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神様に転生したので、スローライフを満喫します  作者: オリオン
青年期、第9章、成長への躍動
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些細で確かな成長

物足りないという感情は何かを欲している証拠。

正直、そんな感情が無くなったら色々と終わりなきがする。

その状況に満足していると言えば聞こえは良いが

これ以上の状況を望んでいないと言えば聞え方は変るだろう。

そう言う場合は外から強制的に刺激を与えないと駄目だろうな。


「新しい体験、楽しんで貰えてりゃ良いけどな」


と言っても、会話を聞いているとそこまで楽しんでるようには思えないか。

現状に満足しすぎていたという感じだろう。

だから、もっと大きな経験をさせてやりたいとは思うが

…やっぱりそれをする度胸が無いかも知れないな。

可愛い子には旅をさせよと聞くが、やっぱり恐いよな。

苦労を与える事で嫌われるかもとか、何かあったらとか不安になるし。


「ま、今回がそれって感じなんだけどな」


と言っても、あまり大きな刺激にはなっては居ないみたいだがな。

いや、茜たちにはあまり大きな刺激にはなっていないかも知れないが。


「うぅ…足が…」


恋歌にはこれ以上無いほどに強い刺激になってるな。

今まで本ばかり読んで知識を蓄えていた恋歌が

今回は外に出て、色々な事を任せられている。

身の回りの世話は大体信者がしてたみたいだしな。

それを今回は自分でしないといけ無いわけだ。

茜の指示の元で、言われたことをやる必要がある。

完全な肉体労働、恋歌にはキツいだろうが必要なことだ。


「足がもげそう……」

「そんな簡単にもげてたらあたいの足はもう無い!」

「何だか理不尽な説得力がありますね…」


そりゃあ、水希は常に動いてるような奴だからな。

棒立ちして薪を割っていただけで足がもげるんだったら

常に動き回ってる水希は大変な事になるよな。


「そうでしょ? だから大丈夫だって。

 後、しっかり何かをした後にご飯を食べると美味しいよ?」

「それは知ってますよ…もうお腹が空いていますし」

「では、お料理を用意しますね」

「茜、私も」

「あ、そう言えばそんな事を言ってたっけ。

 うん、じゃあ…お姉ちゃん、お願いします」

「任せて」

「あたいも!」

「料理が焦げそう…」

「何を言ってるの? あたいはもうお料理は出来るのだ!

 流石に時音様見たいに美味しいのはまだ出来ないのだけど

 お師匠よりは美味しい料理を作れるよ! 茜に教えて貰った!」

「そうなの?」

「はい、飲み込みが早くて教えるのが楽でした」

「……なら安心」

「……」


茜たちは3人でさっさと台所へ移動し、境内には恋歌が1人残された。

恋歌は恐らく料理をあまり作れないだろう。

大体の事は信者がしてくれてたみたいだしな。

さて、こうなってくると孤独かな。

だが、修行を始める前の恋歌なら今みたいに立ち尽くす事はせず

さっさと神社の中に戻って料理が出来るのを本でも読みながら待ってただろう。

だが今は、ちょっとした思考の時間がある。

まだ開始して2日目だが…少しは修行の成果が見えてるかも知れない。


「……う、うぅ」


こっから見る限り、何か色々な葛藤を頭の中でしてそうだな。

恐らく参加するかするまいかを悩んでいるのだろう。

心を読めば確信に変るだろうが、そこまではしないで良いだろう。

俺は一応、憧れの神、心を読むことは出来るかも知れないが不要な事だ。

心を読む力は心桜達、さとり妖怪の憧れで無いのは間違いないがな。

あいつらは心を読むことを嫌ってるだろうし。


「…わ、私も手伝いますよ!」


そして、長く考えた結果、手伝うという結論に至ったようだ。

少しずつ協調性が付いてきているように感じるな。

茜の指示の影響か水希の人柄の影響か

藜の包容力の影響かは分からないけどな。

…いや、どれか1つじゃ無い、きっと全部だろうな。


「あ、恋歌さんもお料理するんですか?」

「いや、実際にやったことはありませんが、料理の知識はありますし…」

「ふっふっふ、知識だけで料理が出来るわけがない!」

「知識無くして料理が出来るとも思えませんがね」

「感覚で大体何とかなる、適当こそ適切なのだ!」

「いや、適当は駄目でしょうに…味付けを考えてください」

「あたいはそんな面倒な事をしないよ?」

「…あれ? ちょっと不安になって来たぞ?」

「じゃあ、恋歌は私が補助するから任せて」

「あ、じゃあ私は水希ちゃんだね」

「うん」

「教えて貰う必要は無いよ? あたいは1人でも料理出来るし!」

「私も結構です」

「駄目、4人でするんだから合せないと」

「そうだよ、1人でやるんじゃなくて

 皆と一緒に料理を作るんだから、しっかり合せていかないと」

「うぅ…」

「はーい!」


やっぱり水希は大分素直だな、特に茜に対しては。

ま、気心知れた仲だしな、藜と恋歌は新しく来たばっかりだから

少し合せるのが苦手なのかも知れない。

でもまぁ、茜も水希も上手く2人に合せてる。

藜は2人に合せてる節はあるが、恋歌はそう言う感じでもない。

それなのに上手く言ってるって事は、やっぱり茜と水希が

周りをすんなりと受入れるタイプだから。

茜の場合は俺の巫女だ、全てを受入れる神社の巫女、当然と言えば当然かな。

水希はそんな茜と親友で結構長い付き合いだし、影響されたのだろう。


「全てを受入れる、それが茜の良いところかな」

「それは確かにそうでしょう、しかし、果たして全てを受入れる事。

 それが本当に正しくて幸せなのか…果たしてどうなのでしょう」

「どうかな、全てを受入れるってのはそれなりの覚悟が居るだろうしな」

「えぇ、そんな事、きっと神でも不可能でしょうね…と言う訳でこんばんは

 うちの巫女が元気にしているか見に来ましたよ」

「ご覧の通りだよ、さっきから見てただろ?」

「あら、バレていました?」


さっきから境内の木に不自然なフクロウが止まってたしな。


「そりゃな、てかお前はフクロウかよ」

「叡智の神たる私にピッタリの動物でしょう?」

「確かにフクロウは森の賢者とか言われてるがな」

「猫は幸福ですよね、あなたにピッタリとは言い難いですね」

「時音も猫だったぞ」

「猫とは、ふ、時音さんの場合は熊か狼でしょうにね」

「確かに勇気とか勝利とか、そんな感じだしな」

「で、あなたの場合は鷲か鷹でしょうね。

 どっちかというと、鷲の方が近い気がしますが」

「そうなのか」

「えぇ、鷲は地位、勝利、全知ですからね。

 主神であるあなたには丁度良いでしょう。

 あなたの場合は全知言うよりは全能ですけが。

 で、鷹は天空、力、王様、知恵ですかね。

 天候を操るし、力も圧倒的で主神であるあなたには丁度良いかと。

 知恵の方は、流石に私の専売特許なので売れませんが」

「知恵でお前に勝てるとは思って無いから安心しろ」

「それは恐縮ですね」


叡智の神だからな、しかも完全な神だ。

俺の場合は転生した神、力は信仰とかで付いても

知識までは勝手には付かないだろう。

こんな事知ってたっけ、とか言う知識が出て来たりするときもあるが。


「しかし、お前も結構心配性なんだな」

「あのですね、頭が良いと言うことは何も全てにおいて良い訳ではありませんよ。

 知識をいくつも持っていると、どうしてもあらぬ可能性を想像してしまうんですよ。

 こうなったらどうしようとか、こうなったら大変だとか。

 そんな事を考えていると、あまり行動も出来なかったり、無駄に心配したりです。

 あまり行動しない人は、実は頭が良い可能性があるという事です。

 頭が良いと言うことは、想像力の塊でもある。

 だからいらない可能性を考えて能力を発揮できない。

 どうです? 知識があるというのも、良い事ばかりでは無いでしょう?」

「それもそうだな」

「因みに私は身体が勝手に動くーとか、そう言うのは嫌いです。

 それって考えてないだけだろうと思いますね。

 ガンガン行動する人があまり行動しない人を卑下するのも好きではありません。

 それは想像力が乏しい証拠でもありますからね。

 まぁ、お互いがお互いで引っ張り合えるなら構いませんがね。

 あまり行動出来ない人を、積極的に行動する人が引っ張っていき

 その行動にどんな危険があるかを積極的に行動出来ない人が伝え抑止力となる。

 こんな感じになれば、きっと凄い事になるでしょうね」

「まるで茜と水希だな」

「その例え、少し分かりますね」


茜はあまり行動しない、それは常にどんな危険があるかを把握しようとしてるから。

水希はガンガン行動するが、周りが見えなくなることが多い。

その2つが上手く調和した形が茜と水希なんだろうな。

水希が暴走したら、茜がそれを止める。

あまり行動出来ない茜を水希がドンドン引っ張り回していく。

この関係は凄いと思う。


「やれやれ、恋歌にも山明の巫女の様に引っ張り回してくれる存在が居れば

 少しくらいは成長してくれるでしょうに」

「それが今だろう? 引っ張り回してるのは主に茜だがな」

「あの子は色々出来ますよね、流石は全能神の巫女」

「あいつが凄いんだ、俺の巫女であるから凄い訳じゃ無い」

「それは同意しましょう、巫女が神に激しく影響を与えるのは間違いありませんがね」


…と言っても、時音と水希は殆ど似てないけどな。


「さて、とりあえず私もしばらくはあなたの隣で傍観しますよ」

「わざわざ俺の隣で傍観する必要は無いだろ?」

「私があなたの話し相手になってあげますよ、暇でしょう?」

「素直に1人じゃ寂しいと言えば良いのに」

「1人で出来る思考には限界がありますからね。

 いくら叡智の神だろうと、1人で無限の思考は出来ませんよ」

「それは分かるな」

「と言う訳で、お話しをしましょう」

「はいはい、話し相手になってやるよ」

「私が話し相手になってあげるのですよ」

「素直じゃ無いな」

「お褒めにあずかり光栄です」


褒めてるつもりは無いんだが…まぁ良いだろう。

叡智の神と話が出来るんだ、色々と知らないことも分かる筈だ。

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