第6話 帰る方法が分かったかも
もしここがエリュシアオンラインと同じ世界なら、ここにも賢者クエで行った賢者の塔があるんじゃない?!
私は賢者の塔で賢者になった直後にこの世界に来たんだから、もう一度そこに行けば元の世界に帰れるかも。それに、賢者の塔には賢者のマスターのティリオンがいる。彼に聞けば元の世界へ帰る方法が分かるかもしれない!
「あのっ。もしかしたら賢者の塔に行けば何か分かるかもしれないです!」
「ケンジャの塔?どこにあるんだ、それは」
「えーっと、魔の森のほぼ中央に建ってる塔です」
「魔の森だと?!」
「あ、でも中に入るには鍵が必要かも?確か六つの国のそれぞれのダンジョンに行かないといけないんだったかな?……そういえば鍵って持ってないのかな。アイテムボックスに入ってたはずだけど、アイテムボックスってどこにあるんだろ?アイテムボックスオープンって言ったら出てくるのかなぁ。……あ、出た」
試しに言ってみたら、アイテムボックスらしきウィンドウが出てきました。
賢者の塔への鍵はないかなっと……
ポーションとか前に使ってた装備とかはあったけど、賢者の塔へ入る鍵は見つからなかった。そういえば、ゲームの中で鍵を使ったら消えたような気がする。
う~ん。っていう事は、一度入った事があるんだから、賢者の塔に行けばそのまま入れるんじゃないかなぁ?
賢者なんだから、当然、賢者の塔はフリーパスだよね。うんうん。
でも万が一って事もあるし、もう一度鍵を取りに行くべき? でも最初の土の迷宮って、LV1で行けるところだったっけ……?
ぐるぐる考えていた私は、突然ぶつぶつ言いだした私に唖然としているレオンさんとアルゴさんの様子に、全く気がつかなかった。
「君のような小さい子が魔の森へ行くなど、絶対に無理だ」
「うんうんうんうん。ユーリちゃんは知らないだろうけど、魔の森のモンスターは他より強いんだよ。スライム相手でも勝てないんじゃないかな?」
二人にそう言われたけど、さすがにスライムくらいは倒せるもん!
LV1だけど、倒せるもん!
……た……多分……。
「スライムくらいは倒せます。っていうかLVを上げれば魔の森もへっちゃらです」
だって魔法使いLV99の時にはソロで狩りに行ってたしね。さすがに賢者の塔の中のモンスターは強いから、転職クエストの時はパーティー組んで行ったけど。
ああ、ギルマスのセシリアさんがみんなに声をかけてくれて、ギルドメンバーたちと行ったんだっけ。
そうか……あれって、まだ、たった半日前の出来事なんだ……
たった半日前の事なのに、あの日常がこんなにも遠くなってしまってる。
また涙がじわりとこぼれそうになったのを手の平でぬぐう。
大丈夫。がんばれる。
がんばってLV上げて、魔の森抜けて賢者の塔へ行く!
そして絶対に、元の世界に帰るんだから!
「レベル上げというのは強くなるということか?君は、何か戦える術を持っているのか?」
「魔法が使えます!まだLV1だから弱いけど、強くなったら何でも倒せます」
「……そう、か」
そう呟いたレオンさんは、何か考えているようだった。
私はこれからどうなるのかと、レオンさんの言葉を待つ。
「……とりあえず君の処遇がはっきりするまで、この砦で君の身を預かろう」
それって、ここに置いてもらえるって事?
わーい!やった~!
LV上げをするにも、衣食住は必要だもんね。
ああ、良い人たちに出会えて良かったぁ。
「ありがとうございます! お願いします!」
「分かった。では……そうだな。アルゴ、アマンダを呼んでくれ」
「了解、団長」
「ユーリ、アマンダは少しばかりうるさいが、あれでいてかなりの子供好きだ。お前の面倒をしっかり見てくれるだろう。他にも何かあれば私かアルゴに言うといい」
そう言ってレオンさんはソファーから立ち上がると、私に手を差し出した。
「はいっ。よろしくお願いします」
私はその手を取って、勢い良く立ち上がった。
九条悠里は賢者LV1のユーリ・クジョウになって、賢者の塔目指してがんばります!