ゆっくりと紅葉狩り
意外と前から計画していた紅葉狩りだが
ようやく実行することが出来た。
紅葉の色付きというのも実際四宮神社から眺めるよりも
こうやって、近くで見た方がかなり鮮やかに見えた。
鮮やかな赤色、だが、その中にも不完全な色合いもあり
完全に同じ葉っぱが無いから見ていて結構楽しい。
「圭介様! 色んな色がありますね!」
「あぁ」
見た目は大差ない、だが、完全に鮮やかな赤色や
中途半端な赤、オレンジ色の侵食具合も多種多様。
中には虫に食われて穴が空いた紅葉の葉っぱもあるが
それはそれで風情を感じ、自然とハッキリと分かる。
人工では作る事が出来そうに無いバラバラな色付き
規律が取れていないのがより美しい。
こういった感情は人工物を見てもあまり出て来ないだろう。
人工物でバラバラな物というのは、意外と美しいと思えないのに
こう言う、自然の物でバラバラな場合、何故か美しいと感じる。
「見てくださいよ圭介様! この紅葉! 穴あきが顔みたいです!」
「はは、そうだな、かなり顔だ」
成長し、中々に落ち着いてきていた茜だが
紅葉狩りを楽しんでる姿は子供その物だった。
大きくなっても茜はこんな風に楽しそうに生きることが出来る。
何とも羨ましいものだが、その茜のお陰で
俺もこの光景を楽しめるんだろうな。
きっと、1人で行ったとしても、ここまで楽しめたりはして無いだろう。
「ご主人! あれを! オレンジです! 凄くオレンジ色!」
「ん?」
キキが指差したのは俺達の斜めだった、俺も言われたとおりそこを見る。
そこでは、周りのオレンジ色の紅葉に光が当り
キラキラと光り、祝福するかのように光り輝いている。
「綺麗だな、これは」
「はい! かなり綺麗なのです!」
この光を見て、思い浮かんだのはイルミネーションだった。
キラキラと光って、周りを楽しませる人工の光り。
その光りとは違って、何かの形を取っているわけでは無いし
激しく点滅している訳でも色が変わるわけでも無い。
だが、妙に感動するな。
「しかし、紅葉狩りというのは初めて来たけど、かなり凄いな」
「刀子は森に住んでた時期あっただろ? その時散々見たんじゃないか?」
「あの時は生きるために住んでただけで、景色を見る余裕は無かった
それに当たり前に見えてる景色は美しいものだと認識辛いだろ?」
「ま、そうだな」
四宮神社から山々を見るのだって、俺達はあまり気にはしないが
参拝に来る人達はその景色を美しいと言っていたりするからな。
当たり前にある風景の美しさには中々に木が付く事が出来ないと言うのは
間違いないんだろう、だが、改めて見ると美しいと感じる。
不意に今まで通りの景色を見た瞬間に感動することがあるしな。
「あ! 圭介様! あそこ見てください! 鹿です!」
正面にゆっくりと動き、のんびりと食事をしている鹿が歩いていた。
デカい角があるし、どうやらオスみたいだな。
「こんな場所にいるのか、予想外だった」
ここに来て、あまり鹿というのは見たことがなかったから新鮮だな。
と言うか、こんな場所に住んでいたとは考えもしなかった。
鹿はこちらに気が付いたのか、こっちの方をチラリと見て固まった。
…人が怖いのか? まぁ、野生の鹿だし分かるけども。
「うーん」
何か食うかな、鹿せんべいみたいな物があれば食い付きそうだが
そんなもの…まぁ、無くはないけども。
一応食い物は持ってきてるし、でも、何を食べるんだろうか。
「そ、そーっと」
どうやら鹿を触りたいらしく、茜はゆっくりと忍び足で近寄った。
鹿の方は茜の方を逃げる事無くジッと見ている。
「…うわ!」
不意に鹿が茜の方に一歩進み、不意を突かれたせいで大きな叫び声。
だが、鹿は逃げずに茜の方に近寄り、かなり近くまで寄ってきた。
「あ、あれ?」
何で来たのかは分からないけど、近寄ってくれたのは確かだし
ゆっくりと鹿の頭を撫で始めた、幸せそうだな、茜の奴。
「ふわふわです」
「まぁ、そうだろうな」
茜はしばらく鹿を撫でて、満足したのか手を離した。
その後、今度は鹿が俺の方に移動してきて
かなり近くまで来て、俺の顔を見上げてくる。
え? 何でこんな所に来てるわけ? なんの為に?
「撫でて欲しいんでしょうか」
「何でだよ」
…でもまぁ、折角こんなに近くまで来たんだし、撫でよう。
「お」
茜が言うとおり、結構ふわふわしてる、と言うか鹿の表情が可愛い。
撫でられてる間、目を瞑って身を任せてきている。
本当に野生の鹿なのだろうかと疑うほどに人懐っこいな。
「キキも触りたいのじゃ!」
「私も触りたい」
「じゃあ、私達も触っちゃおーっと」
「うん」
キキ達も触りたくなったらしく、4人は鹿のお腹を触りだした。
「ふにふにしてて気持ちいいじゃ」
「うん」
「おぉ! 柔らかい!」
「サラちゃん、あまり変な所触らない方が良いよ、そこ、お尻だよ?」
「お尻なの? あ! なんか黒い小さなのが出て来た!」
「う、うんちだよ、触っちゃ駄目だからね!?」
四季の言葉を無視して、サラは近くにあった程よい大きさの木を取り
鹿のフンを突っつき始めた、何か、本当に子供だよな。
「サラちゃん! 触ったら駄目だよ!」
「あはは! 鹿のうんちって臭くないんだね!」
「植物しか食わないからな、そこまで臭ったりはしないだろ」
「へぇ、流石植物!」
自分の同族が臭いを消していると知ってか、随分と堂々としているな。
まぁ、こいつらしいと言えばこいつらしいけど。
その後、鹿はしばらくして満足したのか、帰って行った。
触ることが出来て良かった、それじゃあ、紅葉狩りを再開しようか。




