少し辛い成長
とりあえず、俺達は3時間ほどの間、茜を寝かせている事にした。
でも、まぁ、2時間くらいで茜が起きてきた。
茜は自分のまたを押えながら、ゆっくりと俺達の方に出てきた。
「うぅ・・・私、生きてたんですけど・・・その、まだ血が止まってません・・・私、どうなっちゃうんでしょう」
「安心しろ、死ぬわけじゃない、とりあえず、なんでそうなったのか説明しよう」
俺は茜に生理のことをある程度教えた。
茜はこの現象が自分の体が異常だから起こっている訳ではなく
女性なら誰でも通る道だという頃を知り、少し安心した素振りを見せた。
「よ、よかった、私、死なないんですね・・・よ、よかったぁ・・・」
「あぁ、だから、安心してくれ」
「で、でも、このままだと、巫女装束が汚れてしまいます・・・どうしましょう・・・」
うーん、困ったな、当然対処のしかたとかはあるんだろうが、俺はそう言う知識に疎い。
ナプキン? だっけ? そういうのを使うと言うのは子どもの頃の曖昧な記憶にあるんだが
そんな道具はここにはないし、そもそも使い方なんて俺は知らない。
「うーん・・・どうするかな、確かにそのままだと茜の寝床が血で汚れそうだしな」
「うぅ・・・止まってくれないかなぁ・・・」
俺達がうんうん悩んでいると、玄関の方からよく聞く声が聞えてきた。
「誰かいるかしら? いるわよね?」
「あ、時音さんだ、行かないと・・・うぅ、い、痛い・・・」
茜は立ち上がろうとするのを止め、自分のお腹を少しだけ押えた。
生理痛って奴か、まぁ、こんな状態だし、仕方ないよな。
「茜、お前は休んでろ、しばらくの間は俺が色々とするから」
「で、でも、圭介様に色々とやって貰うのは・・・み、巫女として・・・うぅ・・・」
「気にすんなって、こう言う辛いときくらい誰かに頼れよ」
「・・・わ、私は、やっぱり、駄目な巫女ですね・・・」
「そんな事は無いさ、さて、休んでろ」
「・・・はい」
茜は納得してくれたようで、立ち上がろうとする動作を止めた。
俺はその姿を見た後に立ち上がり、玄関の方まで行った。
「あ、圭介、あなたが出てくるのね、茜は?」
「茜は調子が悪くてな」
「やっほぉ! 茜ぇ! あたいが遊びに来たよぉ!」
俺が出迎えるとすぐに水希は神社の奥の方に行こうとした。
俺はとりあえず事情を説明するために、水希を捕まえて、奥に行くのを止めた。
「わぁぁ! な、なに? どしたの?」
「茜は今調子が悪くてな、今日は修行もしないし、遊ぶなんて事も出来そうにないぞ?」
「え!? 調子が悪いの!?」
「どうしたの? 風邪かしら?」
「いや、生理だ」
「生理? あぁ、茜ちゃん、生理が来たんだ!」
この返答から考えて、どうやら水希はもうすでに生理が来ているようだな。
来ていないとすれば、花木や刀子みたいな反応をするだろうしな。
「あぁ、ついに茜も少女から女の子になったのね、かなり遅い気もするけど」
「あ、そうだ、何かこう、対策とか無いか?」
「対策? 生理は人間の女性なら確実に来るわよ? 対策も何もないでしょうに」
「いや、血の対策だ、出血が酷くてな、茜も巫女装束が汚れるって嘆いてたし」
「・・・そんなの、そこら辺の綺麗な手拭きをまとめて付けてれば良いじゃないの」
そこら辺の綺麗な手拭きか・・・確かにあるんだが、あんまり沢山は必要ないと思って
3つくらいしか買ってないな・・・
「3つくらいしか無いぞ、そんなの」
「・・・女の子の日に備えて置いておきなさいよ、あぁ、あなたは男だから対策してなかったのか」
「ま、まぁな、でも、人間の女性にしか来ないんだろ? じゃあ、何でお前は対策してたんだ?」
「これでもあなたよりも長いのよ、私が眠る前に仕えていた巫女が騒いでたから、対策したのよ」
あぁ、そうかそうか、こいつは俺よりも神様としては長生きなんだよな。
そりゃあ、先代の巫女がいるだろうし、対策はしているかな。
・・・俺も娘とかがいたら、対策とかしていたのかも知れないな。
「なるほど、経験か」
「そうそう、ま、とりあえず、今は神社に置いてあるって言う3つの手拭きを使いましょう」
「あぁ、そうだな、じゃあ、茜の世話とかを少しの間頼む」
「あなたはどうするの?」
「俺はとりあえず手拭きを買ってくる」
「分かったわ、じゃあ、その間の茜の世話は私に任せなさい」
「あたいも頑張っちゃうよ!」
「じゃ、頼む」
俺は茜の世話を2人に任せて、その間に清潔な手拭きを買いに行くことにした。
「け、圭介様だ!」
「圭介様、どうなさりました!?」
村の方に降りている間の階段で、参拝客の2人に出会った。
この2人は結構な頻度で参拝に来ているな。
「いやな、茜の調子が悪いから、清潔な手拭きを探しに来たんだ」
「調子が悪いから清潔な手拭き・・・あ、なるほど、理解できました、おめでたいですね」
2人は俺の軽い言葉ですぐに茜の状況を理解したようだ、同じ人間の女性だからだろうな。
「だから、今日は参拝してくれても、茜は対応できないかな」
「そうなんですか、それでも上がりますけどね」
「そうか、それは嬉しいな」
「それでは圭介様、失礼しますね」
俺は参拝客の2人に別れを告げて、村の方に行った。
俺はすぐに清潔な手拭きが置いてある店に行き、軽く店中の手拭きを買った。
「あ、あの、圭介様、かなり多くご購入なさるんですね・・・」
「あぁ、茜の為だしな」
「・・・茜ちゃんの為・・・ですか・・・・・・! あ、そういうことですね!」
「分かったのか?」
「えぇ、私の娘もその時期は大変そうにしていますからね、男には分からない苦労って奴でしょう」
「そうだな、俺も茜の辛さは分からないし、ま、だから出来ることをするんだけど」
俺の返答を聞いた店の親父さんはにっこりと笑った。
「圭介様も父親のような顔をしていますね、そうですね、同じ父親のよしみって奴だ
本来なら無料にしてあげたいんですが、流石に私達にも暮らしがあるので、半額でお願いします」
親父さんは気前よく半額にしてくれた、でも、少しだけ申し訳なさそうだ。
本来なら俺は全額を払えるだけの金はある、でも、親父さんの善意だ、受け取るとするかな。
こう言うときは善意を受け取らない方が失礼だと言う事を学んだし。
「願ってもない申し出だな、じゃあ、それで頼む」
俺は自分の懐から金を出し、親父さんに払った。
「ありがとうございます、あ、もしよろしければ、茜ちゃんに1つ伝言をお願いできますでしょうか?」
「何だ?」
「辛いかも知れないけど、それは成長の証だから頑張ってと、伝えて下さい」
「あぁ、分かった、じゃあ、また来るよ」
「はい、伝言、しっかりとお伝え下さいね!」
「あぁ、分かってるよ」
俺は大量の手拭きを持ち、四宮神社に転移した。
こう言う沢山の荷物を持っている状況だと、転移の能力は本当に便利だな。
「おい! 買ってきたぞ!」
「少し遅かったわね、一体何を・・・って、多すぎでしょ? 何それ、山?」
「いや、どれ位買ったら良いか分からなかったし、とりあえず店にある手拭きを全部買ってきた」
「・・・はぁ、買いすぎよ・・・」
時音はかなり呆れた風な声を出しながらも、俺が持っていた手拭きを受け取った。
多すぎたかなと思ったが、時音に渡した手拭きを冷静に見ると、確かに多すぎた気がする。
軽く立ってっている机の高さと同じくらいだ・・・・・・完全に買いすぎたな。
「かなり心配してたんだよ!」
「その様ね」
「まぁな・・・あ、そうだ、茜は何処にいるんだ?」
「普通に神社の居間で座ってるわよ、歩き回って床を汚すわけにはいけないからってね」
「そうか」
痛いからとかじゃなくて、床を汚さないためにか、茜らしい理由だ。
こんな状況でも献身的に物事を見るなんてな。
「茜、大丈夫そうか?」
「あ、は、はい、少しだけお腹が痛いんですけど・・・」
「そうか、なぁ、茜、布屋の親父さんから伝言を預かっててな」
「伝言ですか?」
「あぁ、辛いかも知れないけど、それは成長の証だから頑張ってだってよ」
「成長の証・・・そうなんですか?」
「あぁ、成長すれば何もかも楽になるわけじゃないって事だな、でも、大切な成長だぞ?」
茜は俺の言葉を聞き、少しだけ笑った、少し弱々しい笑顔だったが、安心は出来たようだな。
「圭介様・・・分かりました、辛いですけど、私、頑張りますね
落ち着いたら、布屋のおじさんにもお礼を言わないと」
「あぁ、じゃあ、後は時音に任せるよ、俺じゃ無理だしな」
「そうそう、自分の部屋に行ってなさい、出来たら呼ぶから」
「分かったよ、茜の事、任せたぞ」
「あたいに! まかせなさい!」
水希はあまり信用できないが、時音がいるから大丈夫だろう。
俺は時音の言葉に従い、自分の部屋に戻った。




