妖精2人の失踪
かなり夜が深くなってきたが、サラ達は未だに帰ってこない。
一体何があったのかと思い、俺達は全員で2人を探すことにしたが、やはり居ない。
「うぅ、あの2人、どうしたんでしょうか・・・」
「さぁな、いつも飯の頃には帰ってきてたってのによ・・・」
「はい、心配です・・・」
茜はかなり心配そうにしているが、もうかなり遅い。
こんな時間に探し回っても、見付かりそうに無いし、妖怪も出てくるだろうしな。
「はぁ、仕方ない、今日は一旦休むぞ」
「で、でも!」
「俺も心配だが、このまま探していたら、俺達も妖怪に襲われかねない」
「それ位、今の私なら十分倒せますよ・・・」
「そうだろうが、体を休めないと駄目だ、明日また本格的に探す」
「うぅ・・・わ、分かりました・・・」
俺の説得に応じて、茜は大人しく四宮神社まで帰ってくれた。
「あ、2人とも、どうだった?」
花木が、普段の呆けた口調では無く、真剣な話し方で俺達に聞いてきた。
花木も、それだけ2人のことを心配してくれているって事だな。
「居なかった」
「うぅ、どうしたんだろうね・・・」
「ぬぅ・・・サラ達は何処に行ったのだろうか・・・」
「分からない・・・」
キキ達もかなり心配している様で、普段喧嘩しているくせに、今回はお互い喧嘩はしていない。
「まぁ、今日はもう休んでくれ、明日明るい間に、本格的に探すぞ」
「はい・・・」
「わかったよ・・・」
「うぅ・・・承知致しました・・・」
「圭介様の指示ならば・・・」
俺の指示もあって、4人は大人しく各々の部屋に戻っていた・・・
そして、少しして、俺は自分の部屋で意識を集中させた。
これなら、広い範囲を捜索できるし、その気になれば猫の意思を借りて捜索も出来る。
俺は取りあえず、夜の暗い中を走り回っている猫に視点を乗せて、捜索をすることにした。
・・・しかし、生き物の視点を借りて、生き物を操るってのは、少し難しいな。
でも、暗い中でもハッキリと周りが見えるし、視点を飛ばして捜索するよりはマシだろう。
{・・・あいつらがいそうな場所を探すか}
あいつらは、確か文月山で遊ぶと言っていたからな・・・そして、あいつらが遊びそうな相手は・・・
多分、くるみかチャイムか賢子だ、でも、あの山の異変の時にチャイムと賢子は山明神社にいた。
そうなると、消去法でくるみと遊んでいた可能性が高いだろう。
俺は文月山の方の猫の視点を借りて、くるみの居る化け犬の里を探すことにした。
{やっぱり、大半が寝ているようだな・・・ん?}
殆どの家の明かりが無い状況で、くるみの家だけ、少しだけ窓が光っている。
どうやら、くるみの部屋からのようだな。
{・・・どうするかな、あ、そうだ}
俺は視点を借りている猫を操り、その窓の近くまで移動した。
そして、窓から中を見ずに、軽く猫の手で窓を叩いた。
「ん? 窓から音が・・・」
どうやら、くるみは窓から音がしたことに気が付いたようで、窓の方まで移動してきた。
「え? 猫さん?」
「みゃ」
俺は猫で話が出来るか試してみたが、まぁ、出来るわけも無く、鳴き声を上げただけだった。
「うーん、こんな場所に猫さんが・・・あ、もしかして、圭介だったりして!」
「みゃう」
俺は猫の体を操って、一瞬2本足で立たせ、あえ足で手を叩くような動作をして見せた。
「おぉ! これは、本当に圭介かも!」
「みゃぉう」
そして、その後にもう一度同じ様な動作をさせて、そうだと言う事を伝えた。
「ほえぇ、猫にもなれるんだ、人間の姿になれば良いのに」
「みゃ、みゃぅ」
視点を借りているだけだから、俺は人型になることは出来ないな。
「あ、もしかして、サラちゃん達がここに居るって分かったの?」
「みゃ!」
「うん、ここに居るんだ、ちょっと待ってね」
くるみは俺が視点を借りている猫を抱き上げて、部屋の中に運んでくれた。
そして、ベットで少し苦しそうにしている2人を見せてくれた。
「みゃ、みゃぁお!」
「2人とも調子が悪いみたいなんだよ・・・看病しても良くならないし」
「みゃぅ・・・」
何であの2人の調子が悪いんだ? 妖精の調子が悪くなる事なんてあるのか・・・?
「ねぇ、人型になってよ、話しにくいし」
「みゃう」
俺は視点を借りている猫を操って、くるみの手から抜け出して、窓から出て行った。
「あぁ!」
そして、その後すぐに転移の力を使い、化け犬の里まで飛んだ。
「っと、一応猫になっておくか」
俺はその転移した所で視点を借りた猫と同じ姿に変化して、くるみの部屋の窓まで移動した。
「あ、圭介だ! 何で逃げちゃったの?」
「あの猫は俺だけど、体は普通の猫だったからな」
「お、おぉ! 今度は喋った!?」
「今回は体も俺自身だ、一応人型で来るのはあれだから、猫の姿で来てみた」
「どうせなら、犬の姿になってくれれば良いのに、ここは化け犬の里だよ?」
「犬だと視界が悪くてな、猫が丁度良かったんだよ」
「ふーん、まぁ、とにかく部屋の中に入ってよ」
「あぁ」
俺はその猫の姿のままでくるみの部屋の中に入って、サラ達が寝ているベットの上に上った。
「かなり苦しんでる様子なんだ、どうなってるか分かる?」
「うーむ、今までこんな事無かったんだよな・・・まぁ、探ってみるか」
俺は猫の状態のままで、サラと四季のおでこに手を乗せてみた。
何だか触れたときの感覚が妙だが、まぁ、猫だし、しょうが無いだろう。
「どう?」
「・・・うーむ、そうだな・・・この状況、よくよく考えれば、前に1度あったんだよな」
「あったっけ?」
「6年前だったか、7年前だったかに、皆で釣りに行ったんだ、その時にこんな状況になった」
「そ、そうなの?」
「あぁ、その時はまだ周りの穢れが濃くてな、2人は俺の近くか四宮神社の境内でしか
行動できなかったんだ、なのに、離れすぎてしまって、消えかかったことがあるんだよ」
「き、消えかかったの!?」
「妖精は結構曖昧な存在だからな、確実な生命が存在している人間や妖怪と比べて存在が不安定だ
だから、こんな事になることはあるのかも知れないが・・・今はこの辺りの穢れも
山明神社の協力で結構薄れてるはずだ、だから、2人がここに居てもそんな状況になるわけ無い」
「ふーん」
・・・だから、穢れでこんな風になった訳じゃ無いだろう・・・なら、一体、どうして・・・
「まぁ、理由はまだ分からないが、とりあえず四宮神社に連れ帰るよ」
「うん、2人をお願いね・・・」
「あぁ、分かった」
俺は2人と一緒に四宮神社の方まで転移した。
そして、俺は2人を寝室に運び、ゆっくりと眠らす事にした。
さて、その間に原因を考えないとな。
俺は2人を寝かせた部屋で、2人を見守りながら、何故こうなったかを考える事にした。




