水菜と擂
水菜は天狗の里に入っていった。
戦闘になる危険性が高いが、大丈夫だと良いがな。
「あの、擂様、お客さんが来ております」
「私にお客さん? 珍しいですね」
「何や! うちの邪魔をせんといてや!」
「この先は擂様のお部屋だ! 許可が無い物が入って良い場所じゃないぞ!」
水菜は擂の部屋の前で、大天狗達と取っ組み合っている。
あの天狗達、やっぱり強いんだな、あの水菜を止められるとはな。
それにしても、4人掛かりでようやく止められるレベルなんだな、あいつは。
「・・・・・・何でしょうね・・・聞き覚えがあるような気がしますね」
「えっと、圭介様のお知り合いだそうです、擂様とも面識があるようでしたし」
「まぁ・・・そうですね・・・でも、出来れば会いたくないのですので、お引き取りをお願いします」
「はぁ・・・分かりました」
擂は出来れば接触を回避したい様だな、まぁ、分からんこともないが。
騒がしいし、下手したら戦う事になるだろうし・・・
「どけやぁ!」
「「ぬお!」」
「「わぁ!」」
しかし、擂の願いは届かないようだ、あの4人が全員振り払われた。
大天狗4人がかりでも止められない暴走巫女・・・山明神社、恐るべしだな。
「擂-! 久々に来てやったでぇ!」
「相変わらず、無茶をするな、水菜」
「何や、褒めても何も出んで?」
「褒めていない・・・全く、何だ、久々に帰ってきたと思ったら、私の部下を振り払ってまで来るとはな」
擂が少しだけ笑っている。
今まで、殆ど表情を変えなかった擂がな、珍しい。
まぁ、珍しいって言っても、1回しか面識は無いんだがな。
「へっへっへ、何や、少し楽しそうやな」
「それはお互い様じゃないか? 山明 水菜」
「名字まで言わんでええわ、擂ちゃん?」
「馴れ馴れしいから止めて欲しいな、その言い方は」
2人とも、接触した直後から、若干喧嘩腰だ。
やっぱり、戦う事になるのか?
「あ、あの、お2人とも? そんな殺気立たなくても・・・」
「あなたは引いておいてください、巻込まれたくは無いでしょう?」
「うちもそう思うで? 巻込まれて怪我はしたく無いやろ?」
「え・・・えっと・・・わ、分かりました・・・」
楓は2人に言われた通りに部屋から出て行った。
「まぁ、あの子に下がるように言いたって事は・・・そういうことやな?」
「あなたと顔を合わせてしまってすぐに覚悟はしている・・・」
「そうか、へっへっへ、窮屈な仕事をして、鈍っとらんやろうな?」
「大丈夫だ、これでも鍛えている」
そう言うと、擂の周囲に不自然な風が吹いた、やっぱり天狗だからな、風を操るのか。
それにしても、足下から風が吹くのか、髪の毛が少しだけ揺らめいている。
天狗装束も少しだけ風に揺らめいている、何だか様になっているな。
「かなりやる気やな、せやけど、風しか操れんあんたが、うちに勝てる可能性はほぼ無いで?」
「あまり天狗を舐めるなよ? 水菜、もしも油断したら、私の風がお前の首を斬る」
「大丈夫や、安心せいや」
2人の間に、沈黙が生じた、いつ、どっちが動くのか・・・
何というか、この沈黙は恐ろしいな、一瞬で勝負が着く・・・
と言うか、俺はこいつに戦闘は禁止だといった筈なんだよな。
「・・・一撃で・・・おぉ、そうや、思い出したわ」
「ど、どうしたんだ?」
「そう言えば、うちは圭介に戦うなって言われとったんや」
「圭介殿に? あなたが誰かの指示に従う何て、何があったんだ?」
「うちは実力の差くらいは分かる、あんな男に勝てるわけ無いからな、痛い目にはあいとう無いわ」
「そうか、なるほどな、やっぱりお前も分かるのか、そうか、じゃあ、戦いは止めておくか」
「そうやな」
ふぅ、何とか戦闘は避けられたか、あいつが俺の指示を思い出してくれて良かったな。
「それじゃあ、とりあえず聞くが、なんでここに来たんだ?」
「圭介の修行でなぁ、信仰を集めんといかんのや」
「信仰を集める修行で、いきなり喧嘩を売ってきたのか、お前は」
「ほら、うちの性や、しゃあないやろう、うちと互角にやり合える相手と合って、戦わん訳ないやろ」
「でも、そんな性を押さえるくらいに圭介殿を恐れてるのか?」
「そうやで、あないな力の差を見せつけられたらな」
そんなに力の差を見せつけたのか? まぁ、良いか、そういう事で。
「そうか、まぁ、実際に戦ってないから私には分からないか」
「戦ってみたら分かるで?」
「そうだろうな、でも、私は戦わないがな、さてと、それで? 信仰集めだな?」
「あぁ、そうやで、どうすればええと思う? うちは目立てばええと思うんやけど?」
「あながち間違ってないな、まぁ、言えば、信仰集めの最も簡単な物集め方は2つある」
「ほう、そんなら、教えてくれや」
「そのつもりだ、まず1つだが、これは困っている物を解決する物だな
これが1番確実で深く集まる信仰の収集方法だ」
まぁ、基本だよな、困りごとを解決するのは。
「だが、これだと効率が悪いんだ、1つ1つやるわけだからな」
「まぁ、そうやろうな」
「そこで、効率が良いやり方は恐怖を与えることだ」
「恐怖やと?」
「そうだ、人間達に恐怖を植え付ける、これが1番手っ取り早い集め方だ
だが、その場所だけ位にしか広がらない、でもこれも深く、畏怖される
でも、ただ不安が募るんだ、だからその内人が減る、だからあまり多様はしない方が良い」
「ふーん、飴と鞭みたいなもんやな、なるほどな、分かったで」
「参考になったなら良かった、まぁ、頑張れば良い」
恐怖か出来れば使いたくないな。
でも、まぁ、良い情報が手に入ったな、さて、水菜は今度、どう動くかな。




