先代と茜のお話
昔、と言っても今もですけど、私は四宮神社にいました、次代の巫女の存在として。
お姉様は結構豪快な方でした、いっつもダラダラしたり、修行もしない。
でも、優しくしてくれる、私はそんなお姉様が好きでした。
これから語るのは、私、四宮 茜とお姉様のお話です。
私は自分がいつ生まれて、いつここにいたのかは知りません。
でも、お姉様のお話では、私は神社の鳥居の下にいたそうです。
四宮の巫女は世襲制ではありません、いつも、その代の巫女が何処かから子を拾い
その子どもを鍛え、四宮の巫女になる、そんな風に受け継がれてきました。
「お師匠様!今日は何をするんですか!?」
「だから、お姉様と呼びなさいと何度も言ってるでしょ?」
この日、私はまだお姉様をお師匠様と呼んでいました。
この時の私はまだ5歳でした、まぁ、1ヵ月くらいで6歳の誕生日でした。
「でも、お師匠様だし・・・」
「はぁ、まあ良いわ、今日もお祈りの練習よ」
「今日もですか!?」
「基本だからね、それに巫女はこっちのが本業よ」
「依頼は?」
「面倒だし」
こんな風に、いつも面倒だからとか、かったるいからとかで
私にはお祈りしか教えてくれませんでした。
「よし、今日はこれでいいわ」
「でもまだ殆ど・・・」
「のんびりで良いのよ、下手にやり過ぎると酷いことになるわ」
お姉様はいつも私がもっと修行をしたいというとこう言います。
そして、こう言う時にはいつも哀しそうな表情をします。
何度か理由を聞きましたが、一度も答えてくれませんでした。
「うーん、自主的な修行も禁じられてるし・・・どうしようかなぁ」
お姉様は私に1つだけ、絶対に守る約束で、自主的な修行は絶対に駄目。
これを念押しされていました。
{何で駄目なんだ?}
{私も聞いてみましたが、分かりませんでした}
{何かあったんだろうねぇ~}
{多分、とにかくお話の続きをしますね}
お姉様はいつも私に対して優しくしてくれました。
修行はろくに教えてくれませんでしたけど、それでも心得は教えてもらいました。
お姉様が教えてくれた心得は四宮の巫女は常に世界の味方であれ、でした。
普段の行いもあって、そこまで説得力はありませんでしたけどね。
{普段の行いは大切だな}
{そうりゃ、そうよ}
{なんで私を見るの~?あ!茜ちゃんまで!}
{いえ、すみません}
お姉様の能力は高く、妖怪退治や悪霊退治、依頼を行ったときは完璧にこなしてました。
それだけではなく、書物を書くのも得意で、たまに私に絵本を作ってくれました。
内容は可愛らしい巫女服を着た女の子が色んな妖怪や、異変を解決する内容でした。
{先代の巫女さんがそんな事をしていたなんてねぇ~}
{意外と女の子らしい趣味があったのね、話しによるとハチャメチャだって聞いたけど}
{お姉様も女の子出るから}
少しして、依頼が来ました、普段のお姉様だと軽く無視すると思ったんですけど。
お姉様はその依頼を見て、目の色を変えてやる気になったんです。
当然、疑問に思った私は、お姉様に聞いてみました。
「一体どんな依頼です?」
「・・・あなたには関係無いは、これは、私とあの子の問題だから」
お姉様はそう言うと、急いで何処かに行きました。
普段ならすぐに帰ってくるんですけど、お姉様は夜になっても帰ってきませんでした。
お姉様が帰ってきたのは、2日目です。
帰ってきたお姉様は、すごく哀しそうな、寂しそうな表情をしていました。
「どうしたんですか?」
当然、私は心配になって、お姉様に聞いてみました。
でも、お姉様はうつむいたまま、何も話しませんでした。
私は、不味いこと聞いたかなぁと思い、それ以上話しませんでした。
「ねぇ、茜」
「はい!」
「お願いがあるの」
お姉様は深刻そうな顔で私に話しかけてきました。
その顔を見た私はよっぽど深刻なお願いなんだろうなぁと思いました。
「な、なんですか?」
「1度、1度で良いから、私の事をお姉様って言って?」
「え?」
お姉様のお願いはいつも通りでした・・・いつも通りだった筈なんです。
でも、その表情と、口調からして、よっぽど深刻なんだと思いました。
普段なら断りますけど、何故か、断ったら駄目、そんな気がしました。
「わ、分かりました・・・お、お姉様?」
私はモジモジしてた気がします、なんてったって今までお師匠様と言ってたのに
お姉様なんて、恥ずかしいですからね。
それを聞いた、お姉様は、にっこり笑って「ありがとう」と私に告げました。
「お姉様!何処にも行かないでください!」
その笑顔を見た私は、何故か、反射的にそう口走りました。
理由は無く、ただ、何となく、このままだとお姉様が居なくなる、そんな予感がしたんだと思います。
「・・・大丈夫よ、子どものあなたを1人には出来ないから・・・」
お姉様は優しく微笑み、私を抱きしめてくれました。
今までにないくらい、力強く、私を・・・だき・・・う、抱きしめてくれました!
{茜、もしかして、泣いてるのか?}
{泣いてません!}
グス、そ、それから、1ヵ月の間、お姉様は私の面倒を見てくれました。
そして、私の誕生日・・・いや、お姉様が私を拾った日ですね。
その日が来て、お姉様は思いっきりお祝いしてくれました。
その翌日です、お姉様が居なくなったのは・・・
「・・・これでお姉様のお話はお終いです」
「結構辛いお話だったねぇ~」
「あぁ、そうだな、だけどよ、なんで女の俺をイメージしたら先代が出たのか分からないんだが?」
「えっとですね、つまり、圭介様は料理も出来る、優しいですし、性格が何となくお姉様に似てますし
そこに、修行の手伝い、依頼の手伝い、色々と教えてくれたり、少し厳しかったりで
私が理想とするお姉様にかなり近いんですよね」
だから俺が女に変化したら先代が出てきたなんて言ったのか。
正直、話はあまり意味が無かったような気もするが、先代の事が分かったんだ良いとするか。
多分、茜も先代の事を俺達に知って欲しかったからこんな話をしたのかもな。
しかし、先代の安否が更に気になり始めた・・・まぁ、今は下手に動けないか。




