体調不良の1日
成長して、色々な所が成長した茜。
しかしまぁ、成長してもどうしようもない物はある。
それは色々あるけど、今回は誰でもなり得る。
「ケホ…ケホ…」
風邪だった、茜は必死に修行しすぎたのか、風邪を引いてしまった。
まぁ、寒い季節から暖かい季節に変っていくこの節目だからな。
当然、寒暖差の影響で免疫が低下するから風邪を引きやすくなる。
「うぅ…あ、頭痛いです…」
「まぁ、風邪ですし、しかしまた嫌な時に風邪を引きましたね。
まさか生理中に風邪を引くなんて」
「め、迷惑を、ケホケホ」
「おいおい、辛いときくらいは頼れよ、お前は本当に自分を無下にするよな」
「ごめんなさい…ケホケホ」
大分辛そうだな、風邪の症状と生理の症状が同時に出てるから当然か。
俺には生理の辛さとかはよく分からないけど、大変だというのは知っている。
「しかし安心なされい茜殿! 茜殿が大変な時は! このキキとキャンにお任せを!」
「茜様の代わりに、家事はわっち達が行ないます、頼ってください!」
「ご、ごめんね…ケホ」
「薪を集めてきたぞ、火は付けた方が良いか? 割るのも今すぐやろうか?」
「いや、割るのは後で良い」
「茜! 風邪に効く果物や野菜を取ってきたよ!」
「あ、ありがとう…」
「梨がこの時期に成っている思えないが…何故梨がある?」
「私が作った!」
「お前本当、植物に関しては凄いよな、土は四季が?」
「はい、栄養たっぷりの土にしましたので、きっと凄く美味しいですよ!」
「あ、ありがとう…」
「ほれ、貸してくれ、その梨」
「うん!」
サラから梨を受け取り、皮を剥いで皿に盛った後、茜に出した。
「あ、ありがとうございます」
「ま、これ位は余裕だ」
その気になれば、茜の風邪を治すことは出来るんだろうけどな。
でも、それは何かルール違反だろう。
それに、風邪は定期的に引いた方が良いとも言うしな。
風邪を定期的に引くことで大病の防止になるとか聞いた事がある。
すぐに風邪を治すのは、実はあまり身体にはよくないとも聞くしな。
後、茜はいっつも動いてばかりだし、こうやって休むのも大事かな。
生理と同時って言うのは、ちょっと災難だけど。
「ほれ、口開けろ」
「あ、ありがとうございます」
「ほれ、よく噛めよ」
「はい…いただきます、あむ、むぐむぐ…あ、凄く甘くて美味しい…」
「ふっふっふ! あたしの自信作! もっと食べて!」
「うん、美味しくいただくね、ありがとう、サラちゃん」
何か、茜がお姉ちゃんという感じで感動した。
初めて茜とサラ達と出会った時は、同じくらいの身長だったのに
今じゃ、茜は大きく成長し、サラ達はそのままで変化無し。
性格だって、あの頃は甘えん坊だった茜が、ここまで立派になるとはなぁ。
茜の成長をハッキリと感じる。
まぁ、今は風邪を引いてダウンしてるんだけどな。
「キャン、そっちの掃除は終わったか?」
「あぁ、そっちは?」
「大丈夫じゃ、茜殿ほどではないが、ほぼ完璧なのじゃ!
次は神社の境内を掃除せねば!」
「その前に料理をしないと、おかゆで良いかな」
「折角じゃし、七草がゆとかを作りたいのぅ」
「時期が違いすぎるって、あれは1月7日に食べる粥だし」
「それは知っておるのじゃが…仕方あるまい、普通の粥を作ろう」
「そうそう、それで良いって、あぁ、粥を作るのはわっちがしておくから
キキは境内の掃除を頼む」
「しかしキャンよ、キキの方が料理は出来るぞ?」
「ほ、ほぼ引き分けじゃ無いか、それに練習したいんだよ。
良いから境内の掃除をしろ!」
「分かった分かった、仕方あるまい」
普段は喧嘩ばかりをしているキキとキャンの2人だが
ほぼただの遊び、だから、茜が辛いこのタイミングでは
喧嘩は殆どせず、大人しく協力をしている。
こんな2人の姿を見ることが出来るのは誰かが体調を崩したときくらいだ。
しかしながら、四宮神社に体調を崩しそうな奴は茜くらいしかいない。
自己管理も相当完璧だから、殆ど体調は崩さないしな。
まぁ、それでも風邪は定期的に引くが、それは仕方ない事だろう。
と言うより、風邪を引かない方がむしろ身体には悪いと言うしな。
「さて、包丁は…あれ? 包丁は何処に…」
「包丁はここだ、一応研いでたんだ」
「おぉ、光り輝いている…新品同様だ…」
「まぁ、こう言うのは得意だからな、料理も出来るには出来るが
そこは茜にもお前らにも見劣りするから、こう言うので役立たないとな。
鍛冶ってのも、割と需要があるもんだし」
茜の使ってる刀は色々あるけど、基本最近腰に付けてるのは刀子の刀だ。
俺が作った刀は正直強すぎる。
妖怪退治に使おう物なら、まず勝負にはならない。
対人でも、切れ味は相当ある訳で、下手したら相手をさくっとやっちまうほどだ。
だから、茜は刀子の刀を使っている、逆刃刀、とかじゃ無いが
致命傷を与えるのが難しい刀、そう聞くと弱そうに思えるかも知れないが
実は刀の切れ味を丁度よく弱くすると言うのは難しい。
刀子が本気を出せば、相当鋭利な物が作れるが
茜は相手を殺そうとはしない。
下手な事をして相手を殺さないようにも
切れ味は殺しておかないと駄目だからな。
妖怪退治の時もこの刀なら良い修行になるし、丁度良い。
強すぎる刀というのは、案外使い勝手が悪い物だ。
「確か暇なときに包丁を作ってると」
「そうだ、ただ居候するって訳にもいかないし、少しは稼がないとな」
刀子の包丁の切れ味は素晴らしく、色々な料理人が使っている。
言ってくれれば、その言われたとおりの形状の包丁を完璧に作ってくれる。
しかし、生産量があまりないから、1品1品の値段はかなり高い。
それでも買い手が付くわけだから、かなりの業物なのだろう。
「くしゅん…うぅ…」
「うーん、熱はまだ引かないな」
「す、すみません…すぐに治しますの、くしゅん!」
「謝る必要は無いっての、世話くらい焼かせろ」
茜がダウンすれば、四宮神社は総出で動く。
全員が率先して茜の為に動くというのは本当に凄いことだ。
茜はそれだけ大事にされていると言う事だな。
体調を崩したとき、誰が自分を大事にしてくれてるか分かる物だな。
その日、四宮神社はいつも以上に来客も多かった。
花木達化け兎、全員、久里達化け狸、全員、葵、水希、時音、時雨
もう、数え切れないほどの連中が四宮神社にやって来た。
茜が本当に全員から愛されているというのが分かり、本当に嬉しかった。




