第52話 チョコレートパーティー
アルにーさまとアマンダさんにおいしいものをいっぱい買ってもらった後で部屋に戻った私は、ノアールとプルンにもお菓子を分けてあげた。
もちろんプルンは飴しか食べないので、果物の味の飴だ。いつもよりぷるぷるしてるから、気にいったみたい。
残りのお菓子はアイテムボックスにしまっておく。ここに入れておけばいつでも食べられるからいいよね。
最近知ったんだけど、一応この世界にも、アイテムボックスに似たような物はあるんだって。
なんだ~。だったら、アイテムボックスを持ってることを内緒にしなくても良かったじゃない、と思ったんだけども。
私が持ってるアイテムボックスは何個まで、って感じで、数で持てる量が変わるんだけど、この世界で流通してる収納袋って呼ばれてる袋は、重さで変わるみたい。
収納袋って袋の中の空間を圧縮だか拡張して、たくさん入るようにしているんだとか。
だから重い鎧とか武器なんかは収納袋に入れられなくて、服とか食料とかを入れてるんだって。水も入れておけるけど、重いから水を入れただけで収納袋の収納がいっぱいになっちゃうことがあるし、お水は時間が経つと腐るからあんまり入れておくことはないみたい。
そっかぁ。収納袋だと腐っちゃうんだ……。
ゲームの時のままのアイテムボックスだと、腐らないと思うけど、どうなんだろう? 取り出したら腐ってたりしたら嫌だなぁ。
とりあえずナマモノっぽい物は持ってないはずだけど。
「うーん。アイテムボックスの中身が腐らないなら、屋台で買ってもらった串焼きなんかもしまっておけるのかなぁ」
「えっ、腐らないの!?」
私にクリーンの魔法をかけてくれていたアマンダさんが、びっくりしてその赤い目を見開いた。
「ええと、まだ試してないので分からないんですけど、多分、腐らないんじゃないかなぁと思います」
「それもニホンの技術なの? 凄いわね、ニホンって」
「そうですね~」
別にニホンの技術ってわけじゃなくて、ゲームのシステムがそうなってるだけなんだけど、うまく説明できないから、必殺・笑ってごまかせ!
そういえば、ゲームのイベントの時にもらった『まろやかチョコ』とか『びっくりキャンディー』って、食べられるのかな。
それぞれバレンタインデーとホワイトデーの時にモンスターを倒すとドロップするアイテムで、集めた数によってNPCが装備と交換してくれたんだよね。
もちろんただのおしゃれ装備で防御力なんかは全然ないものだったんだけど、バレンタインの装備は女性用が黒のゴシックロリータで男性用が黒のタキシード、ホワイトデーは女性用が甘ロリって呼ばれるピンクのパステルカラーのロリータ服で、男性用が白のタキシードっていう、キャラに絶対着せてあげたいって思う装備のラインナップだったから、皆で必死にイベントアイテムを集めたのよね。
だって他のゲームでは実装されてた、自分の装備に別の可愛い装備を上書きできる形状加工の機能が、絶対そのうち実装されるはずっていう噂だったし。
実装されてから装備を集めようと思っても、イベントでもらえる装備は自分以外は装備できないことが多いし、その時にしかもらえないから、皆コンプリートしてる人ばっかりだった。
もちろん私もギルドの皆と一緒に集めたの。だからアイテムボックスの中にちゃんと、ゴスロリ服とアマロリ服も入ってるはず。
ただちょっとここで着るのにはヒラヒラしすぎてるのと、あと、スカートが短いから恥ずかしくて着れないんだけどね。
その時に集めた交換用のアイテムが『まろやかチョコ』と『びっくりキャンディ』で、一応、食べると5分だけ素早さが上がるとか防御力が上がるっていう効果があったんだけど、食べても大丈夫なのかなぁ。
そもそも、チョコとかキャンディーの味がするのかな。
……ちょっと出してみようっと。
私はベッドの上に置いてある猫のポシェットを手に取った。
「アイテムボックスオープン」
収納袋は見た目よりたくさん入る袋っていうだけだから、持ち主じゃなくても、誰でも自由に使える。
でも私のアイテムボックスは私にしか使えないから、呪文で出し入れをしてるんです、って説明をしたの。
そうすれば隠れてアイテムを出し入れしなくても良くなるしね。
私って、頭いい!
「とりあえず、まろやかチョコを出してみようっと。えーっと。あった、これだ」
取り出したのはハート型のチョコレート。
わぁ。チョコレートを見るのって凄く久しぶりな気がする。
ちゃんと食べられるかなぁ。食べられるといいなぁ。
「ユーリちゃん、その黒い物は何?」
「チョコレートといって、栄養たっぷりのお菓子なんです」
「お菓子!? それが?」
アマンダさんは信じられないというように目を見開く。
うーん。確かにチョコを知らない人にはこれがお菓子だって分からないよね。
「とりあえず食べても大丈夫か試してみますね」
「そんなものを食べたら、お腹を壊しちゃうんじゃないの!?」
「大丈夫ですよ」
多分、と、心の中でつけ加える。
そしてつまんだチョコレートをパクリと食べてみる。
うん。おいしい。
「アマンダさんも食べてみますか?」
そう言って勧めると、アマンダさんは恐る恐るチョコを受け取って口に運ぶ。
「……あら。おいしいわ」
「ですよね!」
「黒いのに甘いのね。不思議だわ」
「まだたくさんありますよ~」
そう言ってチョコを取り出すと、ノアールが身体を寄せてくる。
ノアールも食べたいのかな。猫にチョコは絶対あげちゃいけないんだけど、ノアールは猫じゃなくて魔獣だから大丈夫なのかなぁ。
「にゃあん」
「食べても大丈夫?」
「にゃ!」
ノアールは大丈夫というように、私の手をペロッとなめる。
そこまで言うなら平気かなぁ。
いざという時はキュアをかけてあげればいいかな。
「じゃあ、とりあえず一個だけだよ?」
「にゃん」
チョコを食べたノアールは、おいしかったというようにゴロゴロと喉を鳴らした。




