大打撃の後
……起きないな、結構起きない、もう部屋に運んで1時間は経過したが。
「全く起きないんだが?」
「…お、おかしいわね…」
「これ、ひょっとしてしん」
「死んで無いから! て、手加減したから!」
神様クラスの手加減ってどんな物なのだろうか。
山を簡単に消し飛ばせる攻撃を手加減して10分の1ではなったとして
その時の威力はどれ程にぶっ飛んでるのだろうか。
岩が1つ簡単に消し飛ぶレベルとかかな。
それは当然、人が食らえば即死級な訳だが。
「どれ位の手加減ですか?」
「可能な限り最小にしたわ」
「そもそも私に結構痛い思いをするくらいですし、相当なのでは?
と言う事は、やはりこれはもうすでに」
「死んで無いから!」
「うぅ…」
あ、良かった、茜は生きてた様だ。
と言ってもまぁ、俺の予想では全員無事だと思ってるけど。
「よ、良かった…茜は無事ね…」
「流石は四宮の巫女、頑丈ですね」
「痛い…うぅ、わ、私は……」
「よぅ、起きたか」
「あ、おはようございます、圭介様…うぅ、頭が痛いです」
「頭なのですね、大丈夫ですか? 大事はありません?」
「はい、わ、私は何とか…」
「うぅ! 頭痛ーい!」
今度は水希が自分の頭を撫でながら元気よく起き上がった。
随分とデカいたんこぶだな、そりゃぁ、時音の直接攻撃を食らったわけだし。
てか、時音に直接攻撃を食らったあげく、あの衝撃波を食らって
起き上がったのが2番目って、かなり頑丈だな。
「くぅ、やっぱり時音様には勝てないのかぁ!」
「何を当たり前の事を」
「でも時音様、あの拳骨は酷いと思うの
あたい、お星様が見えたよ、綺麗だったなぁ。
天の川が見えた! 後、乙姫様と彦星様が見えた!」
「一瞬でそこまで解析すんな、それもう妄想でしょうが」
「でも、大きなお星様が1個とか見えるよりは
沢山見える方が普通だとあたいは思う!」
「くだらない理論を…てか、頭の一撃しか覚えてないの?」
「え? 他に何かあったっけ?」
「しょ、衝撃波だよ…多分、水希ちゃんも食らったはずだけど…」
「覚えてない!」
「だよね、気絶してたからね」
「でも、痛い思いは覚えてる! 頭痛い!」
「拳骨されたし、頭は痛いよね…」
「うぅ、でも、今回で神様のすごさが改めて分かった!
やっぱり神様超強い! あたい達が全員で挑んでやっと互角!」
「あの戦いの何処に互角の要素があったの? 馬鹿なの?
あなたも軍神の巫女だというなら、相手との戦力差とかしっかりと捉えなさい」
「全員で挑むって言うのは、時音様と他の神様を除いて
全員出って意味です!」
「水希ちゃん~、ハッキリ言うけど~、それでも手も足も出ないよ~」
「いや、やってみれば! と言う事で2回戦目を!」
「止めぃや! 絶対無理やから!」
「お師匠もそんな事を!? いや、勝負はやってみなくちゃ分からない!」
「2回戦は面倒だし、圭介にお願いするわね」
「絶対に無理です!」
「け、圭介様だとしても、あ、あたい達なら!」
「無理だよぉ!」
「むぐぅ! むぐ、むぐぐぅうぅ!」
あ、茜が水希の口を全力で押さえている。
全力の拒絶という感じだな。
「それに私はどんなことがあっても圭介様に刃を向けるなんて出来ないのぉ!」
「むぐぅう!」
「普通はどの神が相手だとしても、刃を向けるのは自殺行為ですがね」
「あなたになら問題無いと思うわ」
「戦いが専門外とは言え、私も神ですよ?
同じ神からの攻撃ならいざ知らず、ただの人間からの攻撃など
避けるまでも無く容易に防げますよ」
「そりゃそうね」
「あら、否定しないのですね」
「否定すると思ったの? いくらあなたの事を酷評してるからと言え
事実は事実のままに述べるのが私よ」
「そうですか」
「む…ぐぅ…」
「……えっと、茜、そろそろ水希の口から手をどかした方が良いわ。
死ぬわよ、もう落ちてるけど」
「あ、あぁ! ごめん水希ちゃん!」
「本気でいやだったのですね」
「そりゃそうでしょ、私でもごめんよ? こいつと戦うなんて」
「それは同意します…ただの拳骨で大打撃です、本気だったらどれ程恐ろしいか…」
「俺の拳骨がいやなら、ちゃんと仲良くすることだな」
「肝に銘じます」
こういう風に言われると、やはり自分が規格外だとよく分かる。
何でただの人間だった俺が四宮の神になったんだか。
完全に偶然だとは思うけど、偶然ってのも侮れない。
何が理由かは大体分かってるんだがな。
(あなたは既に私よりも規格外ですよ)
「……んぁ? 時雨、何か言ったか?」
「え? 何も言ってませんが?」
「…ん?」
勘違いか? 何か聞えたような気がするんだけど。
「何か幻聴でも聞えたの?」
「いや、多分勘違いだろう」
「そう…なのかしらね」
「どうした?」
「いや、ちょっと一瞬、変な気配を感じたから」
「変な気配?」
「えぇ、あなたに似てるけど…何処か違う気配を」
「……よく分からないな」
「……四宮の神、その気配が2つあるというのは中々」
「え? もしかして」
「本来の四宮の神が復活しそうなのかも知れません。
信仰の力が回復を始めたから」
「待って、え? それじゃあ、もし本来の四宮の神が復活したら
圭介はどうなるの?」
「人間に戻るか、はたまたこのまま別の神として存在するのか。
どちらかは分かりませんがね」
……ただの人間に戻る、それはそれで悪くないかも知れない。
本来の四宮の神がどんな姿なのかも興味はあるし。
そうだな、もし時雨の仮説があっているとすれば
復活させてみるのも良いだろう。
そもそも結界の拡大が目標なんだし
時雨の仮説が正しいのなら復活は間違いないんだけどな。
「ですが、先の話でしょう、今は巫女達の修行を優先です」
「そ、そうね…うーん…」
「所で時音さん」
「何よ」
「もしも私の仮説があっていて、四宮の神が復活し
圭介さんが人に戻った場合…あなたはどうします?
ただの人間である圭介さんに付いていくか。
真の神である、四宮の神に付いていくか」
「語るまでも無いわ、例え四宮の神が復活したとしても
私を助けてくれたのは紛れもなく圭介よ。
四宮の神なんて、パッと出てくるだけでしょう?
何でそんな奴に付いていかないといけないのよ」
「そうですか、嬉しい返事を貰えましたよ」
「あなたが喜んでどうするのよ」
「いえ、同意見だったので」
「パッと出て来ただけのあなたも?」
「人間で例えると、命を救われた相手が人間であるとき
誰が神に感謝をするのですか? 恩人に感謝をするでしょう?
私達からして見れば、圭介さんは恩人ですので」
「……何か、先の話なのに随分と深刻に話すな。
……素直に嬉しいんだけど」
「私も圭介様に付いていきます!」
「四宮の巫女が抜けたら、復活した四宮の神は散々ね」
「そうですね、ふふ」
先の話でしか無いのだが、その時が来ても…何だか安心出来る。
これなら、心置きなく信仰を集めることが出来るな。




