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ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!【Web版】  作者: 彩戸ゆめ
目指せ、土の迷宮!

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第81話 子供が消える町

 グラハム村の宿に戻った私たちは、カールさんに鍵がなくなってしまったことを伝えた。


 不思議なことにあの鍵は、私たちが隠し部屋から出ると洞窟の中に吸い込まれて消えちゃったのである。


 カリンさんによると、リヴァイアサンが顕現することによって魔素を大量に消費してしまって、隠し部屋自体が消滅してしまったんじゃないかってことだった。


 う~ん。やっぱりダンジョンって謎に満ちているなぁ。


「それで、隠し部屋は本当にあったんですか?」

「あるにはあったんだが、宝箱はダミーで、あの部屋自体が宝箱みたいなもんだったぜ。こう、凄ぇ魔法陣が刻まれてたからな。ただ鍵は俺たちが出てきた時に扉と共に消えちまった。トールの形見だったのに、すまねぇ」


 それを聞いたカールさんは、隠し部屋にあったのが物じゃなくて魔法陣だと思ったみたい。


 うん。間違いではないよね。その魔法陣がリヴィアサンを召喚する魔法陣で、アルにーさまの手の甲に刻まれたっていうのを言ってないだけで。


「……いえ。僕にはあの斧がありますから気にしないでください。でも、困りましたね。宝箱の中身をお礼の代わりにと思っていたんですが。他にお礼といっても……」


 トールさんの残した物に何の価値もなかったんだと思ったカールさんは、少しだけ肩を落とす。


「いや。俺たちにとっては、宝箱の中身より価値のあるものを見つけたから、それだけで十分だぜ。だから気にすんな」

「そうですか……。ではこれ以上は僕が聞くべきことではないんでしょう。少しでもあの鍵がお役に立ったのなら良かったです」


 にこりと笑うカールさんは、立派な宿屋の主人だった。

 お客さんの事情をやたらに詮索しないのが一流の宿、っていうのは、どの世界でも一緒だよね。


「お約束通りとっておきのお酒を用意しましたので、さあ、こちらへどうぞ」


 カールさんに案内されたフランクさんの足取りは軽く、ヴィルナさんのしっぽは物凄い勢いで激しく揺れていた。


 私もご馳走を用意してくれたって聞いたから、楽しみ!

 おいしいものを、いっぱい食べるぞー!




「それにしてもあのツノはどうするの?」


 おいしいお料理を食べておいしいお酒を飲んでご機嫌のアマンダさんは、宿屋の外を指さした。


 宿屋の前の広場には、村の外で倒した甲冑虫のツノとか甲羅が置いてある。あまりの大きさに、宿屋の中に入りきらなかったのだ。


「この村には冒険者ギルドがねぇしなぁ。ここから近いとこっていうと、アボットの町か?」


 グラハムの村の外で暴れていた甲冑虫を倒したのはフランクさんだからってことで、村の人たちが素材になる甲冑虫のツノと甲羅をくれた。


 でもさすがにあの大きさじゃ持ち運べないからってことで村の道具屋さんに買い取ってもらったんだけど、甲羅と小さいツノは村でも加工できるからともかく、一番大きいツノは買い取るお金もないから買い取れませんって断られちゃったんだよね。


 でもあんなに大きいツノ、どうやって運べばいいんだろう。


 アイテムボックスに入れれば何とかなりそうだけど、さすがにあの大きさのものをひょいっとしまうところを見られたら、ちょっとまずいよね。


「アボット、ですか……?」

「どうした? アボットになんかあるのか?」


 町の名前を聞いて声を落とすカールさんに、フランクさんは手に持っていた銀のゴブレットをテーブルに置いた。


「最近、ちょっと気になる噂を耳にしまして……」

「噂?」

「なんでも、子供がいなくなるという話です」

「子供がいなくなるだぁ?」


 フランクさんが大声を出すと、みんなが一斉に注目した。


「ええ。盗賊団の仕業かもしれないということで、この村も気をつけたほうがいいと忠告されました」

「盗賊団が相手だと、騎士団の仕事だなぁ」


 そう言ってフランクさんはチラリとアルにーさまを見る。


「ただ魔の氾濫の直後なので、騎士団の方もすぐ来てくれるのかどうか……」

「あいつらが責任を放棄するはずないだろ。任せておけばいいさ」

「そうですね」


 安心したように肩の力を抜くカールさんに、フランクさんは空になったゴブレットを差し出す。


「それにしてもこの酒はうまいな。もう一杯くれ」

「お気に召して頂けたようで良かった」


 カールさんのとっておきのお酒を、フランクさんは遠慮なしにぐびぐびと飲む。横にいるヴィルナさんも、さっきから無言で飲みっぱなしだ。


「ねえ、アルゴ。どう思う?」


 私の左に座るアマンダさんが、私の右に座るアルゴさんに小声で話しかける。


「ちょっと気になるね」

「盗賊団の調査なんて要請、来てたかしら?」

「いや。魔鳥で毎日連絡を取っているけど、そんな話は聞いてないな」


 魔鳥っていうのはドワーフの職人が作った、手紙を運んでくれる瑠璃色の綺麗な鳥のことだ。


 アルにーさまは毎朝イゼル砦と魔鳥で連絡を取っているから、グラハム村に近いアボットの町で何かあれば、何か一言あるのが普通だ。


「変だわ。盗賊団の仕業じゃないにしても、噂になるほどの事件が起こっているのなら、必ず騎士団に調査の要請がくるはずよ」

「そうだね。ただ……子供が消える事件となると、ユーリが危険にさらされる可能性がある」

「確かにそうね」


 アマンダさんは真紅の瞳を閉じると、ふうと息を吐いた。


「でも……放ってはおけないな」


 アルにーさまの言葉に、アマンダさんも頷く。


「ええ。……何が起こっているのか確かめに、アボットの町に行ってみましょう。ユーリちゃんは私たちが守ってあげるから、心配しないでね」


 アマンダさんに左側からぎゅーっと抱き着かれる。


「おいおい、お前ら食事もしないでコソコソ話してんじゃねぇよ。ほら、これがうまいぜ。食え」


 フランクさんがゴブレット片手に持ってきたのは、手羽先のから揚げだ。多分、ニワトリじゃなくて、何かの魔物のお肉だろうけど。


「いいか。ヒールで体の傷は治るけどな、戦った時に負った心の疲れってやつは、うまい食事と柔らかいベッドじゃねぇと癒せないんだぜ? だからどんどん食え」


 ほら、と手羽先を手渡されて、一つ手に取る。

 ぱくっと口にいれると、ジュワリと肉汁が口の中に広がった。


 おいしい……。


 そうだね。フランクさんの言う通り、とりあえず今は深く考えずに、お腹いっぱい食べよう。


 後のことは……明日になったらみんなで考えればいいよね!


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