第73話 発売記念SS・モフモフは正義です
本日、『ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!』が発売となります。
どうぞよろしくお願いします。
これも応援してくださった皆様のおかげです。
感謝の気持ちをこめて、SS「モフモフは正義です」を公開いたします。
どうぞお楽しみください!
本日中に本編分も投稿する予定でおります。よろしくお願いいたします。
ダークパンサーの毛は一般的に固くて、初心者冒険者の攻撃は通用しない。
そしてノアールはダークパンサーの子供だけど、大きくなることもできる。当然、その毛はゴワゴワで固いと思われそうだけど……。
なんと、子猫みたいなフワフワのモフモフなのである!
しかも大きくなってもその柔らかさは変わらない。
これはノアールが特異種だからなのか、それとも生まれたばかりの時にキュアを受けて私の従魔になったからなのかは分からないけど、とにかくモフモフしているのは良い事なので、何の問題もない。
ううん。一つだけ問題があった。
「ノアール、ふわふわだ~」
「……モフモフしたいためだけに、ノアールを大きくするのもどうかと思うけど」
苦笑するアマンダさんだけど、その手はノアールの背中を撫でている。
うん。分かります、分かります。一度この毛並みを撫でたら、手を離せなくなっちゃいますよね。
「だって、大きくなってくれたら、それだけモフモフの面積が増えるじゃないですか」
「まあ、確かにそうだけど……」
これが本当のアニマルセラピーだよねぇ。
はぁ。癒される~。
「小娘、そんなところで何をしておるのだ?」
中庭でアマンダさんと一緒に大きくなったノアールをモフモフしていると、いつものようにスライム帽子をかぶったカリンさんがやって来た。
「ノアールをモフモフしています」
「みぎゃぁ」
ぷるん。
ノアールが鳴くと、頭の上に乗っているプルンも、ぷるるんと体を震わせる。
多分……挨拶してる、のかな?
「いくら懐かせているとはいえ、よくダークパンサーを撫でられるものだな」
ノアールが苦手なカリンさんは、ちょっと離れたところから私たちを見ていた。少し、腰が引けているかもしれない。
「だってこんなに素敵な毛並みなんですよ? ずーっと撫でていたいくらいです。ね、アマンダさん?」
「そうね。どうしてこんなにフワフワしているのかしら? 不思議だわ」
「……ダークパンサーの毛は、訓練をしておらぬ者の攻撃は跳ね返すほど固いと聞いた事があるが……」
「そうなのよね。だけどノアールの毛はこんなに柔らかいの。なぜかしら?」
「むむ。そういえば、フランクの連れているあのホーンラビットの毛も柔らかかったぞ。普通の魔獣とは違う何かがあるのか?」
ぶつぶつと呟くカリンさんは、いつもはノアールを怖がっているのも忘れたように近づいてきて、その体をペタペタと触りまくる。
ノアールも、いつもだったら威嚇してカリンさんを怖がらせるのに、今日はなぜか大人しくしていた。
「もしかして幼体はこのように毛が柔らかいという事か? であるならば、このように大きくなっても、実はまだ幼体であるという事なのだろうか? ふむ。毛の一本一本はフワフワして細いな。……な、なんだ、この手触りは!?」
ノアールの毛に指を差しこんだカリンさんは、その感触に声を上げる。
うんうん。分かる。分かるよ。この世に二つとない、至高のモフモフだよね。
「はっ。分かったぞ! なぜこのような毛並みなのか」
「あら、凄いじゃない、カリン。分かったの?」
アマンダさんが感心したように言うと、カリンさんは平たい胸をそらして自慢げにした。
「うむ。この毛並みで我々を惑わすために、特殊な進化をしたのだろう。スライムもな、ある特定の条件下で特殊な進化をするものがあってだな――」
「はいはい。分かったわ」
適当に相槌を打つアマンダさんに、カリンさんは更に持論を展開する。
でも……スライムとノアールじゃ、全然違うんだと思うんだけどなぁ。
私と目が合ったノアールは、くわぁと大きくあくびをすると、うつ伏せになって日向ぼっこの体勢になる。
「だけど、本当に可愛がられるためにモフモフの毛に進化したんだとしたら、凄いなぁ」
思わずそう呟くと、ノアールが「みぎゃ」と鳴いた。
え……。本当に?
……でも、どっちでもいいかな。モフモフなノアールでいてくれるなら。
ね、ノアール。




