四宮祭り、最終日
かなり盛大な餅つき大会も終わり、俺達は神社にも戻った。
まぁ、ここは境内だけどな、その後、俺と茜と久里は花木とその傘下の兎のお餅を
沢山食べながら、1日を過ごした、本当、初めてだったよ、あんなに美味い餅は。
そして、四宮祭り、最終日、今日もお客さんは多かった。
「今日で最終日ですか」
「あぁ、そんで、今日は巫女のお祓いの奴も無い」
「何でですか?」
「最終日だからな、そん時くらい、皆でワイワイしようかなと思ってな」
俺達はこの3日間、全員で動いたりはしていなかった。
だから、せめて最終日くらいはって言うことでお祓いは今日は無しって事だ。
「よーし!じゃあ、皆で回りましょう!」
「そうだね~、結構楽しみよね~、あ、あなた達も来る~?」
「は、はい!もちろんついていきます!頭領様!」
「駄目よ~?ちゃんと花木って言いなさいよ~」
「は、はい、花木様!」
「じゃ、あんたらも楽しみな」
「大丈夫です、結構楽しんでるんで」
「そうかい?まぁ、楽しんでるなら良い」
俺達は花木の傘下の兎も一緒に祭りを楽しむことにした。
「あぁ!、圭介様!リンゴ飴買ってください!」
「はいはい、親父さん、いくらだ?」
「そうだな、タダで良いよ」
「は!?本気か?」
「あぁ、今日は最終日だしね、それに、神様からお代を頂くわけにはいかねぇからな」
親父さんはニコニコ笑いながら、俺にそう言った。
そういえば昨日の餅つき大会で神様だってバレたんだよな。
「後からやっぱり金を払ってくれって言わないでくれよ?」
「あぁ!約束すらぁ!」
「わぁ!ありがとうございます!」
「後ろの嬢さん達もどうだい?」
「くれるんならもらうよ」
「ありがとうございます~」
「おぉ!これがリンゴ飴ですか!初めて食べます!」
「ひゃー!ありがとうです!」
親父さんはリンゴ飴を俺達に渡した、本当はもらう予定は無かったが
くれるって言うから、俺もリンゴ飴をもらうことにした。
「美味しいですね!」
「そうだな、リンゴ飴なんて初めて食った」
「あはは、甘いね~」
「やっぱ、餅とか蛇とは違うね、美味しいや」
「ん?お前は蛇を食ってたのか?」
「狸は雑食だよ?まぁ、人間になれるようになってからは野菜が主食だったけど」
狸は雑食だったのか、人間っぽいな、まぁ、食ってるのは生だろうがな。
「あの、歯とかは磨くんですか?」
「聞いたこと無いわね、実際どうなの?妖怪さん?」
「私は毎日磨いてるの~、神社でだけど」
そういえばこいつの歯ブラシが何故か神社にあったんだったな。
本人が言うには良くここに来て止まってたりするし、歯ブラシがあった方が良いかなぁって思って
とかいってたな。
「あたしは綺麗に洗った葉っぱで磨いてるね、こう、昔の癖で」
「狸は歯を磨くのか?」
「普通は磨かないよ、でも、妖怪になり出した頃になんだか口の中が気になってね」
動物は基本的には歯を磨かない、理由は虫歯にならないからだ。
ただ、妖怪化は少し人間味を帯びるんだろう、その為、口が気になったって感じか?
ま、正確な事は分からないがな。
「私と同じだね~、やっぱり妖怪になったら人間っぽくなるのかもね~」
「うーん、どうだろう、もしかしたら人間と同じ様に知識を持つからじゃ無いの?」
「あ、あり得るね」
だから普通の動物が妖怪になったら妙に人間っぽくなるのか。
多分、人間を人間たらしめている要素の1つがこれだ。
大きな知識、それを動物が得れば、その動物は人間に近くなるって所だろう。
普通はここまでにはならないだろうがな。
「知識ってのはすごいな、大きかったら動物を大きく変えれるんだから」
「そうね」
「本当に怖いよね~、知識ってさぁ~」
「そうだな、恐ろしい物だ」
俺が死ぬ前、人間の知識は恐ろしい事になっていた。
いともたやすく行われるえげつない行為、無邪気に生き物を殺す子ども。
知識は大きくなりすぎると、ただひたすらに大きくなる、それは人間だからだろうがな。
だから、人間には道徳や倫理といった戒めが生まれた。
「どうしたんですか?」
「いや、何でも無い」
でも、ここは大丈夫だろう、妖怪や神という人間を客観的に見ることが出来て
忠告を与える事が出来る存在がこれだけ居るからな。
それに、ここの人達は悪いことは考えないだろう、
俺がそんな事を考えていると、ドン!という大きな音が聞えた。
「わぁ!花火だ!」
「へー、これが花火って奴か、綺麗だね」
「すごいね~、やっぱり人間は頭がいいね~」
花火か、は、やっぱり知識ってのはすごいもんだ。
でも、知識ってのはやっぱりこういう為に使うべきだよな。
知識を使い、大きな娯楽を生み、その娯楽を更に素晴らしい物に。
この循環が上手くいけば、知識は殺戮の道具ってだけじゃ無くなるだろう。
やっぱり、便利さよりも、素晴らしさを追求した方が、人間は力強く生きれるのかもな。




