3年後の日常
四宮祭りが終わり、信仰はゆっくりと、確実に上昇していった。
しかし、結界が広がるのには時間も掛かり、3年が経過した。
今は秋、木々もゆっくりと紅葉を進めていっている。
周囲が山だらけだと、その変化がハッキリと分かるな。
しかし、3年も経つのに、茜はそこまで成長はしていなかった。
「うんしょ、うんしょ」
「忙しそうだな」
「はい、参拝客も増えましたし!」
「だな」
茜は今は9歳だ、身長も少しだけ大きくなっている。
ただ、性格や修行云々は昔のままだ、まぁ、瞑想は連続で2時間出来るようになったがな。
しかし、良く一緒にお風呂に入りましょうよ、とか一緒に寝ましょうと言われる、甘えん坊だな。
「うへへ~今日も疲れたよ~」
花木がやってきた、こいつはあの四宮祭りの後、人間達に呼ばれ
村で団子屋を営んでいたりする、それも、かなりの人気店だ。
しかし、そんな状況でも毎日四宮神社に足を運んでくる。
傘下の妖怪兎たちを引き連れてな。
「今日も来たのか?良く毎日来るな」
「前もいったと思うけど、ここは落ち着くんだよね~」
まぁ、実際こいつと久里の支援のお陰で、お金も結構入ってきている。
最初はボロボロだった四宮神社も、今は綺麗になり、少しだけ大きくなった。
「はい、花木さん、お茶ですよ」
「あぁ、ありがとうね~流石は茜ちゃんだよ~」
「ま、優秀だからな、接客の方は・・・」
「はう!そんな目で私を見ないでください!」
茜は接客のスキルはかなりのスピードで成長している。
しかし、戦闘のスキルとか、神降ろしとか、妖怪退治、重要なお祈り
力の使い方は相変わらず成長していない。
「茜はきっと戦闘向きじゃ無いのね」
「かもな」
「だ、大丈夫です!ぜ、絶対に強くなって見せますから!」
茜はそう言うが、3年の間、殆ど力が変わらなかったらな、不安になるぜ。
まぁ、気長に待とうか、こいつはまだ9歳だ、何処かのタイミングで急成長するかもな。
「やっぱり花木も来てたのか」
「あ!久里ちゃん!今日も来たんだね~」
「そりゃ来るよ、あんたが言うとおり、ここは落ち着くからね」
久里はあの祭りの後、大工の仕事をするようになった。
今は狸の大工屋さんと言う場所を設立し、そこの社長さんだ。
まぁ、大工のまとめ役をどう言えば良いのかはイマイチわからないから社長さんって事で。
因みに、狸の大工屋さんと名付けたのは花木と茜だ。
「にしても、お前らは仕事で忙しいてのに毎日の来るよな」
「参拝客の人も結構来てるよね~」
「あぁ、毎日のようにな、ありがたいよ」
「なんで参拝客はありがたくてあたし達はちょっとだけ邪険にしてるんだい?」
「1度来たらかなり長いこと居るからだ、ま、別に良いけどな」
こいつらは1度来たら何時間も神社に居座る、悪い気はしないがな。
まぁ、たまに今日泊まるよ、なんていきなり言うのは勘弁して欲しい。
花木なんかたまに一緒にお風呂入ろうよとか言ってくるし面倒だ・・・ま、動物状態でだけどな。
「圭介は厳しいのか甘いのかよく分からないよね~」
「そうか?でも、悪事なんか働いたら容赦はしないぞ?」
「分かってるよ~、悪いことはしないからさ~、兎鍋にされるのは勘弁だしね~」
あれから3年も経ってるのに、こいつは兎鍋の事をまだ覚えている。
それだけ記憶に強く残ってるのか・・・ま、俺達との最初の会話だからな。
「あぁ、そうだ、渡すもんがあった」
「ん?渡す物?」
「あぁ、当然、茜にもあるぞ」
「え?何ですか?」
俺はポッケからお守りを取り出した。
このお守りは神様だしお守り位作れないとなと思い、作った物だ。
「わぁ!お守りですか!?」
「お守りなんて、神社みたいだね~」
「ここは神社だ」
「にしても、あたしだけ何でこんなに沢山なんだい?」
「お前の傘下に渡せ、あ、それと皆のお守りは種類が違うぞ」
「え?」
渡したお守りはこうだ、花木には商売繁盛、久里には家内安全、茜には大願成就で睦月には縁結びだ。
まぁ、幽霊や妖怪や巫女に渡すのは変な来はするがな。
「なんだか、初めて圭介から何かをもらった気がするよ」
「私もです、圭介様、ありがとうございます!」
「家内安全か、まぁ、大工なんて仕事してるし、良いかもね」
「えっと、なんで私は縁結びなのかしら?」
「・・・気にすんな」
「?」
睦月に縁結びを渡したのは妹との再会を祈ってだ。
でも、それだけじゃ無い・・・睦月がもし妹に再会したときに、俺らの縁も残ってたら良いなと思ってだ。
「ところで、このお守りはいつ返せば良いの~?」
「返さなくてもいい、このお守りは効果が発動したら消えるから」
「どういう意味だい?」
「神様お手製だからな、少し細工をしたんだ」
「神様って何でもありなんですね」
「神様だからな」
神は人の思いを直に受ける、その受けた思いの量が多ければ多いほど、その力を得る。
ま、信仰のされ方次第では万能になるんだよな。
俺が受けた思いは、心優しくいたいや、万能にないたいとかが多かった。
ただ、1度得た力は消えないようだ、まぁ、神様だしな。
「流石は神様だね~」
「少し不便なところもあるがな」
「例えば?」
「人間以上に1人じゃ存在できないって事だ」
「それは大丈夫だよ~、どうなっても、私は圭介を信じるからさ~」
「あたしもね」
「もちろん!私もです!」
「私もね」
花木の傘下の兎たちもワイワイ騒いだ、そんな中で、俺は深く思った。
こいつらに会えて良かった、神様も意外と楽しいもんだな。




