第16話 握手でこんにちは
「よしっ。じゃあ嬢ちゃん、ちょっくら色々試しに行くか!」
握手した手をそのままガシっとつかまれて、いきなりフランクさんに体を持ち上げられてしまいました。
ぶら~ん、ぶら~ん。
なんだろう。皆さんの視線が呆気に取られているのを感じます。
確かに絵柄的に、片手でちびっこを持ち上げる筋肉さんの姿って、どうなんだろうって気がします。
「ちょっと待て、フランク。まだ話は終わってないだろう。それにユーリはまだ魔力切れから回復したばかりだぞ」
レオンさんが私をフランクさんから引き離しました。
レオンさんのお膝さん、ただいまです。
「話なんざ後でもいいだろ?魔の氾濫が近づいてるんだ。何ができて、何ができねぇのか早めに確かめる方が大切だろうが」
「だが何も分からないまま協力しろと言われても困るだろう。子供とはいえ、ユーリは賢い。説明をしてから協力を求めたほうがいいのではないか?ユーリはどうだ?」
そう聞かれて、確かにそうかも、と思う。
すぐに色々試したいフランクさんの気持ちも分かるけど、もーちょっと色々話を聞きたいし、ここで試せる事をやっておきたい。
「えと、フランクさんの方から私にパーティーの申し込みができるかとか試してみてもいいですか?あと、魔のハンランとかもよく分からないから説明して欲しいです」
「……仕方ねぇなぁ。そんじゃあれだ。早速俺からパーティーの申し込みってヤツをやろうじゃねぇか。パーティー組んでくれ、って言やぁいいのか?」
「あ、待ってください。その前に今組んでるのを解散しとかないと」
これで解散できるかな。
「このパーティーは解散します!」
宣言すると、パーティーウィンドウが消えた。
ほっ。これでいいみたい。
「じゃあフランクさんお願いします」
「よしきた。嬢ちゃん、俺とパーティー組もうぜ」
「握手もしてください」
「おう。これでいいか?」
ぶんぶんと思いっきり握手をされる。
凄い勢いで痛いですうううう。もうちょっと手加減してくださいいいい。
「あ、パーティー組めた」
しっかりパーティーウィンドウが出ました!成功です!
「おお」
「何か変わった感じはしますか?」
「いや、何もねぇな。お嬢ちゃんは何かあるのか?」
「えっと、パーティー組むと、パーティーウィンドウが開くんですけど、どう説明したらいいのかな……なんていうか、空中にパーティー組めましたよ、みたいな表示が出るっていうか、そんな感じ?」
うううう。私の語彙能力の乏しさが悲しい……
うまく説明できないよ~。
「つまり嬢ちゃんにしか分からねぇって事か。そうすると俺が他のやつとパーティー組んだとしても、それが成功してるかどうかは分からんって事だなぁ」
「ですね……あ、でも、ヒール・ウィンドがかかればパーティー組むのに成功してるって事になるから、分かるかも?だけどそれを確認する為だけにヒール・ウィンドのMP20を消費するのって無駄かなぁ?う~ん」
悩んでいると、レオンさんが頭をぽんぽんとしてくれた。
「そう悩む必要はない。これから色々試せばいいし、差しあたってフランクが試したいのはヒール飛ばしだろうから、それができるようになってから他の事も考えよう」
「そう……ですね。分かりました!」
うん。そうだよね。一度に全部教えるなんて無理だもん。
ちょっとずつ、自分にできることをやっていけばいいよね。
「あ~、ヒール飛ばしもだけど、ヒールの詠唱短縮もやりてぇなぁ。どうやって魔法発動してんだろうなぁ」
すみません。それも私にはうまく説明できません……。
「あ、フランクさん。試しにレオンさんたちもパーティーに誘えるか試してもらってもいいですか?」
「え?俺がやんのか?」
「はい。だって今はフランクさんがパーティーリーダーですもん」
そう言うと、フランクさんは眉をしかめてそれはもう嫌そうな顔をした。
あれ?何でそんな嫌そうなの?
「パーティー組んでくれって言って、握手すんのか……?団長とアルゴとアマンダに……?勘弁してくれよ、おい」
フランクさんは小さな声でブツブツつぶやいてる。
「私だって気持ち悪くてごめんだわ」
「ユーリちゃんと握手ならともかく、フランクじゃなぁ……」
アマンダさんが腕をさすりながら言うと、アルゴさんも同意した。
ええっ。そんなに嫌がらなくてもいいのにー。
「まあ、あれだ。別にパーティーなんざ組まなくても、今までちゃんと回復できてんだから必要ねぇよな!ヒール飛ばしの練習だけすりゃぁ、いいよな!」
「そ、そうよねっ。絶対に守らないといけないって人だけ、ユーリちゃんにパーティー組んでもらって回復してもらうとかねっ」
え……アマンダさんもそんなに嫌なの?
大人ってよく分かんないなぁ……
あれ?私も18歳なのに、何言ってるんだろう?
自分で思った事なのに、少しだけ違和感を覚える。
あれれ?