泳ぎの練習
「ちゃんと運動はしたな」
「はい、今度はばっちりです」
茜に運動をしたかしてないかを聞いて見たら、やはりしてないと答えた。
だが、今回はしっかりと準備運動のやり方を教え、茜は言われたとおりに運動をしてくれた。
これなら足がつったりして溺れる、何て危険性は低いだろう。
「ケロケロ、溺れないように気を付けるケロ」
「う、うん」
溺れていてぜーはー言ってた茜だが、運動をして居る間にある程度回復したらしく
運動が終わるとすぐに湖で泳ぎ始めた、回復速度は流石と言ったところだな。
「は、ふ、ふ、ふ」
しかし泳ぎ方は見るに堪えない、手を前に出し、手をぱたぱたと動かしている
あの泳ぎ方は完璧に犬かきだ、あれじゃ足がつらなくても溺れそうだな。
「茜、随分と泳ぎ方が下手だな」
「そうなんですか? 私はてっきりこの泳ぎ方が正しいのかと、ほら、あの2人も」
「ん?」
茜が指を向けた先には犬かきで結構泳いでるキキとキャンの姿があった。
「はは、やっぱりつらなければ泳げるな」
「普通は魚など釣れぬのじゃ」
「圭介様から説明を受けたくせに、まだ理解してないのか? はは! やっぱり馬鹿だなお前は!
馬鹿すぎて笑える! よくそんなんでわっちのことを馬鹿犬などと言えるな!」
「な、なんじゃと!? り、理解程度しておるわ!」
「じゃあ説明してみろよ! この馬鹿狐!」
「よ、よいぞ、つるというのは・・・・じゃな・・・・つるとは・・・・えっと」
「どうしたどうした? ほれほれ、早く言いなって!」
「う、うるさいのじゃ-!」
「な、うわぁぁ!」
キャンの言葉に答える事が出来なかったキキはものすごく馬鹿にした表情をしてからかっていた
キャンにダイブして、水面で取っ組み合いを始めた。
その間の喧嘩で、キャンは何度かバランスを崩し溺れそうになっていたが
キキはそんな事は一切なく、普通に水面で喧嘩が出来ていた。
どうやらキャンは泳ぐのがあまり得意ではないようだが、キキは感覚的にでも泳げるようだ。
つまり、水面ではキキの方が強い。
「離せー!」
「ふはは! どうじゃどうじゃ!」
「この! 答えられないからって攻撃してくるとかふざけんな-! この馬鹿狐が!」
「くくく、何とでも言うが良いのじゃ、知識など無くとも強ければ良いのじゃからな!」
「認めたな! ついに認めたな! 自分が馬鹿って認めたな!」
「うっさいのじゃ! キキは馬鹿ではないのじゃ!」
「じゃあ手を離せー!」
キキがキャンの後ろに回り、肩をがしっとわしづかみしている。
この状況だとキャンは後ろのキキに攻撃をすることは出来ないだろうな。
これが狩りだったら、キャンは首根っこ噛みきられて死んでたことだろう。
だが所詮はじゃれ合い、そんな事は無い。
「確かにあの2人、泳ぐの上手だよな」
「そうですよね、泳ぎながら喧嘩が出来るって凄いですし」
「止めなくても良いのか?」
「良いだろ、いつもの事だし」
「でも、あのままだと怪我しそうだけど・・・・まぁ、別に良いわね、あれでも神らしいし」
「そうだな、怪我しても速攻で治るだろう」
あの2人は見た目は幼く背が低いが、あれでも一応神だしな。
多少の怪我程度一瞬で治ることだろう、でも、神同士の喧嘩で負傷した場合どうなるんだろうか。
・・・・あ、そう言えばいつも怪我をしてもすぐ治ってたし、手加減してたら問題は無いのか。
「ケロ、溺れなければいいんだけどね、まぁ、その時はケロの出番ケロ」
「溺れてもキキが助けそうだし問題ないだろう」
何だかんだで仲が良いあの2人だ、片方に何かあっても片方が助けることだろう。
「そうですね、じゃあ、私達は私達で泳ぎましょう」
「そうだな、あ、そうだ茜、お前に泳ぎ方を教えてやろう」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、そのままだと溺れそうだからな」
「否定したいけど否定できませんね」
「泳ぎならケロが教える方がいい気もするケロが、なんで自分で教えるケロ?」
「お前の泳ぎ方と人間の泳ぎ方に違いがあるかも知れないし
他にもお前は他の誰かが溺れたときに素早く救助に向って貰わないと行けないだろ?
だから、お前が茜の泳ぐ練習に付きっ切りって訳にはいかないんだ」
「ふむふむ、なる程、よく分かったケロ」
賢子は俺の説明に納得してくれたようで、大人しく見張りに戻った。
「じゃ、練習するか」
俺は軽く運動した後に湖に入り、茜に泳ぎ方を教える事にした。
「それじゃあ、泳ぎ方を教えてやる」
「はい、よろしくお願いします! でも、その前に1つ良いですか?」
「なんだ?」
「どうして圭介様は服のままで?」
「どうしてって、水着無いし、このままでも泳げるからだな」
この服は布じゃないから水も吸わないみたいだからな、便利な物だ。
「そうなんですか、凄いですね」
「便利だろ? さてと、それじゃ練習を始めるぞ」
「あ、はい!」
「まずはバタ足だな、蓮でも大丈夫か分からないが、蓮に捕まって足をバタバタさせて見ろ」
「はい」
茜は俺の指示通りに近くの蓮に捕まり、足をバタバタさせ始めた。
今まで犬かきで泳いでいたから不安だったのだが、意外な事にバタ足は上手い。
「意外と上手いな、バタ足」
「これ位は出来ますよ」
「じゃあ、今度は実際に動いてみるか、俺の手に掴まってくれ」
「え? あ、はい」
少しだけビックリした表情を見せたが、すぐに俺の手を掴んでくれた。
意外だったのか? まぁ良いか、とりあえずこの状態で泳がせてみるか。
「それじゃ、さっきみたいにバタ足で泳いでみてくれ」
「は、はい・・・・出来るかな?」
やや不安そうだが、ゆっくりとバタ足を始めてくれた。
最初の方はあまり進まなかったが、少しずつ時間が経つと進むようになって来た。
やはりバタ足だけなら結構上手だな。
「よし、こんなもんだろう」
「はい」
「じゃあ、次はクロールだ」
「クロール?」
「クロールは泳ぎ方の基本の1つ、とりあえずこれを覚えれば大方泳ぐ事は出来る
とりあえず最初は俺が軽く手本を見せるから、よく見ててくれよ」
「分かりました!」
茜にクロールを教える為、とりあえずその辺をクルクルとクロールで回って見せた。
こうやって冷静な状態で泳いでみて気が付いたが、水中で息を止めていても苦しくない。
これなら息継ぎ無しで何十メートルだろうと泳げそうだが
茜にクロールを教えるために、息継ぎはした、殆ど演技みたいな物だけどな。
「ふぅ、こんな感じだ、見ただけで出来るようになるわけはないが、軽く勉強にはなったはずだろ?」
「はい、少しだけやり方が分かりました、少し見せますね」
そう言うと、茜は俺の泳ぎを真似して少しだけ泳ぎ始めた。
あまりフォームは良くないし、息継ぎのタイミングも少しおかしいが結構本格的に泳げている。
1回見ただけでここまで分かる辺り、割と才能があるのだろう。
「ど、どうですか?」
「あぁ、上手かったぞ、でも、少しだけ違うかな、そこを教えてやるよ」
「ありがとうございます!}
俺は茜の悪いところを軽く指摘した、茜の悪いところで1番致命的だった息継ぎを軽く指摘した。
その指摘を受け、茜はタイミングを見直しながら泳ぎ、完璧とまでは行かないが
かなり綺麗に泳げるようになった。
「よし、良く出来たな、これなら大丈夫だろう」
「ありがとうございます! これでずっと泳げますね!」
「そうだな、かなり長い間泳げるだろう」
「はい! 本当にありがとうございました!」
かなり嬉しかったんだろうな、表情がいつも以上に晴れやかだ。
こんなに嬉しそうな表情を見たら、教えて良かったと思う。
「どうやら教え終わったようケロね、それじゃあ、あの2人を止めて欲しいケロ」
「ん?」
少し呆れた表情をしながら指を向けた方ではキキとキャンの喧嘩を刀子達が止めている姿があった。
「離すのじゃ! キキはあの馬鹿犬と決着を着ける!」
「馬鹿か、そろそろ喧嘩は止めろ、泳ぎながらの喧嘩は危ない!」
「ぜー、ぜー、ぜー」
「ほらほらキャン、興奮しないでもう息も荒いんだから」
「む、むぅ・・・・どうしたのじゃ、キャン、随分としんどそうじゃな」
「ま、まだまだ・・・・ぜー、ぜー」
「・・・・ふむ、どうやらここまでの様じゃな、勝負はお預けじゃ、水から上がるぞ」
「わ、分かった」
「ケロ、自己解決したケロね、良かったケロ」
やっぱりあの2人は仲が良いらしい、喧嘩していても相手の心配をする位だからな、安心した。
それじゃあ、しばらくの間、俺達はゆっくりと泳ぐとするか。




