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不死身の異世界人  作者: ぱにっく
8/17

忘れ物はありませんか?

前回のあらすじ

ローラさんが男でした。

あまりの事実に開いた口が塞がらない慎也。


「ひ、人は見かけによらないんだな…」

「でしょう?羨ましいですよねー」

「あそこまで行くと、羨ましいというより怖えよ」

「それはひどいですよー。で、次は武器屋さんですか?」

「あ、ああ。いい店知ってるか?」

「んー…私自身が武器を持たないので、わかりませんね」

「え、メルディのワンドは?」

「あ、あれは魔術師ギルドっていうのが別にあって、そこで作ってもらうんですよ」

「はー…全部一緒だと思ってたわ」

「魔法発動体がついているものでも、ワンドじゃなくて近接武器や弓などは普通に武器屋さんですが、ワンドだけは魔術師ギルドですねー」

「勉強になるよ。てことは、こっからは手探りか」

「そうですね…あ、シンヤさん今お金持ちなんで武器屋より、鍛冶屋に行ったほうがいいんじゃないですかね?」

「え、ちがうのか?」

「はい、武器屋は鍛冶師が作った武器を卸してもらって売ってるんです。鍛冶屋っていうのは鍛冶師が作った武器をそのまま売っていたり、オーダーメイドで作るところですね」

「ふむふむ…じゃ、鍛冶屋に行くか」

「武器屋はいいんですか?」

「ああ、大丈夫だ」


慎也はラノベの知識で鍛冶屋に行くべきだと決めつける。

鍛冶師と仲良くなり、武器を作り、新しい素材でそれを強化する。

そこに慎也はロマンを求めていた。


(ドワーフならばビンゴだな…酒でも買っていくか)


「あ、そうだ…酒屋って知らないか?」

「え、鍛冶屋さんはいいんですか?」

「ああ、先ずは酒を買って、それを手土産に持っていく」

「???…まあ、わかりました。酒屋さんですね、こっちです!」


しばらく歩き、ビールジョッキに酒が溢れるほど注がれている看板がみえた。どうやら、酒屋と言うより、酒場であるようだ。


「いらっしゃ…ここはあんたらが来るところじゃぁないぜ?」

「ああ、すまない…飲むために来たんじゃなくて、手土産として酒を買いたい」

「そういうことかい。で、どんな酒が欲しいんだい?」

「この店で一番旨い酒をくれないか?高いやつよりも、酒好きが好むようなやつ」

「ほう、わかってんじゃねえか…ならこいつだな。どれほど欲しい」


店員が出した瓶にはドラゴン殺しと書かれていた。明らかに度数が高い酒である。


「そうだな…樽いっぱいでどれくらいになる?金はあるんだが」

「おいおい…こいつを樽いっぱいだと…?どこの酒豪だよ。ああ、値段は…そうだな、多く買ってくれるから割り引いて6万メルクだ。あるか?」

「ああ、これでギルドにつけてくれ」

「あいよ」


ローラの店で一度経験してるのでスムーズに会計が進む。


「よし、ほらよ。酒好きのあんたの友人にもよろしく言っといてくれ」


そう言って樽を持ってくる店員。アイテムボックスにしまい、店を出る。


「シンヤさん。鍛冶師に友人がいるんですか?」

「いや、あれは店員の深読みだろう」

「あ、そうなんですね」


そういって歩いていると出店の間の路地が目に入る。慎也の心の中がざわつく。


(ここを曲がって奥に行くと、鍛冶屋がある。あまり人が入らない店で気難しいドワーフが経営しているだろう。そして、そのドワーフは実は腕のいい職人で気に入った奴にしか武器を作らない。ふふふ)


勝手にプロファイリングをすませ、路地へと向かう慎也。慌てて付いてくるメルディ。


「シンヤさん!?そんな路地裏に行ってもお店は…あった…」


慎也の予想通り路地を曲がり、奥まで進むとひっそりとたつ鍛冶屋があった。


「し、シンヤさんはこのお店を知ってたんですか?」

「いや、知らない。ただ、引き寄せられた」

(俺の中のテンプレという名の運命の歯車にな!)


さすがに何を言ってるか意味不明なので口には出さない。


「とりあえず中に入ろう」

「は、はい」


中に入る二人。中には様々な武器が所狭しと並んでいる。店の中は埃っぽいが武器には埃が一つもない。そこに並々ならぬ愛情を感じる慎也。カウンターには誰もいない。


「すみません!武器を売って欲しいんですけど!」


叫ぶが返事がない。


「すいませーん!」

「なんじゃ…そんな叫ばんでも聞こえとるわい」

「おお、ドワーフ」

「おん?なんじゃ、初めて見る顔じゃのう」

「一昨日にこの町に来たばかりで。あの、武器を売って欲しいんですけど」

「帰れ。一昨日町に来た?そんな素人がなんでこの店を知ってるかは知らねえが…お前に売るような武器はない」

「な!そんな!私たち来たばかりですよ!?門前払いもいいところですよ!」

「メルディ落ち着け」

「こんなこと言われてるのに落ち着いて入られますか!!」

「落ち着けって、この人は俺たちを試してるんだよ」

「え?」

「ほう…?」

「こんな理不尽な言い方をされたらそりゃ腹も立つけど、魔物との闘いなんて理不尽そのものじゃねえか。これくらいで怒り狂ってたら生き残れねえや」

「う…そうですね…すみません」

「いや、落ち込まなくてもいいって。で、そういうことでいいんですかね?」


慎也は自信満々に答えを求める。テンプレならばこれでいいはず。


「いや、そんなつもりはないが」










深読みしすぎたようだ。顔から火が出るほど恥ずかしくなる慎也。メルディは隣で笑いを堪えている。


「んんっ!ま、まあ…お前さんの言いたいことも一理あるがな」


まさかの親父さんからのフォローにさらに恥ずかしくなる。


「す、すまない…でなおすよ。



…あ、そうだこれ…」


慎也は帰ろうとするが買ってきた酒を思い出し、アイテムボックスから取り出す。途端にドワーフが目を輝かせる。


「お、おい…お前さん…その酒はまさか、ドラゴン殺しか?」

「ああ、手土産にと持ってきたんだよ」

「なんだと?お前さん、本当にこの店、初めてか?」

「ああ、なんとなく好きそうな気がしてな。まあ、楽しんで飲んでくれよ。俺らは帰るから」

「ちょっとまて!」

「え?」

「まあ、話くらいなら聞いてやる。ほら、酒を注いでくれ」


ドワーフの酒好きは世界を超えるらしい。

このドワーフの職人はアインズという名前で、王都で職人をしていたのだがどうにも性に合わなかったらしくここで店を開いたとか。

何故こんな場所なのかを聞くと、アインズ曰く、

「本当に強い奴ってのは強い武器と出会うためにどんな場所でも見つけ出すはずだ」

とのこと。

そして実際に店に来た人間を見て、武器を作るかどうかを決めるらしい。


「がっはっはっは!!!おめぇ話がわかるじゃねえか!!」

「いやいや、アインズさんとは初めて逢った気がしないっすねー」

「ういー…」

「俺もな?初めて逢ったとき、ピーンときたのよ!こう…こいつには何かある!!って言うな?」

「嬉しいっすねー!さすが!腕利きの職人さんはわかるんだなー!」

「ういー…」

「よし!いっちょお前さんに武器を作ってやろうじゃねえか!」

「え!いいんすか!?」

「こんな旨い酒を持ってきてくれたんだ、それぐらいしねぇとバチが当たる」

「あざーす!!」


親戚のおじさん達への対応が功を奏してアインズにはだいぶと気に入られた慎也。

売ってくれればと思っていたのだが、作ってもらえるとは思いもしなかったので驚きつつも感謝の言葉をかける。


「で、どんな得意な獲物は?」

「あー…それなんですけど」


ここで、慎也はアインズに相談することにした。バルドの力を受け継いでから普段の筋力もアップした慎也は、小剣を使い辛くなっていた。もともと一撃で仕留める闘い方をしてきているので、その方向で。尚且つ、筋力を生かし、相手を一撃で仕留められるものを探していたのだ。


「はー…そうなると、バトルアックスやポールアックス、バトルハンマーじゃねえか?」

「でっかい剣とかはだめっすかね?」

「大剣はあるにはあるが…馴染むのには一番時間がかかるぞ?」


アインズが言うには、大剣はその重さで切るだけでなく、ガードするのに刀身の腹を使う。その為により重くより頑丈にするため、普段闘うのには向かないらしい。

大型の魔物を狩るときは好んで使う冒険者が多いらしいが。


「んー…じゃ、バトルアックスで、こんなのは…」

「ふむ…お前さん、なかなか面白ぇこと考えるじゃねえか!」

「あざっす!」

「ようし!今から作る!三日後には出来てると思うから、そんときにまたこい」

「わかりました。あの、代金は…」

「お前さんと出会った。これが代金でいいよ」

「おやっさん…」


最高の職人である。

慎也は感動しながらアインズを見つめる。


「おっと、バトルアックスは初めてだな?なら、店にあるやつを持っていきな」

「え、いいんすか?」

「せっかく作ったもんが、扱い下手なせいで壊れても嫌だろ?」

「あざーっす!!」


アインズの粋な計らいに感謝しつつ、店にあるアックスを物色する。すると、端っこの方にやたらと巨大な、それこそ獣人化したときの慎也で丁度いい大きさの戦斧を見つけ出す。

全体は黒色で、刃と持ち手には金色で模様がかかれている。柄は長く、石突きには槍のように尖った鉄がはめ込まれ、中央の球体を中心に左右対称に大きな円を描くかのような刀身。その刃からは力強さがあふれ、使いこなせば岩でもバターのように切れるのではないか。そう思わせるような一品があった。


「おやっさん…」

「おん?…ああ、それか…そりゃ俺がまだまだ若い頃に作ったやつでな…真ん中の球体は魔法発動体になってんだが…そんだけデカい斧を振り回しながら呪文を唱えられる奴がいないと、作ってから気がついたのよ。

いわば、失敗作だな。


まあ、それ以外で探してくれよ」

「いや、おやっさん。これをくれ!金も払う!」

「おいおい、待て。そいつは失敗作だって」

「いや、俺なら使いこなせる…そんな気がするんだ。こいつが…俺を呼んでいるような」


慎也は格好をつけてこう言ってる訳ではなく、本気で呼ばれている気がした。

呪文を唱えずに魔法を発動できる慎也との相性もいい。立てかけてあったそいつを手に持ってみる。

まるで、昔から使ってきたかのように手になじむ。


「おやっさん…こいつの名前は?」

「あー…そいつは『ドラグロ』だよ」

「ドラグロ…っ…!!」


慎也がそう呟いた瞬間、ドラグロが震えた。力強く、慎也を魂から震わせるような。ドラグロが心から喜んでいるかのような震えに唖然とする。

驚いてアインズを見るが、アインズ自身も驚いていた。


「おいおいおい…そいつに坊主が認められたってのか?」


アインズ曰く、

真の持ち主が現れた時、その武器は歓喜の震えを起こす

というのがドワーフ族の言い伝えにあるらしい。


「お前さんは本当に何者だ?歓喜の震えなんて、生まれて初めて見たぞ!」

「い、いや俺も…突然のことで何が何だか…」

「とにかく、ドラグロはお前さんを主と認めたようだな。よし、いいもんを見せてくれたんだ、そいつもただでいい。もっていけ!」

「…いいのか?」


そう言いながらも慎也はドラグロを見つめ続ける。その輝きに、力強さに目が離せないのだ。


「自分の作ったもんが、真の持ち主と出会えたんだ。金を取るなんざドワーフ族の名折れってもんよ」

「…わかった。こいつは、ドラグロはもらっていく!」

「おう!大事に扱ってくれよ?」

「まかせろ」


いつかバルドが慎也に言ったように、慎也はアインズに一点の迷いもなく断言する。まかせろと。


「よっしゃ!今から俺は工房に籠る!ドラグロに負けるようなもんは作れねえからな!」

「ああ、頼むよ」

「お前さんはそいつを使いこなせるように、討伐依頼でも受けるんだな」

「ああ」

「よし!ならあとは三日後だ!楽しみにしてな!」

「世話になった!また三日後に!」


そう言い残して、アインズの店を後にする。こいつがあれば、もっと高みへ行ける。そう確信し、明日は朝一番に依頼を受けに行こうと心に決める。

すると、アインズが後ろから追いかけてきた。せっかく格好よく店を出たのに台無しである。


「あ」


しかし、アインズが持ってきたものを見て、それは自分が原因であると思い至った。


「おめぇ!格好つけて出ていったくせに店に嬢ちゃんおきざりじゃねえか!」


アインズが担いでもってきたのはドラゴン殺しでべろんべろんに酔っ払ったメルディであった。


「わ、忘れてた」


台無しである。



狼男にでかい戦斧!

これが書きたかったんですはい。


最初から出すかどうかで悩みました。



私はお酒を飲むとめちゃくちゃ暴れちゃいます。しかも記憶あります。

覚えてないフリが苦手でいつも謝っています。


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