花見祭り
さてさて、桜も咲き誇り、かなり賑やかになって来た我が神社。
境内には沢山の参拝客というか、花見客と。
更には境内には複数の屋台が出そろい、ものすごく楽しそうな声がこだまする。
美味しいという声や、綺麗と言う声、凄いという声すらある、他にも。
「ありがたやぁ」
「見た目は普通なのに神様なんですね」
「普通の方が、親しみやすいだろう? 例えば俺が鬼の様な形相で君に話しかけたらどうなる?」
「こ、怖くて逃げると思います」
「そうだろう? だから俺の容姿は普通なんだ」
俺の前で膝をつき、拝む人達や、俺を見て不思議そうにしている子供たち。
そんな人達の相手もしないといけないと言うね、結構大変な物だな、参拝客が多いというのは。
でも、基本的に楽しそうだし、俺としてはあまり苦には感じないんだよな。
「沢山の人達が来ていて、賑やかですね、初詣の時位です」
「屋台もあるし、桜の花もある、でも、初詣と同じ位なんだな、予想外だ」
「初詣は神様への挨拶ですからね、信仰されている神社には沢山来ますよ」
「そうか、一応誇っておこう」
神様としてはこれは誇っても良いことなんだろうしな。
とりあえず、料理を作るとしようか、数量限定で。
最初は準備した分の一部を出して、100食分かな。
こんなに買われるか疑問だが、一応作ったんだし、出しておこう。
「それじゃあ、茜料理を持ってきてくれ」
「分かりました」
俺の指示を聞き、茜は素早く四宮神社の奥から、沢山の料理が入った鍋を少し辛そうに運んできた。
かなり多いし、当然辛いよな、こんな時にキャンやキキがいてくれれば良いんだけど。
あいつらは、今はマスコットキャラとして狼状態と、狐状態で鳥居の前に立ってるしな。
花木達は屋台で動いてて、久里は見回り、刀子とサラと四季はお守りを販売して貰ってるし。
「やっぱり、重いか?」
「はい、流石に重たいです、お師匠様が来てくれれば楽なんですけど」
そう言えば、葵の姿が無いな、あいつなら参加しててもおかしくないのに。
文月山の妖怪達は、向こうで何かやるんだろうから、来なくてもおかしくないが。
いや、待てよ、来るのか? 来る可能性があるな、まだ来てないけど。
俺がそんな事を思っていると、神社内部が少し光、そこから時音達が姿を現した。
「噂をすればだな」
「よっとと、相変わらず賑わってるわね」
「花見だし、で、少し遅かったけど、どうしたんだ?」
「忘れてたのよ、今日だって事、葵が来てくれて助かった」
文月山の妖怪達の中に、水菜とにらみ合ってる葵の姿があった。
「どうしたんだ? その2人、なんで喧嘩腰なんだ?」
「水菜が折角し戦おうで、と言って、葵は嫌だって言ってる状況よ」
「そんな状況なのについてきたんだな、一緒に」
「そりゃね、折角の花見なのに行かないわけには行かないしね」
「うちはこいつが移動するなら移動したってだけやで? 戦いたい訳やし」
「あのねぇ、折角の花見で客人が多い状況で戦えるかっての、四宮神社の印象が悪くなるわよ」
「せやから、山明神社でやろうと言ったやないか」
「そこで戦ってたら、四宮神社で花見できないじゃないの、馬鹿なの? 私はね
あなたみたいな戦闘馬鹿と2人きりで花見なんざしたくないのよ」
「なら、桜の花を見ずに、うちと戦う事だけを考えとけばええやないか」
「この脳筋女」
あぁ、かなり空気が悪いな、あの状況、こんな時どうすれば止まるんだ?
とりあえず、俺達で仲裁した方が良いんだろうな。
「まぁ、お前ら、止めとけって」
「そうですよ、お師匠様、そんなに怒らないでくださいよ」
「水菜もね、年に1度の花見時期に喧嘩は良くないわよ」
「そうそう、戦いたいなら殴り合いじゃ無くて、別の方法で戦えば良いんだよ」
「別の方法やと?」
「そうね、例えば飲み比べとかね、これなら花見っぽいわ」
「いやなぁ、時音さん、それは勝負やないで、娯楽や」
「あなたにとっては、力と力のぶつかり合いも娯楽でしょうが」
「あはは、これは1本取られたわ」
ふぅ、なんとか喧嘩は止めてくれたようだな、焦ったぜ。
でも、まぁ、これで人手も出来たことだし手伝って貰うとするかな。
「さて、喧嘩も止まったし手伝ってくれ」
「分かったで、うちに出来ることなら、なんでも任せるんや」
「じゃあ、料理を運ぶ手伝いをしてくれ、茜1人だと厳しいから」
「料理なんて作ってたのね、どうして?」
「折角だから気まぐれで料理を振る舞おうかと思ってな」
「面白そうね、神様の料理を振る舞うと言うのも」
「そうだろう? と言うわけで、運ぶのを手伝ってくれないか?」
「分かったわ、手伝いましょう」
俺達は時音の許可を貰い、水希と水菜を借りる事にした。
当然、この作業には葵も手を貸してくれるそうだ、これで料理も捗りそうだ。
そして、料理を運び、準備が完了して100食だけ売ることにした。
「うん、それじゃあ、100食だけだな、来れば良いが」
「美味しそうな匂いですね! 私にください! おいくらですか?」
俺の見せに気が付いた優しそうな顔の女の子と、少し気が強そうな女の子が2人でやって来た。
しかし、値段は決めてない、ここはお賽銭的な感じで良いかな。
「値段は決めてないから気持ちで良いぞ」
「そうなんですか! じゃあ、1貫文で」
「は? 1貫文!? いくら何でも、それは高すぎじゃ!?」
いくら何でもうどん1杯で1貫文は高すぎだろう! 何でだ!?
「神様からいただく食べ物なのですから、安くてはいけませんし、あ、私はおうどんをください」
1貫文を渡され、俺は不思議に思いながらもうどんを作り女の子に渡した。
「ありがとうございます! それでは、いただきます」
彼女はすぐにうどんを食べ始めた、そしてすぐに表情が変わった。
「お、美味しいです! 凄く美味しい!」
「そうなの?」
「そうだよ、ほら、食べてみて」
「あ、うん、それじゃあ・・・・美味しい、薄い味が好み!」
彼女達はうどんをかなり嬉しそうに食べてくれた、1貫文払って良かったと思ってくれてれば良いな。
そして、そんな彼女達の反応で店に気が付いたお客さんが押し寄せて来て、うどんとラーメンは
まさに飛ぶように売れていった、その結果、100食は1時間も経たない間に売れてしまった。
更にその間の平均の気持ちの金は2貫文とえげつない値段だ。
俺がその値段で買ってくれと言ったわけで無く、気持ちでと話したというのに、この値段だ。
ただ、あくまで気持ち、中にはボロボロの着物の男の子とかも来たが
その子が払ったのは1文、それでも当然差し出す。
あくまで値段は気持ちだしな、そんな状況を見て、周りもその程度になると思ったのだが。
何故かむしろ増えて行ったりと、よく分からない間に売り切れた。
「予想以上にお客さん来ましたね」
「そうだな、それに金も妙に多いし、俺は高くした覚えは無いんだがな」
「きっと、それだけ皆さんは圭介様に感謝してるんですよ、気持ちですからね」
「・・・・そうかい」
そうだと良いな、ま、とにかくだ、この食べ物屋の評価が高いのは分かった。
あまり売れなければこれだけで終わらせようと思ったが、気まぐれで何度かやってみるかな。




