修行準備
「さて、今回の修行内容だけど、やっぱり軍神らしく
単純な武術を鍛えようと思うわ」
「大事な所だからな」
「はい!」
「じゃあ、最初はあなた達に相性が良い武器を探るとしましょうか」
時音が指を鳴らすと、上空からいくつもの武器が振ってきた。
大太刀、刀、小太刀、槍、弓、薙刀、籠手、鎖鎌と色々と振ってくる。
「おぉ!」
「へぇ、こんな事が出来るのですね」
「私が軍神よ? 武具程度なら召喚出来るわ。
と言っても、特別な力が込められているわけではないわよ。
これはあくまで人間が作った武具を召喚したような形だしね。
神具を作るとなると、やっぱり自分で作らないとだしね。
だから、刀の性能だけど、この中で最も性能が高いのは
茜が腰に付けてるその刀ね、圭介が作ったんだっけ」
「はい! 圭介様に作って貰いました!」
「正直、茜の得意武器は刀でしょうし、あまり探る必要は無いでしょうけど
一応経験ね、多種多様の武具を扱えるのは大きいからね」
「はい!」
「あたいはこれ!」
水希が最初に持ち上げたのは大太刀だった。
水希の身長よりも若干大きな大太刀。
普通なら扱えないだろうが、水希は結構簡単に持ち上げる。
流石に片手で持てるほどでは無いみたいだが、両手なら持てるみたいだ。
「なら、私は少し冒険して…これを」
茜が手に取ったのは槍だった、長さは短めだが
距離は十分に取れるほどの長さはある。
森とかそう言う障害物が多い場所では扱いやすそうだな。
「…こ、これを」
藜が手に取ったのは薙刀だった、茜の槍に少し寄せたのかも知れない。
だがまぁ、薙刀は斬る、槍は突くだから、あまり似ているわけでは無いがな。
「…これですかね」
恋歌が手に取ったのは弓矢、この中で唯一の遠距離型の武器だな。
「それじゃあ、各武器の扱い方を説明するわ。
と言っても、大体は分かってるでしょうが、一応ね」
時音が各武器の有利な点や不利な点、どのように立ち回るのが正しいかを伝えた。
「それじゃあ、さっき説明したように戦ってみて」
「誰とですか?」
「そうね…折角こんなに妖怪が集まってるんだし手伝って貰おうかしら」
「お、良いぜ」
「にゃーい!」
「私は参加しませんけどね、楓、あなたがやって」
「分かりました!」
「ん~、私も参加するのかな~? 面倒だよ~」
「頭領様! わ、私が代わりに!」
「羽衣、お前には無理だと思う」
「なぁ!」
「でもでも! 羽衣って強いと思うよ! 知らないけど!」
「うぅ、た、確かに戦ってないけど…」
「ん~、何だか不安だし、私が戦おうかな~」
「す、すみません」
花木は大丈夫か不安だが…まぁ、多分大丈夫かな。
「それで? 一応は同時に戦わせようと思うわ。
連携が出来なきゃ勝てないでしょうし、しっかりね」
「はい!」
「あたい達が勝つよ!」
「頑張ります」
「…面倒です」
「複数で戦うのは面倒だよね~、私達って連携得意じゃないし~」
「俺も単体で戦ってばかりだからな、ちょっと自信ないかも知れねぇ」
「集団戦は化け猫の基本戦術、連携は僕にお任せ!」
「支援は得意ですよ」
「これは面白そうですね、軍神としてのあなたの見解ではどうなると思います?」
「そうね、私の予想だと妖怪組が勝つわ、巫女組も強いのは違いないけど
得意な武器ではないし、そもそも得意武器だったとしてもこの場面で
巫女組が勝つ可能性は限り無く低いと予想するわ。
勝利するための手順はそうね…まず茜と水希でイーリアを倒す。
それが出来ればまだ勝算はあるのだけど、それを許す妖怪はいないでしょう。
とにかくイーリアをどう抑えるか、そこが重要ね」
妖怪組の中でも頭1つ抜けて強いのがイーリアだからな。
そのイーリアを少しの間でも抑えられそうなのは水希か茜のどちらかだけ。
だが、水希は攻撃ばかりだし、イーリアがその気になれば
さくっとダウンさせられるのは目に見えている。
だとすれば、安定してイーリアを足止め出来そうなのは茜だけか。
茜は攻撃をするタイプではないから、勝負は着かないだろうが
時間を稼ぐこと自体は可能だろう。
だがしかしだ、今回茜が扱うのは槍、勝手が違うしより勝算が低いだろう。
茜が必死に押さえている間に恋歌がイーリアを落とせれば倒せるかも知れないが。
さて、恋歌にそんな狙撃が出来るか、そこも重要な分岐点になるだろうな。
「さて、舞台はどうしましょうかね」
「私が出してあげましょうか? それ位は出来ますよ」
「へぇ、そんな真似が出来るとは意外ね」
「一応は叡智の神ですからね、そう言う術は知ってますとも。
とりあえず場所を変えましょうかね、この狭い境内では」
「喧嘩売ってるの?」
「いやはや、真実ですとも、四宮神社程に広くないと流石に」
「イラッとするわね…」
「山中だし仕方ないだろ」
「…それもそうね」
「では、移動しましょうか」
俺達はある程度の広さがある場所へ移動した。
その場所で時雨が指を鳴らすと、周囲に結界の様なものが展開し
中に色々な障害物がある少し広めの空間が出来た。
「さてさて、これならば良い勝負が出来るでしょう」
「結構広いね!」
「見えない壁が…」
「そうそう壊れませんよ?」
「…ふん!」
何を思ったのか、イーリアが全力でその壁を殴った。
壁には少しだけヒビが入る。
「ほぅ、こりゃ結構硬いな」
「……わ、私の結界にヒビを入れるとは…あれは本当にただの妖怪なのですか?」
「ただの妖怪だ」
「信仰が足りないから、あんたが弱くなってるんじゃないの?」
「可能性はありますね…早く信仰を回復せねば」
「ま、これで心置きなく戦えるって事だな、一応死なないように手加減してやるから
本気で掛かってきな、前回みたいには行かねぇぜ」
「ふふふ! イーリア覚悟! あたいの超パワーで倒すよ!」
さてどうなるか、一応は実力を見る感じだろうが
勝負になれば良いけどな。




