巫女修行
「と言う訳で、何か知らないけど修行をする事になったわ。
いやまぁ、経緯はこの場で見ていたから分かるんだけど
正直、なんでどこぞの巫女の修行をしないと駄目なのか分からないわ。
しかも、何かイラつく相手の巫女とか、正直勘弁して欲しいわね」
「まぁ、そんな事を言いながら修行をしてくれると言うことは
あれですね、時音さんは言わばツンデレですかねぇ」
「一応言っておくけど、今回修行をしてやる理由は
茜と水希、そして藜がいるからよ、単身でこの子を修行させると言われても
私は絶対に了承しないわ」
「もっとこう、照れ隠し的な返しが欲しかったのですがねぇ。
あれですか、圭介さんが何か言わないとスルーですか」
「はぁ!? あいつは関係ないでしょうが!」
「…ふふ、いやぁ! 隠すの下手ですねぇ!」
「そのイラつく脳髄を引きずり出してやるわ…」
「いや、そのマジな表情は止めてください! 怒り方が恐いですよ!」
「おいおい、なんで喧嘩をしてる、修行するんだろうが…始まらないぞ」
「…はぁ、まぁ良いわ」
何とか怒りを抑えてくれたか…と言うか、時雨の奴
どう考えても時音に勝てないのに、滅茶苦茶食い付くな。
時音は戦いの神だ、その神を相手に叡智の神が勝てるわけがない。
状況次第では勝てるのかも知れないが、この至近距離での勝算は皆無だ。
どんだけ頭を使っても、何かを閃く前に排除されるだろう。
それなのに滅茶苦茶な位にチャチャを入れるのは何故だろうか。
「それじゃあ、始めるわよ」
「はい!」
「はい」
「いえーい!」
「…え? 何でこんな事に……私、神社で本を読んでいたいので帰って」
「あぁ? 誰の為にやろうとしてるのか自覚無いの?
まぁ、私は別に良いのよ、あなたに修行を付けなくても。
私としては茜と水希が成長してくれれば別に良くて
あなたが強くなろうとなるまいと関係ないし
そもそもやる気の無い馬鹿を鍛えるほど暇でも無いしね。
でも、私は構わないけど、あなたの神はどうかしら、言ってみなさい」
「そうですね、まずは拷問器具に掛けて」
「やります!」
「よろしい」
「…私、圭介様の巫女で良かったです」
「俺もお前が俺の巫女でよかったよ…」
「…礼奏の巫女って先代とか居ないのかしら」
「先代がおってもあんな感じなんや無いの?」
「あぁ、あなたが言うと説得力があるわね」
「ちょっと何か引っ掛かる点がある言い草やけど、まぁええわ」
軽く馬鹿にしているように聞えたな。
「まぁ、あんたらは滅茶苦茶感謝した方が良いわよ、自分の境遇に」
「はい!」
「…わかんないけどありがとう!」
「え? 何でです?」
「茜はああも素直なのに、何でここまで違うのかしら。
水希は馬鹿だし、恋歌は何か癪に障る…何でこんなに違うの?
もう少し素直な巫女って居ないの?」
「茜の場合は教育じゃね? いやまぁ、先代が駄目駄目だったから
反面教師にして成長してたのかも知れないけど」
「教育関係ないじゃない」
「ちょっと! さらっと私の事を馬鹿にしないでくださいな!」
「…依頼もしなかったのに?」
「ぐ!」
「その結果、信仰がドンドン薄れてったのに?」
「ぐふ! がは!」
「…先代と今代って似てないこともあるのね」
「し、師匠を馬鹿にしないであげてください!
た、確かにあまり動いてはいませんでしたが!
優しい人でしたから!」
「茜に言われたらぐぅの音も出ないわ…動くべきだったわ」
「いや、正直言うとですね…まともに動いてる巫女ってそう居ませんから。
うちの巫女もろくに何もしてませんからね、本読んでただけです」
「うちの巫女は…信仰とか興味無かったわね、戦う事しか考えてなかった」
「……そう聞くと、茜ってかなり優秀なんだな」
「圭介のお陰なんでしょうね…あぁ、私ももっと早く復活していれば」
「復活した後も変っとらんとうちは思うで」
「大体あんたのせいでしょうが先代!」
しゅ、修行が始まらねぇ…
「え、えっと! け、喧嘩はそこまでにしましょう! しゅ、修行を!
修行をお願いします!」
「ねーねー、なんでこの境遇に感謝するべきなの?」
「知らない」
「分かってよ…神様3柱に鍛えて貰うって凄いことだと思うよ。
そもそも、神様に鍛えて貰えるだけでも凄く、凄ーく! ありがたいことなの。
それを今回は3柱の神様が私達の為に時間を使ってくれて鍛えてくれるの!
凄いことなの! 感謝してもしきれないほどに凄いことなの!
特に圭介様に鍛えて貰えるのってかなり凄いと思うの!
圭介様凄いの! 格好いいし、お世話してくれるし、ちゃんと教えてくれるし!
頭も良いし、皆のことを気にしてるし! 私達の事も分かってくれてて!」
「いやまぁ、あなたが圭介のに心酔しているのは分かるわよ、分かるんだけど
さ、流石に褒めすぎよ」
「……超恥ずかしい」
でもこう、娘に褒められてるって感じで、何だか気分は良い。
「は! ごめんなさい!」
「お、おや? あれ? いやまぁ、何となく分かっては居たんですが
…あれ? 圭介さんだけ巫女に滅茶苦茶慕われてる気が…」
「私も圭介さ、様の事は好きでーす!」
「私は?」
「好きです! 強いから好きです!」
「いや待って、何だか傷付いたわ…強いから好かれてるだけって何か…」
「ふむ、では私は?」
「知りません!」
「ぐは!」
…水希だからなぁ、ストレートに言うだろう。
「く…いや、当たり前でしょうがね、ほぼ初対面ですし…
では恋歌、あなたはどうですか?」
「は、はい、し、時雨様の事は大好きです!」
「無理矢理言わされてる感半端ねぇ」
顔が真っ青だからな…どれだけ怖がってるんだよ。
「…はぁ、いやまぁ、好かれてる好かれてないはこの際良いとして。
とりあえず、修行…さっさと始めましょうか」
「始まってすら居ないのにかなり疲れてるように見えるな」
「疲れてるからね…さ、始めましょうか、一応言っておくけど
私の修行は圭介ほどに優しくないわ、甘くもない。
その代わり、効果は保証するわ、精々頑張りなさい」
「はい!」
「頑張ります」
「やっふー!」
「うぅ…」
「やっぱり茜は可愛いわね、うちの巫女にしたいわ」
「私の巫女にもしたいですね」
「茜は俺の巫女だ! 絶対に誰にもやらん!」
「そんな父親みたいに否定しなくても」
「圭介様がお父さん…うふふ」
「可愛い…」
茜は俺の自慢の娘って感じだな、本当茜が俺の巫女で良かった。




