第107話 スパイダーウェブコート
タウロスっていう魔物は牛に似た魔物で、角が鹿のような形をしている。
なぜか神官とかばっかり狙うから、ついた呼び名は「回復職殺し」だ。
でもなんでいつも回復職しか狙わないんだろうと思ってたけど、白い物に突進するからだったんだね。知らなかった。
そういえば神官の服って白い色が多かったかも。
だってその方が可愛いデザインが多かったんだもん。
「ほら、嬢ちゃん。魔法を試してみるんだろ?」
フランクさんがニカッと笑う向こうには、後ろ脚をカッカッと蹴って突進寸前のタウロスがいる。
あわわわわ。
急いでステルス・サークルを試してみないと!
「えっと。ステルス・サークル!」
ちょうど私とタウロスの間に魔法陣が出るようにゲッコーの杖で地面を指す。
ヒュンッと丸い輪っかが杖から出て、地面に広がる。
よく見ると、うっすらと光る魔法陣が地面に置かれたみたい。
それでこれを蜘蛛の糸でコートするんだけど、どうすればいいのー!
普通に言えばOKかな。
「スパイダーウェブコート!」
……でも、何も起こらない。
えっ。ちょっと待って。どういうこと?
「スパイダーウェブコート!」
もう一度言ってみたけど、地面の魔法陣はうっすらと光っているだけだ。
「えーっ。これじゃダメなの!? でもどうすればいいの? 分かんないよぉ……。もーっ。クエストならもっと親切に教えてよー!」
思わずそう叫んだら、目の前に半透明のウィンドウが出てきた。
▽クエストクリア条件
ステルス・サークルに向かって「スパイダーウェブコート・セットオン」と唱える。
え……。
ちょっと待って。
何その恥ずかしい呪文……。
どこかの魔法少女じゃないんだよ!?
そんなの恥ずかしくて言えるわけが――
「ユーリちゃん、気をつけて!」
アマンダさんの声に我にかえると、タウロスは頭を地面スレスレに下げていた。
ぎゃーっ。これって突進前の合図だー!
恥ずかしいけど、でも、恥ずかしがってる場合じゃないよね。
「スパイダーウェブコート・セットオン!」
は……恥ずかしい~~~。
恥ずかしがっている間に、ゲッコーの杖からもう一度光が飛ぶ。
それはさっきの魔法陣とまったく同じ大きさで、二つの光が合体すると――。
パアッと魔法陣が一瞬光る。
光の後に、それは消えた。
「消えちゃった!?」
うっそー!
なんで? どうして!?
タウロスは頭を下げたまま「ブモーッ」と鳴いて突進してきた。
「ユーリ!」
「嬢ちゃん!」
「ユーリちゃん危ない!」
アルにーさまとフランクさんとアマンダさんが慌てて私の方にやってくる。その横でカリンさんとヴィルナさんも慌てているのが見えた。
次の瞬間。
ぎゅむーっ。
柔らかくていい匂いのするものに包まれた。
こっ、これはもしかしてアマンダさん!?
ぎゅっと抱きしめてくるアマンダさんに私は慌てる。
だってこれじゃ、タウロスの角がアマンダさんに刺さっちゃう!
だけど……いつまでたっても、衝撃は訪れなかった。
あれ、と思わず見上げると、アマンダさんの赤い瞳と目が合う。
そろ~っとアマンダさんの体の横から顔を出して見てみると、そこには網のようなものに絡まってもがいているタウロスがいた。
「あれが蜘蛛の糸?」
見えなくなっていたはずの魔法陣は、最初の時と同じようにうっすらと光って見えるようになっていた。
▼クエストを完了しました。
▼ステルス・サークルを使用せよ。
地面にステルス・サークルを描き、「スパイダーウェブコート・セットオン」と唱える。
▼クエストクリア!
報酬・・・ステルス・サークルで使う蜘蛛の糸コートを覚えた。
わーい。やった~!
ステルス・サークルが使えるようになった~!
やっぱりこれって、盗賊が使ってた地面に置く罠みたいなものなんだね。なんだか賢者が覚えるスキルじゃないような気がするけど……。
でも、いいのいいの。
スキルを覚えたってことは、成長した証拠だしね。
それにもっと無属性魔法のレベルを上げれば凄い魔法を使えるようになるかもしれないし。
よーし。がんばってレベルを上げるぞー! おー!




