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ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!【Web版】  作者: 彩戸ゆめ
第一章 やっと念願の賢者になった!
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第5話 現状を考えてみる

 その時、トントンとドアを叩く音がして、誰かが部屋に入ってくる気配がした。視線を巡らせるとそこにはあの人間離れした超絶美形な団長さんがいて、目が合うとなぜか固まってしまった。


「?」


 な……何?何で固まってるの?


「だんちょー。あの子起きましたか、って。うわぁ。どうしたの?団長に泣かされたのっ?」


 超イケメンさんの後ろから顔を出したアルゴさんが、慌てて私のところまで来た。


 え?泣かされてないけど……あ、涙出てたから誤解されちゃったのかな。

 私は慌てて起き上がった。


「いえっ、あの、違うんです。これは別に泣いてたわけじゃ……あ、ちょっと涙ぐんではいましたけど、別にそれは団長さんのせいじゃなくて。あのっ、そのっ」

「そっかそっか。団長もね、悪い人じゃないんだけどたまに言葉がきつかったりするからさ。てっきり泣かせちゃったのかと思ったんだよね。それで大丈夫?もう起きられる?」

「あ、はい。ご心配おかけしました……」


 ソファーに座りなおした状態でお辞儀する。ハラリ、と銀色の髪が頬にかかった。


 ん?銀色?


 もしかして……もしかするんだけど、今の私の姿って、九条悠里の物じゃなくて、エリュシアオンラインで使ってたキャラの方なの?!


 エリュシアオンラインでは、人・エルフ・妖精・魔族・ドワーフ・獣人の六つの種族からキャラを選べる。私はとりあえず初めてのオンラインだからと思って、人かエルフか妖精で悩んだけど、最終的に人を選んだ。

 髪は肩につくくらいの銀髪で、ちょっと猫目っぽい目は紫だ。


 そういえば、あの女の人に悪い事しちゃったなぁ。話しかけられたのにいきなり気絶しちゃって。


「そういえばさっきのお姉さんにも、迷惑をかけちゃって……」


 肩を落とすと、アルゴさんが横に座って優しく頭をなでてくれた。


「ああ、アマンダの事なら気にしなくていいよ。まったく、一人であんなとこにいて不安になってる子に大声でまくしたてるとか、気配りってもんが足りないよね。団長もそう思うでしょー?」

「いや、お前も大概うるさいと思うぞ」

「ええーっ。そんな事ないですよー!」

「もういいから黙れ。その子と話もできん」

「はいはーい。団長も相手は子供なんですから、怖がらせないでくださいね」

「分かっている」


 アルゴさんが離れると、団長さんが代わりに私の横に座った。


 うう……。なんか緊張する。


「私はこの砦の団長をしているレオンと言う。いくつか質問をしたいんだが、いいかな?」


 私は返事の代わりにコクンと頷いた。


「まず、君がきたのはニホンという国からで間違いはないだろうか?」


 私はもう一度頷いた。


「ではなぜあんな所にいたのか、分かるかい?」


 その質問には首を振る。私だって、それは知りたい。


「それまで一緒にいた人はいるのか?両親でも親戚でも……」


 また首を振ると、レオンさんは困ったように私を見た。


 でも私だって困ってるんです。ゲームしてたらいきなりその世界に来ちゃいましたなんて言っても信じてもらえないだろうし、何て説明したらいいんだろう。


 それに本当の事を言って異端視されるのも怖いし……


 どうしよう。

 何て答えればいいの?

 誰か教えて~~~~~



「何でもいいが、覚えていることはあるか?」


 レオンさんに聞かれて、おずおずと口を開く。


「あの……信じてもらえるか分からないんだけど……それまで自分の部屋にいたはずなんです。でも気がついたらあそこで寝てたみたいで。私にも何がなんだか……」

「そうか……」


 レオンさんは顎に手をやると、何かを考えているようだった。


「家名持ち、しかもこの様子だと高位の貴族の家の子供だろう。そんな子供が護衛もつけずに一人でいるとは考えられない。とすれば偶発的な事故があったということか?」


 ほえ?貴族?

 いやいやいや、そんな御大層な家じゃありませんよ?!

 お父さんは普通のサラリーマンですもん。


「私、貴族なんかじゃないですよ」

「貴族ではない?しかし家名もあるし……その手は労働者の手ではないだろう。しかもその年でその喋り方ができるのは、教育を受けた者でしかありえない」


 労働者の手っていうのは、何となく肌荒れしてアカギレとかある手なのかなって気がする。確かにそんな手はしてないけども、貴族の手って言われるほどのお手入れはしてないような……爪もヤスリで削ってなくて、爪切りでパッチンだし。


 それに喋り方も、本当は18歳だから8歳の子の喋り方よりも大人っぽいのは当たり前だもん。


 ああ、やっぱりうまく誤魔化すとかできない。


 でも本当の事は言えないし、どうしよう……


「でも私の国ではみんな家名を持っているんです。貴族はいなくて……あ、王族だけは名前だけなんですよ。この国とは反対かもです」


 王族じゃなくて皇族だけどね。


「ほう」

「教育も国民全員がある程度の年まで受けられるんです。だから、私は普通の家の子です」

「つまり、君の国はみなが貴族のように暮らしているという事か?」


 う~ん。ちょっと違うと思うんだけど……でも身分制度はないよねぇ。

 なんて言えばいいんだろうと悩んでいると、レオンさんに軽く頭をなでられた。


「子供には難しい話だったな。すまない」


 いえ……本当の事言えない私の方が悪いんです……

 罪悪感で胃がシクシクしてきたよぉ。


 はぁ。それにしても、ゲームで賢者に転職したらゲームの世界に来ちゃったなんて……自分の事だけど夢物語みたい。

 こんな事なら賢者に転職しなければ……


 んん?


 賢者に転職??


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