いつもの騒がしい早朝
1日神社を交代するのが終わって、俺は1日ぶりに神社に戻ってきた。
「圭介様!」
茜が俺が戻ってきたことに気が付き、いきなり抱きついてきた。
もう10歳なのに、随分とまぁ、甘えん坊だな。
「あぁ、茜、久し振りだな」
「圭介様、1日ぶりですね・・・うぅ・・・」
「な、何も泣くこと無いじゃないか」
俺との再開が嬉しいのか、茜はいきなり泣き始めた。
俺としては嬉しいんだけど、いきなり泣かれると流石に困るな。
「うぅ、だって、圭介様が居ない日は昨日が初めてで・・・ヒック・・・だから、寂しくって・・・」
「あぁ、そう言えばそうだったな、お前と1日中離れて居たのは昨日が初めてか」
「はい、だから、何だか帰ってこないのかなって、そんな不安が・・・」
「そんなわけ無いだろ? と言うか、寂しがる事無いだろ? お前の周りには色んな奴が居るからな」
「そうですけど・・・でも、やっぱり圭介様が居ないと寂しいです・・・」
まさか泣くなんて思わなかったな。
しかし、そんな風に思っていたのか、なるほど、だから昨日見たときに落ち込んでいたように見えたのか。
本当に、心配性だな、こいつは。
「俺が居ないと寂しいか、何だか嬉しいな」
「うぅ・・・」
そして、茜はもう一度俺にぎゅっと抱きついた。
それから少しして、茜もやっと落ち着いたようで、俺から離れた。
「済みません、泣いちゃったりして」
「いや、気にすんな、それに、俺が居ないと寂し言っていって貰えて嬉しかったからな」
「えへへ・・・それじゃあ、境内の掃除をしてきます!」
「あぁ、頼むぞ!」
そう言うと、茜は神社の倉庫の方に走っていき、箒を持ち出し、境内の掃除を始めた。
俺は取りあえず四宮神社の縁側に座って、のんびりする事にした。
「・・・やっぱり茜に随分と懐かれているんですね、あなたは」
「葵か・・・何だ? 結構表情が柔らかくなったな」
「ここに居る妖怪達や茜のお陰で、少しだけ・・・そして、あなたを見ていると
不思議なことに藜を助けれるか持って思いましてね・・・まぁ、無理な希望でしょうが」
「そうだな、それは無理だ、でも、妖怪のままでも良いなら、救えるかもな」
「なら、もしかしたら協力を頼むかも知れませんね、その時は」
「あぁ、分かってる、協力するよ、出来る限りな」
「やっぱりあなたは神様っぽくないですね、巫女のお願いをそんな簡単に聞き入れるなんて
でも、そう言う人だから好かれているんでしょう、それじゃあ、私は茜と境内を掃除します」
「あぁ、頼んだぞ」
四宮 藜、本来は今代の四宮の巫女・・・しかし、不慮の事故で命を落とし
結界外で妖怪になり、暴走している・・・何というか、不憫な奴だ。
でも、妖怪だろうが幸福になれないわけじゃない、今はまだ無理だろうが
いつか、絶対に救ってやらないとな、茜の姉貴分だし。
「きゅぅん!」
「あぁ、キキ、お前も起きたのか」
「きゅぅん!」
キキは俺に気が付くと、俺の膝に乗っかって、俺の足の上で頬をすりすりとさせてきた。
やっぱり可愛らしいな、目を閉じて笑っているように見えるからなおさら。
「キャン!」
「あぁ、キャンも起きたんだな」
「キャウン!」
その後に起きてきたキャンは俺の横でお座りをして、頬でさすってきた。
こいつは茜に懐いているが、一応俺にもスキンシップはしてくれる。
でも、少し経つと縁側から降りて、茜の方に行ってしまった。
やっぱり茜の方に懐いているんだろうな。
「あ、キャン、起きたんだ!」
「キャン!」
「よしよし、あはは、可愛いね!」
「くぅん・・・」
まぁ、茜と仲良く戯れている姿を見るのも癒やされるがな。
動物って、やっぱりヒーリング効果があるんだろうな。
「あはは~、おはよう~」
「あぁ、花木、おはよう」
その後起きてきた花木が俺の方に近寄ってきて、俺の肩に頭を置いた。
「何してる?」
「うぅ~ん、寝起きで眠いんだよ~、だから少しだけ肩を貸してよ~」
「・・・まぁ、良いけど、あまり体重かけるなよ?」
「分かってるよ~・・・むにゃ~・・・」
花木の奴、あまり体重をかけるなと言ったのに、普通に体重かけやがって・・・
まぁ、そこまで重たくはないし、少しくらいは我慢するか。
「あぁ、圭介、帰っていたんだな」
「刀子、起きたか」
「まぁな、それにしても、やっぱりその兎はお前に引っ付くんだな」
「そうみたいだ、少し邪魔かもな」
「とかいってよ、まんざらでもないんだろ?」
「・・・まぁ、そうだな、嫌ではない」
「そ、そうかよ・・・ふーん」
刀子は少しだけ不服そうな表情を見せた。
俺、変な事言ったか? もしかして、嫌では無いって行ったからか?
「何だ? 何か不服か?」
「いや、何でも無い・・・じゃ、じゃあ、私はぐうたらしている2人を起こしてくる」
「あぁ、分かった」
普段、あいつがあの2人を起こす事なんて無いのにな。
もしかして、今日は俺が帰ってきたから起こすって事かな。
いや、それは無いか、なんせたった1日しか離れていないからな。
その1日で茜は結構なダメージを喰らっていたようだけど。
「圭介! やっふい!」
「おわぁ!」
後ろからサラがすごい勢いで俺に抱きついてきた。
そして、その衝撃で俺は大きく揺れた。
「あわわぁ~!」
そして、その時の揺れで、俺の肩に頭を乗せていた花木が思いっきり前に倒れた。
完全に顔から行ったな・・・あと少しズレていたら縁側から落ちていたぞ、これは。
「あ、ごめん、大丈夫?」
「うぅん・・・良い眠気覚ましになったよ~・・・痛た・・・」
「何だか大きな音がしましたが・・・あぁ! 圭介さん! 帰っていたんですね!」
「おぉ、本当だ、やっほう、1日ぶり?」
「何事も無かったようで、安心しました・・・ですが、頭領様は頭を打ったようですね」
「あはは~、大丈夫だよ~、なんでかこういうのはなれてるからね~」
「頭領様は良く転けますからね」
「あはは~、そうだね~」
やっぱり花木は良く転けているんだな、だから打たれ強いのか。
「うぅん・・・サラちゃん、あまり暴れたら駄目だよ・・・ふぁ・・・! 圭介さん!」
「四季おはよう」
「帰ってたんですね、だからサラちゃんがあんな勢いで走ったんだ」
「一瞬で目が覚めたよ!」
「あぁ、本当に一瞬だったな、圭介が帰って来たっていったらすぐ起きるし」
「一杯遊んで貰う!」
何だか、帰ってきてから早々、かなり賑やかになったな。
下手したら山明神社の方が静かかもな・・・はは。




