神として見た初めての祭り
四宮の祭り、長い間この祭りは途絶えていた。
しかし、今日、その祭りは再び開催される事になった。
多数の妖怪、多数の人間の協力により、四宮の祭りの準備が出来た。
今日の夜に開催されることになっている、今はその日の昼間だ。
「ふぅ、長いこと掛かったが出来たな」
「はい、まさかあんなに沢山の人達が協力してくれるなんて思いませんでした」
「だな、まぁ、皆、祭りに飢えていたんだろうな」
「うーん、多分だけど、愛されているのは四宮神社だと思うけどねぇ~」
「そうなのか?」
四宮神社の信仰は今は殆ど失われているのに、それでもそんだけ愛されているのか。
「うーん、でも信仰は集まらないんですね」
「多分、御利益がハッキリしてないからじゃないのかい」
「御利益か、正直どうやったら御利益が入るか知らないしな」
御利益は神様の恩恵の事だ、まぁ、それは殆どの人が知っている事だろうが。
しかし、俺は新神だから、その御利益をどうやったら与えられるかが分からない。
まぁ、別に良いか。
「まぁ、何もしないで良いか」
「何でです?」
「簡単だ、願いは神に出なく、自分にしているからだ」
「へ?」
「願いは自分がしたいことを口に出し、自分に言い聞かせる行為だ、神が叶える物じゃ無い
神の仕事は多分だけど、そんな人達の守護と、彼らがどうあがいても出来ないことをする事だと思う」
「うーん、難しくて私には理解できませんでした」
まぁ、俺もこうはいったが、正直これで正しいかも分からないがな。
でも、俺はこの気持ちを持って行動しようと思う。
「あはは、圭介、まるで神様みたいだね~」
「一応神様だ」
「そうだったねぇ~」
「ふむ、面白い神様だね、この子が気に入った理由も分かるよ」
「そうかい」
そんな会話をした日の夜、ついに祭りが開催された。
この祭りは四宮神社の久々の祭りと言うことで2,3日連続で行う予定だ。
結構な長丁場だが、茜は大丈夫だろうか。
「いやぁ、ついに祭りが始まりましたね!」
「だな、まぁ、お前はお祓いとかで忙しいだろうがな」
「そうですね」
俺は基本的に座ってるだけになるだろうが、楽しみだ。
「えい、えい」ブンブン
茜はお祓い棒をブンブン振って賽銭を入れてくれた人を祓っている。
普通はこんなに人が来たときは振らないだろうな。
まぁ、そんなに沢山の人が来ているわけじゃ無いから大丈夫だろう。
「皆、楽しそうだな」
「圭介は参加しないの~」
「俺は普通の人には見えないからな」
「そういえばそうだったね~」
「後さ、俺に引っ付いているこの兎たちをどかして欲しいんだけど?」
俺は5羽の妖怪兎に囲まれている、これじゃあ、動けない。
「あはは、良いじゃん、この子達も疲れてるんだよ~」
「だからといって俺にもたれたり、俺の膝を枕にしないで欲しい」
「兎は寂しいと死んじゃうんだよ~?」
「迷信じゃ無いのか?それ」
「妖怪兎はその通りなんだよね~」
妖怪兎はそのままなんだな妖怪はよく分からん。
「はぁ、このまま動けないのか」
「良いじゃん、結構暖かいでしょ?」
「まぁ、確かに暖かいな」
「でしょ~」
「随分と妖怪に懐かれる神様だね」
俺が妖怪兎に囲まれて困っている状態で久里がやってきた。
しかし、当然の様に妖怪が入ってくるな。
「茜ちゃんは必死に参拝客にお祓いをしてるよ」
「それが巫女の仕事だからな」
「まぁ、確かにそうだね」
俺達は全員座って、外の祭りを見守った。
しかし、なんだか祭りに参加するだけじゃ味わえない、達成感を感じるな。
見てるだけだが、楽しいぜ。
しばらくのほほんとしていると、子どもが声をかけてきた。
「あの、皆さんはお祭りには参加しないんですか?」
「ん?あぁ、私達の事~?」
「はい、あと、そこの男の人は何で女の人に囲まれてるんですか?」
「あ?俺の事か?」
「はい」
・・・まさか、この子は俺の事が見えるのか、変わった力があるのか?
とりあえず理由は話しておくか。
「こいつ等が妙に疲れてらしくてな、ここが落ち着くらしい」
「へぇ、そうなんですか」
「あぁ、ほら、親の所に戻りな、探してるだろうから」
「はい!それじゃあ、また!」ダ!
女の子は走って祭りの人だかりの中に消えていった。
「ふーん、あぁ、そうか、祭りの間は信仰が固まってるから見えるのかも」
「神様ってそんな物なのか?」
「あぁ、正確には分からないけど、多分ね」
「ふーん、そんな物か」
と言うことは俺は今の状態ならこの祭りに参加できるのか・・・
茜には悪いが折角だ、一緒に楽しんでみようか。
本来祭りは神様と人間が一緒に楽しむための行事だしな。
「よし、俺も折角だから参加するか」
「じゃあ、私も行くよ~」
「ならあたしも」
俺達は折角だから参加することにした。
まぁ、茜には悪いがな。
「はぁ、はぁ、さ、参拝客が多いってしんどいです~~~!!!」




