思い出した!
水菜はもうしばらくの間はあの場所にいそうだな。
その間に水希の方も行動しそうだし、そっちを集中して見てみるかな。
「うーん、流石のあたいもずっと飛んでるだけだと飽きちゃうよ」
「1時間近くそれで楽しめるんだから、水希は何でも楽しめる才能があるケロ・・・」
あいつ、今までずっとトランポリンで跳ね続けていたのかよ・・・
良く飽きないな、と言うか、良くそんなに体力が持ったもんだよ。
「とにかく、あたいは今度別の事をする!」
「ケロ、それが良いケロね・・・それにしても、水希は何か用事があるんじゃないけろ?」
「用事?・・・用事・・・何かあったっけ・・・」
「確か、圭介から頼まれたらしいことを言っていた気がするケロ・・・」
「・・・あぁ!! 信仰だ! 信仰集めだぁ! わ、忘れてたぁ!」
「そうケロ! それケロ! ケロも完全に忘れていたケロ!」
ようやく本来の目的を思い出したのかよ・・・そんなに難しい言葉じゃない気がするんだがな。
まぁ、思い出したんなら良いか、さて、これからどう動くか。
「えっと、えっと・・・とにかく困っている人を探すよ!」
「わかったケロ! あぁ、そうだ、困っている人を知らないケロ!?」
「困っている人か・・・うーん、確か近場に獰猛な動物が出てきたって騒いでいた人がいたな」
「よし! そこだ! そこは何処!?」
「確か、そこはこの里の裏出口だったはず・・・」
「わかったケロ! それじゃあ、水希! ケロに付いてくるケロ!」
「分かった!」
そして、2人は獰猛な動物が出たという現場に走って向った。
そこは、この蛙の里のもう一カ所の出入り口だ。
俺達は普段こっちの方を今まで利用したことは無い。
なんせ、山明神社の方にメインの出入り口があるからな、だからそっちしか使わない。
「こっち側にもあったんだ、道」
「そうケロ、まぁ、ケロ達も殆ど使わないケロね」
「ふーん、そうなんだ、そこに獰猛な獣が出てきたんだね」
「そうなるケロ」
そして、2人はその目的の場所にようやく到着したようだ。
そこにはかなり凶暴そうな狼が陣取っていた。
「け、ケロ・・・何で狼が・・・」
「知らないよ、まぁ、何にせよ、やることは変わらないし!」
水希は一切怯むことは無く、戦うつもりらしい。
大丈夫か? 何だか不安になるな。
いつ動くか分からない、そんな時だった。
「親分様! 起きてくださいにゃ! くるみが来ましたにゃ!」
「ん? くるみ?」
俺が視点を自分の方に戻すと、確かにそこにはくるみがいた。
しかし、結構ボロボロで服も何カ所か破れている。
「くるみ、どうしたんだよ、その格好」
「あはは、転けちゃったんだよ! それにしても圭介! 久し振りだぁ!」
そう言うと、くるみは俺の方に一気に近寄ってきて、ダイブしてきた。
「じゃれつくな、つうか、お前は今、服がビリビリ何だ、色々と危ない」
「うちは全然気にならないよ!」
まぁ、実際こいつは飼い犬の妖怪だからな、元は犬だし、特に気にはしていないんだろう。
犬は毛で覆われているが、基本的には服なんて来ていないしな。
「うるさい、お前が気にならないでも俺が気になる」
「なんで! うちのこと嫌いなの?」
「違う、少なくともお前は今は人型の妖怪だ、だから殆ど人間なんだよ」
「良いじゃん、うちは人間の方が良いよ? 人間さんに撫でられる方が良いけど」
「だから、お前は殆ど人間だ、そんなボロボロの服で抱きつくなよ」
「そ、そうにゃぁ! 親分様から離れるにゃぁ!」
くるみに嫉妬したのか、隣で見ていたチャイムがくるみに攻撃を仕掛けた。
「おわぁ! 何だか分からないけど! 勝った方が圭介に引っ付けるんだね!」
「にゃぁ!」
「えりゃぁ~!」
そして、2人のあまり迫力の無い取っ組み合いが始まった。
でも、お互い本気では無い様だな、チャイムは爪を出して攻撃していないし、くるみは噛みついていない。
「楽しそうだな、あの2人は」
「お互い本気は出していないようだな」
「それは分かる、チャイムの方は爪を出していないからな」
「そうだな、最初にあったときは思いっきり爪を出していたからな」
「あぁ、あん時はガチだったって事だろうよ」
そして、少しして、2人の不毛な争いが終わった。
「むきゅぅ・・・」
「うきゅぅ・・・」
その結果はかなり残念な終わりで、取っ組み合っている間に何かの拍子で
お互いの頭を思いっきりぶつけ、まさかの引き分けだった。
2人は目を星にして、完全に気を失った。
「引き分けか、しかし、面白い奴らだな」
「あぁ、お互いの頭を思いっきりぶつけて同時に意識をなくすなんてな」
「結構痛いだろうね、これは」
何というか、動物が変化したタイプの妖怪は馬鹿な場合が多いのか?
久里当たりは結構頭が良いがな、花木は良く分からないが。
ドジを発動させたり、たまに結構頭が良いことを言ったりするし。
もしかしたら、あいつが1番つかみ所が無いかも知れないな。
さてと、もう1度集中して、水希がどうなったか探らないとな。
俺はイーリア達にもう一度集中するからと伝え、精神を集中させた。
そして、そこに見えたのは、狼の方に突撃しようとしている水希の姿だった。
今まで突撃していなかったのか、精神集中でもしていたのかもな。




