第77話 レヴィアタンとの戦い
「アルにーさま!」
思わず叫ぶと、私を抱く力がぎゅっと強くなった。
「大丈夫。少しかすっただけだ。それに、この鎧には防御の魔法陣がついているからね」
思わず顔を上げると、優しい水色の瞳が私を安心させるかのように見下ろしている。
ほっ……。良かった。怪我はしてないみたい。
他の人は、と見ると、アマンダさんもヴィルナさんも怪我はしてないみたいだ。
フランクさんは頭の上にいたルアンを抱きかかえて守っていて、もちろんノアールは私の横にいる。
そしてカリンさんは――
木のドーム?
洞窟の一角に木というか枝でできたドームが作られていた。少しだけ開いた隙間の奥にいるのはカリンさんだ。
「あれは言霊で結界を作ったんだと思う。あの中に入ってしまうと防御しかできないみたいだけど、どんな攻撃も無効になるというカリンの最終奥義だね」
なんだかカリンさんのイメージがどんどん変わっていく。
ただのスライムおたくの変態さんじゃなかったんだね。
「次がくるぞ!」
カリンさんの声と共に、レヴィアタンの咆哮が聞こえる。
「しっかりつかまって!」
アルにーさまに言われて、しっかりとその腕にしがみつく。
今度はかすりもしなかったみたいで、衝撃もない。
「逃げてばかりでは我は倒せぬぞ!」
でもホッとする間もなく、次の攻撃がきた。
「らちが明かねぇな。おい、カリン、こいつを頼む!」
突然フランクさんが腕に抱いていたルアンを放り投げた。
「きゅうっ」
枝のドームから、にゅっと手が出てルアンをつかむ。
「きゅーっ、きゅうきゅうっ!」
抗議するようなルアンに、フランクさんは「そこで大人しくしてろ」と声をかける。
「いざという時の非常食だからな、安全なとこに置いとかねぇと」
「任せておけ。……こら、暴れるでない」
「きゅうっ。きゅううっ」
でもフランクさんと離れたくないルアンは枝のドームの中で暴れてるみたいだった。
「このデカイのを倒したら出してやるから、それまでは大人しくしてな。――ルアン」
「きゅっ。きゅううううううううう」
フランクさんに初めて名前を呼ばれたルアンは、一声大きく鳴いて……。
それから静かになった。
「これで思いっきり暴れられるぜ。まずは小手調べだな」
フランクさんは拳を構えると、レヴィアタンに向き直った。
そして地面を蹴ると、レヴィアタンのお腹に向かって拳を奮う。
「くらえっ。波動掌拳!」
――やった!
甲冑虫を倒したんだから、ちょっとは効いてるはず。
でも。
「かってぇな」
内部を壊すはずのフランクさんの技は、鱗を伝っていくうちに吸収されちゃっている。
「炎刃両断!」
下がったフランクさんと入れ替わるように、アマンダさんが次の攻撃を仕掛ける。
炎をまとわせた剣がレヴィアタンの固い鱗に当たって――
「はじかれるっ!?」
ガキィィンと剣が固い物に当たる音がする。
「なんて硬いのっ」
こっちの攻撃が全然効かない!?
その間にもレヴィアタンはマレンティを呼び出していて、ノアールとヴィルナさんが倒している。
「おい、ヴィルナ」
「なんだ」
「こっちは俺に任せて、ちゃっちゃと、さっきみてぇにあいつを斬ってくれよ」
フランクさんにそう言われたヴィルナさんは、剣を振るう腕を止めず、視線だけレヴィアタンへと向ける。
「……見切れぬものは、斬れん」
「仕方ねぇな」
フランクさんはもう一度レヴィアタンに攻撃を仕掛けようとする。
そこに――
「フランクよけろ!」
レヴィアタンの尾が、ぐわんとうねってフランクさんに迫る。
「アルゴに言われるまでもなく……おっと」
バランスを崩しそうになりながらも鯨のような尾を避ける。
「ユーリ、少し待ってて」
私をカリンさんのドームの近くに下ろしたアルにーさまが、レヴィアタンに向かって走る。
「水流一閃!」
「……この程度の攻撃で我は倒せぬぞ。さあ、もっと本気を出すがよい!」
ア……アルにーさまの攻撃も効かないの!?
水属性の敵には雷属性が効くけど、ここじゃ私たちも感電しちゃう。
じゃあ、これしかない。
「ウィンド・アロー!」
続けて、これだー!
「ウィンド・ランス!」
風の矢が、槍が、レヴィアタンに降り注ぐ。
無数の切っ先がレヴィアタンを包み、その姿が沈みこむ。
……や、やったの……?




