祭りを心待ちにしている人々
俺達は信仰を集めるための手段として、祭りを開催することにした。
しかし、僅か5人での祭りの準備は相当辛く、中々進展しなかった。
「ふぅ、中々進まないな」
まだ準備を初めて1日も経ってないし、屋台2つしか出来ていないのは仕方ないか。
しかし、屋台を組み立てるのも楽じゃ無いな、準備をしてくれている人達の気持ちが分かったよ。
「はぁ、はぁ、あれだけ頑張ってもまだ2つですか」
「まぁ、人数も少ないし、仕方ないだろう」
俺達がそんな事を嘆いていると、普段参拝に来てくれている人がやってきた。
「あれ?もしかして祭りでもするのかい?」
「はい、そうですけど・・・」
「あはは、そうか、でも女の子が3人だけで屋台の準備なんて無茶だろ?」
この人には俺も睦月も見えない、ただ、花木と久里は見えているようだ。
妖怪は人には見えるが、神や幽霊は見えないって事か。
「それにしても、後ろの子達は茜ちゃんの知り合いかい?見た感じ結構年が離れてそうだが」
「はい、私の友人です、少しか会話したら、なんだか意気投合しちゃって」
「どうも~。花木と言います~」
「私は久里だ、よろしくな」
「あぁ、よろしく」
花木と久里は参拝客のお客さんに挨拶を行った。
結構手慣れているような感じだが、割とこういう感じの機会は多かったのだろうか?
・・・いや、久里はともかく、花木はそんなに人に会ったことがあるわけじゃ無いはずだ。
しかし、服装もちゃんと変化させて、耳も尻尾も隠している。
「それじゃあ、私も知り合いに声をかけてこよう、そして、一緒に屋台を組み立てようか」
「本当ですか!?」
「あぁ、四宮の神を信仰している以上、協力は惜しまないよ」
「ありがとうございます!」
「それじゃあ、知り合いに声をかけてくる」
「はい!」
参拝客は一応お賽銭を入れ、拝んだ後、四宮神社から出て行った。
多分、知り合いを誘いに行ったのだろう。
「なぁ、花木」
「な~に~?」
花木の服装は元に戻っていた、あの一瞬で服装を変えられる物なのか。
少し気になるし、聞いてみようか。
「良く服装を変えられたな、あと耳も隠してたし」
「ん?何のこと~?」
「は?」
花木は分かってなかったようだ、と言うことはそのままの姿で挨拶したのか・・・
でも、あの時は確かに服装が変化していた。
「この子は服装を変えたり、尻尾と耳を隠すなんて器用な真似、出来ないよ」
「と言うことは、お前か?」
「その通りさ、あたしは化け狸、誰かの姿を変化させるのなんて朝飯前さ!」
「そうか、流石は狸だな」
どうやら、花木の姿が変化していたのは全て久里の仕業だったようだ。
花木じゃ無かったと知って、少しだけ安心した。
「うーん、しかし、あの人間の援護もありがたいが、知り合いだけじゃあ、ねぇ」
「少なかろうが人手が増えるのは良いことだろ?」
「まぁね、じゃあ、あたしの傘下を呼んでくるよ、皆人になれるし、良いと思うよ」
「じゃあ、私も傘下で人に変化できる子を連れてくるよ~、待っててねぇ~」
「あぁ!」
はじめからして欲しかった、とは思ったが、まぁ、色々とあるんだろう。
俺達は3人を待っている間に屋台を作っていた。
すると、今度は珍しく、蓮が参拝にやってきた。
「あれ?お祭りの準備か何かですか?」
「あぁ、四宮神社の祭りをしようかなと思ってな」
「あぁ、良いですね、四宮神社は祭りなんてした事が無かったですし」
「そうなのか?」
「はい、少なくとも私が生きてる間にした事はありませんでした」
もしも、この情報が正しいなら、四宮神社の祭りは若い人の殆どが初なのかもな。
どちらにせよ、かなり久々なのは違いないだろう。
「あはは、お姉様もお祭りなんてしませんでしたしね」
「それにしても、これだけの人数で準備をするんですか?」
「まぁ、でも一応これから新しい人が来たりするだろうし、大丈夫だろう」
「そうなんですね、あ、そうだ、私も手伝います」
「良いのか?」
「はい、お祭りは私も興味がありますからね」
「助かる」
こうして蓮も四宮神社の祭りの手伝いを手伝ってくれることになった。
「待たせたね、傘下を連れてきたよ」
まずは久里が傘下の狸たちを沢山連れてきた、かなりの量だ。
性格はバラバラで、統一性が無い、服装もバラバラで個性豊かだった。
その後に参拝客のお客さんが人を沢山集めてきた。
どうやら、村の住民全員らしい、皆、四宮神社の祭りの準備を手伝おうと誘うと食い付いたらしい。
この村に古くから住んでいる人々は四宮神社の祭りが大好きらしい。
「お待たせ~連れてきたよ~」
今度は花木が少数の人型兎を連れてきた。
全体的に幼めの雰囲気だが、かなり元気が良い。
全体で見ると少ない方だが、それでも全員やる気を感じる。
どうやら俺の助けになりたいそうで、飛んできたそうだ、神様としては嬉しいな。
「おい!木材足りてっか!?」
「はい!かなり質が良い物が揃ってます!」
「よし!なら一気に作っちまおうぜ!」
村の住民が皆して一気に動き出した、大工さんも居るようで、かなり頼りがいがある。
「ようし!神様のために頑張っちゃうよー!」
「それに餅つき大会もあるみたいだし!楽しみだね!皆!頑張ろう!」
「おー!!」
花木の傘下の妖怪兎はそこまで速くはないが、木材の加工スピードと質がかなりの物だった。
これが妖怪兎の得意分野か、すごいな。
「しゃー!頭領の命令だ!一気に作っちまうか!」
「おし、ここの神さんが驚く仕事をすっぞ!」
「おー!!」
妖怪狸の仕事もかなり速く統率が取れている。
組み立てるのが得意だと言う久里の話は確かなようだ。
屋台をとんでもない速さで組み立てていった。
「屋台の数はどうすんだい?」
「屋台の数は20でお願いします」
「あいよ」
「神座はどうすんだ?」
「これこれ、こういう形にお願いします」
「任せな!」
茜は俺の指示を元に、周りの人に指示を出している。
因みに神座とは、神体を安置する場所のことだ、普通は神社にある物だが
四宮神社の祭りは神座を人間が作るらしい、まぁ、そこに俺が座るって事だ。
「あ、杵と臼はどれだけ作れば良いですか?」
「あぁ、大会用だから、5個だな」
「はーい!」
たまに花木と久里の傘下の妖怪が俺の方に来て、指示を聞いてきたりする。
まぁ、妖怪には見えてるし、問題は無いんだけどな。
しかし、前まで僅か5人で準備していたのが嘘みたいだ。
これだけの人数が四宮神社の祭りを楽しみにしてたんだな。
さて、この調子なら、すぐにでも開催できそうだ!




