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最後の願い

今回も睦月視点、そして、少女期最終話となります。

果たして、睦月はどうなるのか、是非ご覧下さい!

・・・私の姿が少しずつ消えていく・・・長い間宿主から離れたせいかしら。

それとも、力の使いすぎ? あるいは・・・もう、満足したから?

幽霊だし、いつか消えるのは分かってたけど、まさか、どこぞの妖怪のために消えるなんてね。

悲しいわね・・・せめて、最後に誰かに見ていて欲しかったわ・・・

でも、誰も居ない、いつもそばに居た茜も、圭介も、騒がしい馬鹿達もいない。

・・・2度目ね、1人で何処かに逝くのは・・・2回目なら大丈夫、何て思ったけど・・・

でも・・・涙が出てきてしまう・・・嫌だ、1人は嫌だ・・・


「はぁ、はぁ、む、睦月!」


後ろから、何処かで聞いたような声が聞えてきた。

私はその声に反応して、後ろを振り返ってみると、そこには、刀子がいた。


「睦月! な、なんで・・・何で消えかかってるんだよ!」

「刀子・・・どうし、て? どうして、ここに?」

「自分の中の恐怖に何とか勝って戻ってきたんだ! それより、なんで消えそうになってるんだよ!」

「・・・そうね、力の使いすぎよ・・・もう、私は限界みたい」

「そんな! じゃあ茜は!? 茜はどうなるんだよ!!」

「茜は大丈夫よ、圭介が居るし、師匠も帰ってきてる、だから、大丈夫」


私は出来るだけ自分の中の動揺を隠しながら刀子の質問に答えた。

だって、あんな妖怪なんかに不甲斐ない姿を見せたくは無いから・・・

だけど・・・嬉しい、最後を見てくれる相手が居るなんて・・・

ふふ・・・でも、それがあの妖怪だなんてね・・・


「と、とにかく急いでお前を何とかする!」

「もう遅いわ・・・もう、私は消えるわ」

「そんな! ふざけるな! 諦めるなよ!」

「泣きそうな顔をしないでよ、本当はもうこの世にいないはずの存在、私は・・・幽霊よ」

「そうかも知れない! でも! 消えないでくれ! 居なくならないでくれ!」


普段あまり会話はしないけど、それでもここまで思っててくれたのね。

ほんの数ヶ月程度の間しか一緒に居なかったけど・・・私の為に、泣いてくれるのね・・・

最初は生意気で、ウザったいなんて思ってたけど、何だかんだで楽しかったわ。

でも、この事は言えない、恥ずかしすぎるわ、自分の弱い所を見せるなんてね・・・


「私が悪いんだ・・・私が・・・逃げたから・・・あそこで、戦えれば・・・」

「自分を責めるもんじゃないわよ、あれは仕方ない事よ、恐怖に打ち勝つなんて

 並大抵の苦労じゃ出来ない・・・恐怖はそうそう抗える物じゃ無いんだから」

「勝てた! もしも自分を犠牲にしても良いって思えたら勝ててた!」

「普通の妖怪がそんな事を出来るわけ無いでしょ? あ、あなたは・・・弱いんだから・・・」


この言葉で嫌になって私から離れて・・・もう、これ以上・・・隠せない・・・

もう、泣いて必死に後悔してるあいつを見るのは・・・限界だから・・・

だから・・・は、早くここから居なくなってよ・・・お願いだから。


「あぁ! そうだよ! 私は弱いんだ!」

「う・・・そ、そこは・・・否定しなさいよ・・・馬鹿」

「私が弱かったから・・・私が弱かったから! だから・・・守られた!

 そのせいで・・・おま、えは・・・そんな・・・そんな事に! うわぁぁぁぁ!!」


今まで、1度も泣いてない、刀子が・・・始めて大声で泣き始めた・・・

こんなの・・・こんなの見ちゃったら・・・私も・・・が、我慢、出来ない・・・

最後くらい・・・か、格好いい、お姉さんとして、居なくなりたかったのに・・・

な、泣いちゃったら・・・でも、もう・・・


「泣くなぁ!」

「う」

「泣きたいのは私の方よ! 居なくなるんだ! もう何も出来なくなる!

 茜に何かをしてあげることも! 圭介と話すことも! あんたらの馬鹿な話を聞くことも!

 何も出来なくなる! でも、あなたは消えるわけじゃ無いでしょうが!

 確かにあなたは非力! 弱いわ! でも、あなたは存在する以上成長できる!

 後悔はするな! 過去は変えられない! だから、生き残る奴は先を見ろ!

 私は3年間でその事を学んだ! あなたも悪いと思うなら、私の気持ちを受け取ってろ!」


私は堪えていた涙を一気に流して、自分の心の内を全部刀子に吐き散らした。

どうせもう助からないなら、私は最後に誰かの踏み台になる!

この言葉で刀子は変わるかは分からないけど、でも、言いたかった言葉。

後悔は私の全てだった、刀子にはそうなって欲しくない。

だから私は自分の最後の言葉を刀子にぶつけた。

過去は変えられない、でも、未来を変えることは出来るだろうから。


「何だよ! 泣いたって良いじゃないか! 悪いことを反省するのも駄目だってのかよ!」

「それは良いわ、反省は重要よ、でもね、もしもとかそんなのは考えちゃ駄目!

 変わらないから! だったら、そんなつまらない事を考えてる間に先を見ろ!

 私はもう存在しない! でも、あなた達の踏み台として存在してやるわ!

 でも、あなた達がそれを使わなければ私は本当に消える! それはごめんよ!」

「この・・・この、馬鹿幽霊が!」

「馬鹿で結構・・・私は・・・馬鹿な幽霊よ」


最後まで言った後、私の体はもうすでに限界だった。

体も殆ど消えてる・・・あぁ、ここで消えるのね。


「・・・そろそろね、それじゃあ、もう・・・会えないけど・・・私の事、忘れないでね・・・」

「・・・・・・忘れねぇよ・・・またな・・・馬鹿幽霊・・・」


刀子は最後に涙を拭いて立ち上がり、今更平静を装って私にそう言った。

今更遅いわ・・・馬鹿な奴ね、私は最後にそう思って意識が無くなった。





「お姉ちゃん・・・駄目だよ、お友達は大切にしないと」


真っ暗な景色の中で何処かで声が聞えてきた、茜の声じゃ無い・・・


「誰?」

「まぁ、そうだよね、見えるわけないか、じゃあこうしたら見えるかな?」


そんな声が聞えると、そこには、何処かで見た格好の女の子が立っていた。


「もしかして・・・昭子?」

「にひひぃ、正解だよ、覚えててくれたんだね、お姉ちゃん」

「あ、昭子? あぁ、そうか、私、居なくなったから・・・そりゃあ、あなたにも会えるわよね・・・」

「そうだね、でも、お姉ちゃんには消えて欲しくないんだ」

「もう遅いわよ、私は消えた、もう蘇る事は無いわ」

「そうだね、でも残念、私はそんな事を許さないのでした」


昭子がそう言うと目の前がいきなり光り始めて私は何かに引き寄せら始めた。


「私の命をお姉ちゃんにあげる・・・だから、生きてね? お姉ちゃん」

「待って! 昭子! あなたは、あなたはどうするの!?」

「私は良いの、お姉ちゃんに会えたから・・・本当に神様には感謝しないとね」

「え?」

「だって、お姉ちゃんがお守りを持ってなかったら、私はお姉ちゃんを見付けられなかったから」


そう言うと、昭子はさっきまで私がいた場所に落ちていた縁結びを拾った。

あのお守りは・・・・あの時、圭介に貰ったお守り、なんでそれがこの場所に?


「それじゃあ、このお守り、離しちゃ駄目だよ? そうしないとご縁が逃げちゃう」


そして、その縁結びを私の方に放り投げた。

縁結びのお守りは私の方に引き寄せられ、私は縁結びのお守りが当ると同時に光に呑み込まれた。

そんな時、最後に聞えた言葉は、お姉ちゃんありがとう、今度は自分の為に生きてね?

と言う昭子の声だった。


「・・・?」

「あぁ、睦月ちゃん目が覚めたんだね、今日は神社に参拝に行かないとね」

「・・・あ、あぅ」

「そうかい、睦月ちゃんも楽しみかい、ん? お守り? 四宮神社の?

 神様の気まぐれかね、そうだ、首に付けてあげるわ」

「うあぁう・・・」

「嬉しいだろう、ほら、それじゃあ、はい、これで良いじゃろう、さ、行こうか」



それから私は6年間、私はここの子どもとして生きた。

そして、6歳の頃、私は1人で四宮神社に行ってみることにした。


「圭介様、今日はどの依頼を受けましょうか」

「そうだな、この依頼はどうだ? これなら今のお前なら出来そうだし」

「あ、はい、分かりました」

「茜! 依頼よりもあたいと勝負だぁ!」

「えぇ、嫌だよ、水希ちゃん強いもん、刀子さんと戦ってよ」

「私も嫌だぞ、出来れば戦いたくない」

「あたいと勝負してよぉ!」

「何なら私が戦ってあげるけど、どう?」

「時音様と戦ったら絶対に勝てないよぉ!」


茜と水希は結構変わってるわね、大きくなってる、でも、あの2人は相変わらず胸は無い。

だけど、茜は立ち姿がかなり凜々しくなってる、あんな泣き虫が、ふふ、変わる物ね。

水希は見た目は変わっても立ち振る舞いは全く変わってない、あんな戦闘狂の師匠が育て親じゃぁね。

後は全く変化が無い、妖怪や神様だし、ほんの6年で変わるわけ無いか。

でも、刀子は少しだけ顔つきがキリッとしてるわね、変化って凄いわ。

それにしても、皆の雰囲気とかは変わってるけど、相変わらず圭介の元に集まってる。

1回消えた私でさえまたここに戻ってきてる、神社は大きくなってるけど神様は変わってない。

何かしら、この安心感は、やっぱり私もここが1番落ち着くんでしょうね。


「・・・ん? 女の子が1人で神社に来るなんて珍しいな」


私に気が付いた刀子が不思議そうな表情をして私に近寄ってきた。


「何か凜々しくなったわね、刀子」

「ん? 何で私の名前を知ってるんだ?」

「どうした? あぁ、その子は確か前に来てた子だな、何だ? 七五三にでも来たか?」

「圭介も相変わらず変わってないわね」

「・・・俺の名前、小さい子でも知ってるんだな」

「まぁ、それだけ有名だったし、でも、そうね、これで私が分かるかしら」


私は生き返って時に渡されたお守りを取りだし、圭介達に見せた。


「結構色あせてるけど覚えてるかしら?」

「そのお守り・・・6年前に睦月に渡した物と同じ!」

「まさか! え!? 睦月! でも、でもお前は!」

「助けたいと、そう願っていた妹に私は助けられたわ、本当はこの体には昭子が入るはずだった

 だけど、あの子は私の為に自分を犠牲にしたの」

「・・・そんな事が・・・あるのか?」

「現にあるのよ、だから私がここに居る・・・私は睦月と昭子の2人なの!」

「そうそう、お姉ちゃんと私は一心同体なの」


私が自分の事を話すと、私の影から見覚えがある女の子が出てきた。

あれ? おかしいわね・・・私にはこの子が昭子に見えるんだけど・・・あ、あれぇぇ!?


「にへへぇ、憑いてきちゃった♡」

「えぇぇ!!??」

次回から、長かった少女期も終わり、青年期に突入します。

そして、何か久々に圭介視点、一体、長い6年間の間に何があったのか。

それが、分かるかも知れませんね、次回もお楽しみに!

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