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神様に転生したので、スローライフを満喫します  作者: オリオン
青年期、第9章、成長への躍動
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強制修行

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」


時音が手を合せ、挨拶をすると同時に俺達も挨拶をする。

わざわざ全員が食べるまで待機しての挨拶。

全員で足並みを揃えるとは、何とも規則正しい。


「それじゃ~、私は~」

「おっと、あなたはまだよ、これからが本番」


そそくさと神社から出て行こうとする花木の肩を時音が強く引寄せる。

何が起こるか、考えるまでも無く分かりきってる事だ。


「さてと、とりあえずこの装置を取り付けましょうか」

「本当にあるの!?」

「サボったら強力な電流が流れる装置よ」

「電流って?」

「こう言うのよ」

「んぎゃぁああー!!」


スタンガン…そんな物まで出せるのか。

電流とか、そこら辺の知識はどうやってと思うが。

多分俺の影響なんだろうな。


「あ、あたい…超痛い…痺れる…」

「サボろうとしたらこれが流れる装置よ。

 正確には身体があまり動いて無かったら流れる装置ね」

「そ、それって…休憩できないって事だよね~」

「強制労働装置だしね、今日は1日中動いて貰うわ」

「し、死んじゃうよ~!」

「大丈夫よ、妖怪なら早々死なないわ、安心しなさい」

「に、逃げろー!!」

「おっと、分かるでしょう? 神様からは逃げられないわよ」

「ひぃいい!!」


確かに花木は足がかなり速いが、相手は時音、神様だ。

いくら足が速い花木でも、時音から逃げられるはずも無い。


「ほい」

「あぁあ!」


そして、当たり前の様に取り付けられた。


「因みに鍵が無いと取り外せないからね」

「そんなぁ~!」

「あぁ、あまり長く棒立ちはしない方が良いわよ?」

「へ? あぎゃぁあああ!!」

「作動するから」

「言うのが遅いよ~!!」

「ま、これであなたは動くしか無い訳よ、理解したかしら?」

「うぅ~、鬼~! 妖怪~! 閻魔大王~!」

「私は神よ、軍神、鬼とか妖怪とかよりも上よ。

 そもそも妖怪はあなただし、鬼とか結構そこら辺に居るし

 それと私、地位的には閻魔大王と互角だしね」

「そうなの!?」

「私は軍神よ? かなり位が高い神なのは当たり前でしょう?

 そりゃあ、叡智とかとタメ張れる位なんだし、実力的には相当上位よ。

 ま、全能の神である圭介の方が位的には相当各上なんだけど」

「そうなのか?」

「自覚しなさい全能の神、あなたは主神よ?」

「やっぱり相当上なんだな」

「そうよ」


やっぱり全能の神って言うと、主神なんだな。

全知全能って結構居る気がするけど。


「まぁ、正直あなたにはそんな威厳は無いのだけどね」

「さらっと酷いな」

「褒め言葉よ、近寄りやすいって事」

「褒め言葉には聞えないな…」


完全に貶し言葉にしか聞えなかったがな。


「うぅ~、圭介が上なのは分かってるよ~、問題は私なの~

 これ、おしっことかどうすれば良いの~? 痺れるじゃんか~」

「一時停止の機能があるわ、厠とかはそれを押してしなさい。

 正し、1度使用すると3時間は再使用出来ない様にしてるわ。

 で、停止時間は10分よ」

「短いよ~」

「厠なんてそれだけあれば十分でしょう?」

「そんな事無いよ~」

「あぁもう、大丈夫よ、水希とかそんな感じだし」

「時音はどうなの~? 早いの~?」

「ん? 私は無いわよ、そう言うの」

「え~!?」

「そうなのか!?」

「そうそう、私は厠の必要が無いの、たまに真似はするわ」

「なんで真似を!?」

「いやだって、少しくらいはそう言う気持ちを知ってたほうが神としては良いかなと」

「どう言うことだよ、それ」

「まぁ、神なんて大体適当なのよ、何でも出来るって事は

 決まり事が無いって事。決まり事が無いと言う事は何でもあり。

 何でもありなら、何かを本気でやる必要も無いから適当になる。

 私の場合は戦いという分野以外においては大体適当なの。

 戦いに関連づけられる事にはトコトンなるけど、それ以外は適当。

 全能の神であるあなたの場合は、全てに全力になるのかしらね。

 恐らくだけど、叡智の神である時雨は知識以外には興味無しでしょうね。

 そんな物よ、私達神様なんて、不安定で不確定で何でも出来る。

 確定された行動は無く、確定された選択もしない」

「…だがまぁ、それとお前が厠に行くのはあまり関係ない気がするがな」

「何よ、私だって少しくらいは周りに合わせてみたいときはあるわよ。

 そう言うあなたはどうなの? あなたも神、厠など不要でしょう?」

「俺の場合は元人間だからな、そう言う生理現象は普通にしてるよ」

「へぇ、やっぱり認識次第なのね、私は純粋な神だからそう言うのは無いのよね。

 ちょっと気まぐれで真似をしようかなって位だし」


そうだな、考えてみればあまり尿意とかを感じることは無かったな。

何となくでトイレに行ってた感じだし、朝起きてトイレ行って

昼にトイレに行って、夜寝る前にトイレに行って

そう言うリズム通りでしか行動をしてなかった。

それ以外ではあまり行きたいと言う感覚は無かったし

尿意だとかそう言うのも感じては居なかった…そうか、俺が神だからか。


「まぁつまりそう言う事だから、私は便意とかよく分からないけど。

 水希や水菜基準でその時間を設定したわ、同性だしそんな物でしょう?」

「うぅ~」

「ま、小休憩に使うとか、そんな感じでやりなさいな。

 問題はどの機会で使うかだけどね。

 ただ休むために使うと厠に行くときに使えない。

 厠に行く時に使えば休憩は出来るけどのんびりは出来ない。

 当然私は厠に行くときだけに使う事をお勧めするわ。

 いざ尿意が来たときに使えないってなると、あなたは大変な事になる」

「酷いよ~!」

「これは訓練、怠け者を矯正するための訓練なのよ!」

「そんなぁ~!!」

「さ! ダラダラしてないで、さっさと仕事場へ行きなさい!」

「ひぃ~! わ、分かったよぉ~!」


花木はかなりの素早さで神社を降り始めた。

最初に階段から跳び、近くの木に着地し、

別の木へ跳ぶ、着地、跳ぶを繰り返した。

それも、相当な速さで正確に、流石妖怪兎。


「何だ、早く動こうと思えば動けるのね」

「そりゃあ、あいつは怠けてるからトロいだけで

 その実は相当な実力者だからな」

「それは分かるわ、頭も良いし身体能力も高い。

 茜の作戦を見抜いたのは流石と言えるしね」

「藜の動きも速く正確だったが、それを見抜く位だからな。

 茜の攻撃が自分に集中している地点で、既に茜の狙いは把握してただろうし」

「想像力と洞察力と理解力、どれも異常に秀でてるのに、なんであんな感じなのかしら。

 実力的には妖怪の中でも相当上位でしょうに」

「イーリアにも特定の部分では勝ってるからな。

 1対1で戦っても良い勝負しそうだ」

「擂とも結構互角に立ち回れそうね、天狗の最上位と互角って相当だと思うけど」

「意外と出来るんじゃね? 面白い心理戦になりそうだな」


擂も頭を使って戦うタイプ、花木も同じタイプだと思う。

動物の妖怪で天狗の上位相手に互角って相当だよな。

軍神様の太鼓判が押されてるほどだし、ほぼ確定だろう。

環境次第では花木に分があるだろうしな。

木々が覆い茂ってる場所なら、あいつの素早い動きを最大限に生かせるし。


「さて、更生することを祈りながら監視を始めましょうか」

「祈った先にいるのは俺達だがな、と言うか、神が祈るのは誰に祈る事になるのやら」

「そうね、私達の場合は圭介に行くんじゃ無いの?」

「それは困るな、花木の性格が直るかどうかは俺にも分からない。

 だが、俺の予想では直らないと踏んでいるが」

「あなたが言うと説得力があるから止めて」

「分かったよ」

「はぁ、直ってくれれば良いんだけど…」


不安の方が大きいが、花木を信じるしか無いだろうな。

さて、俺は茜たちの修行を見守るとするかな。

正直、あいつらの方は安心だろうけど。

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