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神様に転生したので、スローライフを満喫します  作者: オリオン
青年期、第8章、動き出した世界
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最初の信者

「茜が理由ってどう言うことよ」


茜は力も無く、戦う術だって無かった。

大事な師匠も神社から姿を消し

自分が出来る事はただ祈る事だけだった。

毎日1人でご飯も作って、1人で眠ってた。

泣きたくなるような夜も多かっただろう。

もしかしたら、毎日泣いてたかもしれない。

そりゃそうだ、あの時の神社は本当のボロボロだった。

明かりも無いし、食事をする為のお金も無くなって行ってただろう。

当然、恐怖してたんじゃないかな、このまま1人で死ぬ事を。

大事な師匠からたくされたこの神社を守れずに朽ち果てることを。


「今の茜は強く成長してる、だが、当時の茜は違う。

 大事な師匠も姿を消して、1人で薄暗いボロボロの神社で過ごしてた。

 それでも毎日祈りを捧げて、生きていくことに必死だった。

 水希も同じ様な物だったが、あいつは…まぁ、師匠が悪い」


俺達に最初に会ったとき、あいつ初っぱなから滅茶苦茶好戦的だったし。

でも…何で生きてたんだろうか、一応イーリアとかが守ってたりしたのかな。

取ってきた肉を神社に置いておくとかしてたのかも知れない。


「ま、まぁ、水菜があんな感じだしね」

「どんな感じなのか素直に知りたいですが、今はその話よりも」

「分かってるよ、茜が何故俺を復活させられたかだな。

 あいつは多分、毎日の祈りの時にも辛い思いを隠せていなかった。

 1人は寂しい、誰か助けて欲しいとか、そんな風に思ってたんじゃないかな。

 そして、茜が自分を守って欲しいと思って祈りを続けていた結果

 男である俺が生まれた、あいつなら最初に師匠である葵を思い描くかもだけど

 多分、人里に降りたときに同年代の子供が居る家族を見たんじゃ無いかな。

 仲が良さそうにしてる家族を見て、そして家族が欲しいと思った。

 それから、自分を守ってくれる人物で父親に憧れたのかも知れない。

 その結果、男である俺が呼ばれ、茜の父親代わりになった」

「……」

「本来の姿は俺が性別を変えたときの姿が本来の姿なんだろう。

 茜にも似ているからな、そっちが信仰で生まれる筈だった容姿。

 俺の今の姿は茜1人が祈って生まれた姿、そう考えると辻褄は合いそうだ」

「たった1人で神を蘇らせるなんて、普通は無理でしょうが…

 しかし、その様な過去が彼女にあったとすれば…あり得ると思います」

「巫女は最も信仰の力があるからね、その巫女がひたすらに祈り続けた結果

 あなたという新しい四宮の神が復活した…そう言う事かしら」

「あぁ、そうなんじゃ無いかって今思った」


茜は本当に能力が高いからな、いや、何よりもだ

あいつは何でも信じる、信じたいと思ったことはトコトン信じる。

その信心深さがあいつの今の幸福を作ってるのかも知れない。

何処からか聞えてくる楽しそうな鼻歌を聴きながら、そんな事を思った。


「…確かにあの子ならあり得るかも知れませんね。

 まだ出会って殆ど経っては居ませんが、それでも分かります。

 あの子の才能は凄まじいと、巫女以外には生まれる可能性が無かった

 そう感じてしまうほどに」

「能力が高いのもそう言う…でも、戦いはあまり」

「あいつは攻撃をしないだけで、センスはすごいぞ」

「それはそうね、ずっと修行してる水希もあの子の防御は突破できなかった。

 しかも何より、あの子はあなたをその身に降ろせるのよね」

「そうだ、茜がいないと俺は自分の力をあまり行使出来ない

 あいつに降りないと世界とかヤバいみたいだし」

「あの子はどうやらあなたには必要不可欠の存在みたいですね」

「そうだ」

「茜もあなたが居ないとやっていけないって雰囲気があるわ。

 お互いにお互いを必要としてるってすごいわね」

「どうかな、後者は茜に聞いても分からないだろう」


茜は俺が居なくても大丈夫かどうかなんて、俺が居なくならないと分からない。

だがまぁ、俺の事を家族だと、親だと思ってくれてるなら…どっちでも良い。


「とにかく、あの子の存在が大きいことはよく分かりました。

 そもそも、あなたが復活しなければ、結界は縮み続け

 今頃、この場所は外の穢れに飲まれていたのでしょう。

 信仰を失っていたというならなおさら。

 あの子があなたを生んだというなら、あの子は私達の恩人でもあります。

 何かあればお助けしますよ、借りっぱなしは私の性には合いません。

 と言っても、返しきれるような恩でもありませんがね」

「ま、恩人だからね、それも私達の命は私達だけの命ではない。

 信者達全てを巻き込む、それ程に大きな命よ。

 その命を救って貰った、返しきれるような恩じゃ無いわね」

「俺の仮説があっていれば、全ては茜のお陰だ。

 それを言うなら、茜に言ってやれ」

「そうですね、しかし圭介さん、例え茜さんがあなたを蘇らせたとしても

 その後、結界を広げる事に成功したのはあなたのお陰でしょう。

 あなたもあの子も、私達を救ってくれたと言う事には変わりが無い。

 それに、あの子は間違いなくあなたに大きな恩を感じています。

 ならば、あなたにもしっかりと礼を述べねばなりません。

 元人間でありながら、神々を救った神、真性の神でありながら情けありませんが

 ありがとうございます」


時雨はニッコリと笑い、頭を大きく下げた。


「…それでは、為になる話しも聞けたことですし

 私はそろそろ失礼します、またいつか、この四宮神社にやって来ますが

 受入れてくださいね、全てを受入れる神社だというならね」

「あぁ、いつでも歓迎してやるよ、じゃ、またな。

 祭の時は呼んでくれよ、変装していくから」

「私も楽しみにしてるわ、面白い祭にしなさいよね。

 もしも本とかそう言うのばかりだったら許さないわよ。

 屋台とかちゃんと用意しなさいよ、屋台が無いと飽きるから」

「あなたには恩など感じてませんよ?」

「な! 何ですって!? わ、私だって信仰集めは手伝ったのよ!?」

「だとしても、雀の涙程度でしょう? 恩を感じるほどではありませんよ」

「なにぃ!」

「でもまぁ、祭にはお呼びしますよ、私の信者達を見せてあげましょう」

「はん、見てやろうじゃ無いの、あんたみたいに知ったかぶりが多いんでしょうがね」

「もし私の信者がその様な形だったとすれば

 あなたの信者は脳筋ばかりでしょうね」

「なにぃ!」

「仲が良いのか悪いのかわかんねーな、やっぱり脳筋と叡智じゃソリが合わないか?」

「さらっと私を貶さないで!」


時音の信者は妖怪が多いから実際は脳筋でも何でも無いんだけど。

ここは時雨に合わせてみよう、面白い反応するし。


「良いわよ! 私が脳筋じゃないことを証明してあげるから! 時雨!」

「圭介さんには証明しなくても良いのですか?」

「こいつは私の事知ってるわ、わざと乗っかってるだけよ」

「あぁ、分かってたのか?」

「私を馬鹿にしないでよ」

「まぁ、そのやり取りであなたがそこまで脳筋ではないのは分かりました

 ちゃんと圭介さんの事を理解してたのですね、意外です」

「なんであなたはひと言多いの? まぁ良いわ、祭、楽しみにしてなさい」

「おやおや、恐い恐い、では、私はこれにて」


再びお辞儀をして、時雨は神社の階段を降りていった。

…礼奏神社の祭りか、どんな感じになるのか楽しみだな。

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