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早食い大会

とりあえず、花見の為の準備は完成した。

食い物もちゃんと揃ってるし、飲み物も十分だ。

まぁ、酒を飲むのはほんの一部なんだけどな。


「さて、それじゃあ、花見を始めましょうか!」

「さぁ、お前ら! 今日は盛大に騒ぐぞ!」

「おぉー!!」


俺と時音の号令を合図に全員は一斉に食事を取り始めた。

全員、もの凄い速度で大量の食事に手を付け始めた。


「はむはむ!」

「おい! そこの馬鹿猫!」

「僕になんの用にゃ! 僕は狐になんかに用は無いにゃ!」

「キキは用があるのじゃ! お主! 何故ご主人の隣で食っておる!」

「僕はただ親分様にお酌をしているだけニャ~、部下としては当然なのにゃ~」

「ぐぬぬ! ご主人はキキのご主人じゃ! こうなれば、勝負じゃぁ!」

「にゃにゃ! 望む所にゃ! 狐なんかじゃ僕には勝てないことを証明してやるにゃ!」


チャイムとキキが喧嘩ね・・・普通に真っ向からやり合えば、当然キキの圧勝だろうな。

キキは威厳の欠片も無いが、一応神だからな、超ちっさい小神だけど。

それでも腐っても神だし、妖怪であるチャイムに勝算はほぼない。


「この勝負に勝った者が!」

「親分様のお隣にゃ!」


2人の間に火花が散っている・・・まぁ、予想通りなんだよな。

こいつらが喧嘩になるのは、結構予想できていたことだ。


「お前ら、喧嘩は止めろ、その代わり、競技なんてどうだ?」

「競技ですかにゃ?」

「どのような物であっても! ご主人のご指示とあらば行ないましょう!」

「じゃあ、あの台に上れ、そこれ・・・そうだな、早食い勝負をしてみてくれ」

「早食いですな! 了解致しました! そら! 馬鹿猫よ! 勝負じゃ!」

「親分様のご指示ですにゃら、このチャイム、何でもこなしますにゃ!

 必ずや、この狐を打ち負かし! 親分様にお酌の続きをいたしますにゃ!」


2人はいがみ合いながら、あの台の上に乗った。

そして、隣に座ってその話を聞いていた茜が、素早く2人に大きめの料理を運んできた。

あいつ、いつの間にあんな場所に移動していたんだか、こう言うときの移動能力は凄まじいな、茜。


「にゃ! こ、この料理は!?」

「ま、まさか・・・あ、茜殿! こ、この料理を早食いをしろと!?」


茜が2人に運んだのは、あの2人が最も嫌いという食材をふんだんに使った料理だ。

これは、俺と時音がこの場を盛り上げるために仕込んだ物だ。


「ふふ、そうよ、あなた達が大っ嫌いな料理よ、ま、こうなるのは何となく分かってたからね

 私が準備してたのよ、あ、私はチャイムのだけよ?」

「で、俺がキキの料理だ、作ってやったんだありがたく思えよ?」

「な、何故ですか! ご主人! 何故キキにこのような事を!?」

「そうですにゃ! にゃんでよりにもよって僕が嫌いなピーマンがこ、こんにゃに!」

「お前らの好き嫌いは少し激しすぎる、だから、荒療治だ、まぁ、頑張れ」

「ふふ、そうそう、それに、好物の早食いとかだとすぐでしょ? それじゃあ、酒の肴にならないし」

「む、むぅ・・・むぅ! き、キキは! キキは食べて見せますのじゃ! ご、ごご、ご主人の

 ご期待に応えるため! この、こ、この豆を食って見せますのですじゃ!」


最初に自分が嫌いな食べ物に手を付けたのはキキだった。

キキはものすごく嫌っているそら豆を箸で掴み、震えながら口に運んでいった。

しかし、口の前で止まり、更に震えが酷くなり始めた、どれだけ苦手なんだよ。


「く、くぅ、このままでは負けてしまいますにゃ・・・そ、それだけは・・・それだけは!

 ぼ、僕だって・・・僕だって! こ、この、ぴ、ぴぴ、ピーマンを、おぉぉ!!」


キキに対抗して、チャイムも大っ嫌いなピーマンに手を伸ばした。

そして、これまたキキと同じ様にゆっくりと震えながら口に運んでいる。


「あ・・・む、むぅ・・・」

「う、ふ、くぅ・・・」


2人は全く同じ様に口の前に苦手な食べ物を移動させた。

そして、同じ様に真っ青な表情に汗をダラダラと流しながら各々の苦手な物を睨み付けている。


「頑張れぇ!」

「おぉ! そのまま食べちゃえ!」

「頑張って~」

「口の中に入れて!」

「そうそう、口の中に入れて、呑み込んでしまえばすぐだ!」

「好き嫌いしてたら大きくなれんぞ!」

「最初の1歩さえ超えてしまえばすぐだ!」

「お、おい! 馬鹿狐! 負けるんじゃ無いぞ! お前はわっちのライバルなんだからな!」

「む、むぅ・・・ま、負けられぬのじゃ! あの馬鹿犬に笑われる訳にはいかぬのじゃぁ!」


キャンの言葉で背中を押されたのか、キキは一気にそら豆を口の中に入れた。


「おぉ!!」


そして、尻尾をピンと立て、ゆっくりと、恐る恐る口を動かした。


「む、むぐ! む、むぐぅ!」

「おぉ! やったぞ! そのままだ!」

「あぁ、これは負けちゃったかもね! チャイムちゃん」

「く、くぅ、僕は負けにゃい! 負けにゃいにゃぁぁ!!」


だが、チャイムも負けじと、大っ嫌いなピーマンを口の中に入れた。

そして、同じく尻尾を威嚇した猫の様にピンと伸ばし、震えながら口を動かした。


「お、お互い引かないな」

「それだけあなたの隣が良いのね」

「圭介様は動物に良く懐かれますからね」

「動物だけかしら? ま、動物からは異常に好かれているのは納得するわ

 ほら、あの2人の表情見なさいよ、半泣き状態でも必死に食べてるわ」

「むぐ、むぐ、むぐ!」

「もぐ、もぐ、もご・・・もぐ!」


それだけ必死なのか、そこまで俺にお酌をしたいのか? 物好きだな。


「はい、圭介様」

「お、ありがとう・・・さて、そろそろかな」

「むぐ? ・・・お、美味しい!」

「美味しくにゃってきましたにゃ!」

「そら豆が急に美味くなり始めた!」

「こ、これにゃら行けるにゃ!」


2人は一気に素早く残った各々の料理を食い始めた。


「な、何だ!? いきなりスゲー速度で!」

「お、おぉ! 苦手な物をあそこまで!」

「ふむ、これは・・・」

「凄いですね、さっきまであんなにいやがっていたのに!」

「ケロ・・・ど、どうなってるケロ?」

「・・・なる程、考えたな」


どうやら、心桜はどうしてああなったかという理由に気が付いたようだな。

きっと、心を読んだんだな、さとり妖怪だし。


「ぷはぁ! どうじゃ! キキの勝ちじゃ!」

「ま、まさか・・・僕が負けるにゃんて・・・」

「ご主人! やりましたぞ! これでキキが優勝しましたぞ!!」

「よし、良く自分が苦手な物を克服して勝利したな、よく頑張った」

「く・・・にゃんと言う屈辱、折角頑張ったのに、負けるにゃんて・・・」

「チャイム、お前も良く自分が苦手な物を克服したな、勝負にゃ負けたが

 俺はお前の頑張りをしっかりと見ていたからな」

「お、親分様・・・うぅ、僕は一生あなたに付いていきますにゃ!!」


よしよし、とりあえず、何とかあいつらの苦手は克服できたな。


「圭介様? 何で2人は後半から一気にあんなに速く?」

「簡単な事だ、ほれ、あそこを見ろ」

「あそこ?」


俺はあの台の裏側の方に視線を移した。

そこには、久里が俺の方を見て指を立てている。


「久里さん・・・も、もしかして!」

「結構簡単な手品よね、ま、要するに後半2人が食べてたのは、あの子達が好きな物よ」

「そう言うこと、久里に化かして貰ってたんだ、2人は相当動揺してたみたいだから

 食感には気が付かなかったようで良かった」

「へぇ、凄いことを考えますね・・・」

「苦手を克服するには荒療治が1番だ、そして、ちゃんと飴と鞭を使い分けないとな」

「その結果が、あの早食い大会、本当良くあそこまで考えられた物ね」

「思い立ったが吉日ってな、良さそうな事を思えば、すぐに実行した方が良いさ」


行動力って奴だな、ま、失敗する危険性はあるが、成功すればそれで良い。

それに、あの2人の間にも友情が芽生えたみたいだしな。

お互いに称え合っているし、もう、あれだな、本来の喧嘩を始めた理由、忘れてそうだ。

俺は2人を見ながら、茜が入れてくれた酒を飲み干した。

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