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神様に転生したので、スローライフを満喫します  作者: オリオン
青年期、第8章、動き出した世界
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1つの違い

時雨の話から1週間が経過した、結構色々あったが

その間はいつもと変らなかった。

いつも通り水希が来て茜と戦ったり

花木が来てぐーたらと過ごしたり

久里が来て色々な話を聞かせてくれたり

睦月達が来て、人里のブームを教えてくれたり

時音が飛んで来て、いつも通りの談笑をしたり。

だが…違ったことは1つ、その間に葵が1度も来なかったことだ。

あいつは結構な頻度で四宮神社に来て茜に稽古を付けていた。

だが、この1週間、葵は1度だって四宮神社には来なかった。


「……圭介様、私、少し」

「あぁ、違和感だな…葵が来ないなんて」


1週間も来ないことは無かった、あまり来ないことはあったが

1週間という期間は殆ど無かったんだ。

それに…どうも妙な気配が1つある。

葵や水菜に似た気配だった。


「……」


俺は意識を集中させ、周りを軽く見渡してみた。

だが、葵の姿は見付からなかった。

ただ…大きな違和感、川の近くにある神社。

屋台の様な物がいくつかあるが、人は居ない。

何より物違和感は、準備されている屋台は壊れている事。


「……まさか、茜」

「はい」

「飛ぶぞ」

「え? あ、はい!」

「どちらへ? キキ達も」

「私達も!」

「いや、お前らは待機だ、俺と茜だけで行くから神社の留守頼む」

「わ、分かりました…ご主人がいない間! 四宮神社はキキが守ります!」

「お前に守れるかよ、馬鹿狐」

「なにぃ!」

「協力して頼むぞ」

「は、はい!」


俺は茜を連れ、その屋台がボロボロになった神社へ飛んだ。


「……礼奏…神社」


その神社は礼奏神社と書いてあった…礼奏神社

それは時雨が居る神社だ、何故ここがこんな有様に。


「おい! 誰か居るか!?」


俺達は神社内に移動し、状況を探ってみる。

これだけの有様だと、死者でも出ているのかと勘繰ったが

そんな物は無い…ただ屋台が壊れているだけだった。

神社内を覗いて。


「あ! 圭介様!」

「ん!」


神社の中にはボロボロで倒れている少女がいた。

何処かで見た様な容姿だが、雰囲気は全然違う。

恐らくこの子は礼奏神社の巫女、礼奏 恋歌!


「おい! 何があった!」

「……あ、あぁ、どちら様でしょう…あ、ま、祭ですか?

 すみません、お祭りは…中止になりました…」

「何があったんだよ!」

「それは…あ!」


彼女は茜の顔を見ると同時に表情を変え、茜に攻撃を仕掛ける。


「うわ!」


だが、茜はその攻撃に素早く反応し、顔を僅かに動かし攻撃を避ける。


「何してんだ!」

「こ、こいつが…礼奏神社を!」

「は!? 待て! こいつは何も!」

「でも、同じ様な顔! ふ、服装は違うけど、こいつが!」

「落ち着け!」


俺は急いで彼女を取り押さえ、茜から距離を取った。


「うぅ…」

「ま、待ってください、わ、私は何も」

「あなたが…!」

「落ち着け! こいつはずっと俺と一緒に居た、だから何もしちゃいない!」

「でも…確かに…あ、でも…目の色は違う」

「目の色は違う?」

「……あ、あぁ…ごめんなさい、勘違いでした」

「え? どう言う」

「よ、よく見たら違いました、ごめんなさい」


そう言い、彼女は攻撃の手を止めてくれた。

落ち着いたのを確認し、俺達は彼女の傷の手当てをする。

一通りの手当を終わらせ、本題に切り込む事にした。


「…何があったのか話してくれ、協力できるかも知れないから」

「は、はい…昨日の事です…礼奏神社の神、時雨様がこの神社を留守にした後

 私達は信者と共に本日開かれる予定であった祭の準備をしていました。

 その時、彼女によく似た少女が現われ、信者達を襲いました」

「何!?」

「でも、死傷者は出ませんでした、負傷者は少し出ましたが

 しかし、全員が意識を奪われてしまいました。

 私は急いで彼女と戦ったのですが、戦闘を得意としている訳でも無く

 私は彼女に敗北しました…巫女の力を奪われ」

「巫女の力を奪われる?」

「正確には霊力を奪われました…時間が経てば治りますが…1ヶ月は動けません…」

「……大事には至ってないようで安心した…しかし、時雨はどうしたんだ?」

「時雨様は…全ての信者達の意識を奪われ…姿を維持できず…」

「死んだというのか!?」

「いえ…信者達が生きている限り、あの方は死にません…

 信者達の意識が戻れば、復活も出来ます…ですが、時間は掛かるかと…

 恐らく…信者達の意識を奪った妖怪を倒さねば…意識は蘇らないかと」


結構ヤバい状況だな、急いで探さないと。


「…私に力があれば…こんな事には…」

「いや、分かったよ、俺達でなんとかしよう、茜」

「はい! お任せください!」

「……恐らくだが、その妖怪は巫女の力を狙っている。

 つまり、お前が狙われる可能性が高い。

 お前以外にも水希もあり得るが、そこまで移動する時間を待つわけにはいかない。

 そりゃあ、四宮神社に近付いたり山明神社に近付けば

 そんな妖怪、相手にもならないだろうが、時間が無いからな」


山明神社には水希に水菜、イーリアに賢子、軍神である時音がいるんだ。

例え戦いになっても、それだけの面子を倒せるとも思えない。

四宮神社も同じ様な物だ、小さいが神であるキキとキャンがいる。

刀子の実力も当然凄まじく、花木や久里の実力も相当だ。

サラや四季もいるし、負ける要素はほぼ無いだろう。

だが、そこまで誘導する時間は無い、ここは俺達2人で解決しないと。

と言ってもだ、俺がこの場にいるとその妖怪は警戒してこないだろう。

存在力が大きいからな、あまり複数で待機というのも警戒してこないだろう。


「…茜、本当に申し訳ないんだが、ここで待機していてくれ

 誰の助けも無いと思え」

「…はい、複数居ると来ない可能性が高いからですね」

「そうだ、俺は猫に擬態して神社の上で待機する。

 一応、そいつが来たときに俺が姿を戻しての救助もありではあるが

 恐らく、その妖怪の正体は…お前の姉だ」

「あ、姉?」

「あぁ、6年位前、葵が言ってた四宮 藜、恐らくそいつだ。

 恋歌がお前を見て攻撃を仕掛けたからな。

 あいつは確かお前にそっくりだと葵が言っていた。

 だから、恋歌はそいつにそっくりだったお前を攻撃した。

 目も赤いと言ってたし、間違いないだろう」

「な、何故…私の名を」

「お前の所の神様から聞いたんだよ」

「……では、あなたが…四宮の…」

「そうだ、ここは任せておけ」

「……申し訳ありません」


時雨は俺達の事を一応は話していたと言う事かな。

多分、俺を四宮の方だと気づいたのは時雨が珍しい俺の性別を話したからだろう。


「手当はしましたから、休んでいてくださいね」

「は、はい」

「…それで、圭介様」

「あぁ、話を続けよう、葵から聞いた藜の特徴だが

 あいつは葵でも追いつけないほどの逃げ足の速さだったそうじゃ無いか。

 それだけ素早い奴なんだ、俺が出て来たら間違いなく逃げる。

 転移で追いかける事は出来るかも知れないが、その後すぐに逃げられるだろう。

 そのままイタチごっこを続けていれば、タイムリミットが来てしまう。

 そうならないように、ここで叩く…相手は巫女の力を狙っているんだから

 お前を躍起になって狙ってくる、それなら逃げる事も無いだろう」

「はい!」

「最悪の事態の為に手も打つから安心しろ、頼むぞ」

「はい! お任せください!」


本当なら別の方法はいくらでもある、神社内に誘導して包囲するように

俺が他の妖怪達を転移させ、逃げ口を塞いで叩く方法もあるし

茜に降ろして貰って、一気に叩くと言う方法もある。

流石に神降ろし状態の茜から逃げ切れるほどの足は無いだろうからな。

俺がフルに力を行使出来る状況何だから逃げる事も不可能だ。

だが、今回は茜1人に撃退して貰うと言う方法を選んだ。

それは、茜の為だ、茜は確かに強くなったが、経験が少し足りない。

そりゃあ、葵たちと実戦での戦闘を行なっているから経験はあるのだが

妖怪との命を賭けた戦いはあまりしていないからな。

今回の妖怪は霊力を奪うだけみたいだから、命の危機はあまりないだろう。

だが、相手は確実に霊力を奪おうと攻撃を仕掛けてくる。

良い練習相手になるだろう…それに、茜の姉でもあるからな。

妹として、姉に挑む…最悪の事態に対する対策も用意はしてあるし抜かりは無い。

俺は猫に変化し、神社の上に待機した。

そして、礼奏神社の前にある山上をチラッと見て、茜の方を再び見た。


「……」


頼むぞ、茜。

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