異常事態
花木に軽く茶を入れてやって、のんびりしている時だ。
「そう言えば、圭介、聞きたいことがあるんだけど」
「聞きたいこと? 何だ? 言ってみろよ」
「今更なんだけど、なんで山明神社に協力してくれるわけ?
私達としてはありがたいんだけど、あなたが得する事なんて無いでしょ?」
またこの質問か、それだけ気にしているんだろうな、時音は。
しかし、困ったな、本当にこの事に対して損得勘定は無いんだよな。
・・・でも、この様子だと、この答えだと不服のようだし、少しそれっぽい事を言ってみるか。
「・・・そうだな、今は神様が居ない状況だろ?」
「そうね、今は私とあなたくらいしか神はいないから」
「だから、俺達2人で何とか協力して結界を広くしないといけないんだ、ただそれだけだよ」
「なるほどね、何だか合点がいったわ、だからあんなに協力してくれるの」
「そうだ、まぁ、本当はただ一緒にダラダラ過したいだけだがな」
その言葉を聞いて、時音は少しの間沈黙して、少し笑った。
「そう、まぁ、私もそんな生活好きだし、それも良いけどね」
「だろ? のんびりダラダラ過して、お互いの巫女の成長を見届ける、割と良いじゃないか」
「確かにね」
これで、時音の疑問は解けただろうな。
「まぁ、疑問が解けたのは良かっね~」
「えぇ、そうね」
「でもさぁ~、正直今はそれ以上に大変そうなことが起こってるんだけど~?」
「大変そうなこと?」
「そうそう・・・えっとね~、文月山の方を見てみてよ~、さっき気が付いたんだよ~」
俺達は花木が言ったとおりに、文月山の方を見てみた。
そして、すぐに理解した、何か、文月山の山の上に、変わった雲が出来ている。
渦のような感じで、明らかにただ事じゃ無さそうだな。
「何だあれ?」
「・・・嫌な予感がするわ、水菜! さっさと戻るわよ!」
「はいはい、了解や」
「じゃあ、私も行くわ、戦力が多い方が良いでしょ?」
「そうね、それじゃあ、圭介、私達は先に行ってるから、茜と水希が帰ってきたら来て!」
「あぁ、分かってる、気を付けろよ」
「えぇ」
時音はそう言うと、瞬間に移動した。
さてと、俺の方は、茜と水希を探して呼ぶとするか。
「探すか」
「一応私も行きたかったんだが・・・まぁ、留守を守るか」
「そうだな、刀子は睦月と花木と一緒に留守を守っていてくれ、四宮神社に誰もいないのは少しな」
「何かがあったら困るしな、四宮神社は」
「あぁ、一応キキとキャンもいるが、あの2人はまだ力が不安定だしな」
「え? キキとキャン? 力が不安定? それに、2人? どういうこと? あの子達って・・・」
睦月がかなり不思議そうな表情をして俺に質問してきた。
あぁ、そう言えば、睦月にはまだ言ってなかったな。
「あぁ、言ってなかったな、あいつらは長い間神社にいたから、小さな神になってんだ」
「はぁ!? ち、小さな神!?」
「そうだ、キキは小さい狐の神、キャンは小さい狼の神だな、と言っても俺や時音ほどじゃない
少しだけ力を持ち始めた神程度だ、まぁ、神の子どもって感じだな、動物神だし」
「え? はぁ? 長い間神社にいたら、神になる物なの!?」
「あいつらは才能があったからな、ついでに動物神だけど、人間にもなれるぞ、もの凄く小さいけど」
あの2人はまだ神になって間もない、だから、まだ幼児程度の見た目の人間にしか変化できない。
耳と尻尾は隠せてないし、それに、人型よりも動物の状態の方が強いんだよな。
でも、特殊な能力は人型じゃ無いと満足に扱えないし、睡眠頻度もかなり増えている。
まぁ、神になって、消費する力が増えたからなんだろうな。
「・・・ろ、6年って長い歳月だったのね・・・」
「まぁな、つっても、あいつらはあまり変わってない、キキは変わらず俺に懐いてるし
キャンも変わらず茜に懐いてるからな、あ、そうだ刀子、あいつらが起きたら
留守を頼むって事と、睦月を紹介してやってくれ、気配で気付くかも知れないが、念の為な」
「あぁ、分かった」
「よし、それじゃあ、俺は茜と水希を探してくる」
俺は立った状態で精神を集中させて、視界を飛ばし、茜と水希を探した。
・・・ふむ、茜はあの異常事態に気が付いて、四宮神社に戻ってきてるな。
で、水希はまだ気が付いていない状態で、依頼の妖怪退治をしているか。
茜は戻ってくるだろうから、水希の方を連れ帰るとするか。
俺は水希がいる場所を把握して、瞬間に移動した。
「っと、やっぱり便利だな」
「あ、あれ? 圭介? 何でここに?」
「異常事態だ、さっさと四宮神社に戻るぞ」
「異常事態? なに? そんなのあるの? あたいは何も感じないんだけど・・・」
「文月山を見ろ、山頂付近だ」
「ここは木が多いから見えない!」
「まぁ、そうだよな、じゃあ、四宮神社に移動させるから、そこで見ろ」
「わかったよ!」
俺は水希と一緒に四宮神社の方まで移動した。
そして、水希はすぐに文月山の方を見て、状況を把握したようだ。
「確かに何か凄いね、格好いい!」
「はぁ、はぁ、あ、あぁ! け、圭介様、水希ちゃん、大変です、山が、文月山が!」
「あぁ、分かってる、それにしてもタイミングが良いな、茜」
「え?」
「じゃあ、文月山に移動するぞ!」
「え? あ、は、はい!」
俺は茜と水希の3人で文月山の山明神社に飛んだ。




