ぴょん、すと
「おぉ!スゲー!兎だ!お姉ちゃん!人間が兎になった!」
「サラちゃん、あの人はどう見ても妖怪だよ、兎の耳が見えてたし」
「じゃあ、折角だ、あたしも乗ってみようかね」ボン!トットット、ペタ
「おぉ!今度は狸だ!スゲー!」
「本当に、この神社は妖怪が多いですね」
「人間も来てるから問題ない」
実際、この神社は妖怪が沢山来る、まぁ、人間も結構来るし問題は無いがな。
あぁ、それと、こいつはここの境内の土だから色々と知ってんのか。
「なぁ、もしかして、この神社の先代とかも知ってんのか?」
「いいえ、私が記憶があるのは3年前までです」
3年前か・・・ふむ、俺がここに来た頃の記憶しか無いのか。
「だから、花木さんが兎鍋にされそうになった時も知ってますよ」
「おぉ、あの時から意思があったんだね~」
「はい!」
ふーん、その頃か・・・じゃあ、先代の話は聞けそうに無いな。
もしかして、俺がこっちに来たときと同時に意思を持ったのかもな。
さて、とりあえず重いな、でも、暖かいな、肌寒いこの時期に丁度良いぜ。




