この世界での仲間
やっとできた…
夜勤早朝日勤と連続で夕方車の中で寝てまた夜勤〜
従業員が少ないって、エグいです…
バーンズと闘った翌日。慎也は珍しく昼近くまで眠っていた。
「ん…んあ…あれ。ベッド?
…あー…そっか」
昨日の出来事を思いだし、医務室にいることを認識する。ベッドから起きて医務室からでると、突然誰かとぶつかった。
小柄な女性でフードを目深に被り顔は見えない。
女性が持っていたお盆と上に乗っていた飲み物が床に落ちて散らばってしまう。
「あ!ごご、ごめんなさいっ!大丈夫でしたか!?」
「ああ、大丈夫…君こそ大丈夫だった?」
「はい!わ、私は平気ですからっ」
そういって、床に落ちたものを拾い集める。そのまま見てるのも変なので、手伝う慎也。
「え?そ、そんな!私一人でできますからっ」
「いいっていいって、ほら、ガラスも散ってるし…怪我したらダメだろ?」
「それを言ったらあなただって!」
「俺は大丈夫だよ、怪我してもすぐ治るから」
「それでも…うぅ…」
止めても意味がないと理解したのか、掃除に集中し始める。そんな女性を慎也はガラスを拾いながら見つめる。
(可愛い子だなー。モデルみたい。俺と同い年くらいかな?)
女性は見つめる慎也に気がついたのか、照れながらも下を向きフードを更に深く被る。
「あ、あの、なにか顔についてますか…?」
「うん?あ、いやいや、可愛かったもんだからついね」
「へええぇぇええ!!?」
慌てふためき、更に顔を赤くする。フードは限界まで引き下げられており、布地に顔の凹凸が張り付く。それを見て笑う慎也に、笑われて更にテンパる女性。
側から見れば何をやってんだと言いたくなる光景である。
「あ、自己紹介まだだよね。俺はシンヤ。昨日初めて冒険者登録して、Dランクになったばかりだよ」
「え!昨日登録してもうDランクですか!?」
「まあ、紹介状があったからね。で、君の名前は?」
「あ、わ、私はメルディっていいます!基本的に後衛支援をしてます、はい」
「メルディね、よろしく」
「はいっよろしくお願いします!」
メルディは緊張が解れたのかフードから顔を出して笑顔を向ける。栗色の髪が肩まで伸び、目は柔らかな曲線を描き優しさが伺える。身長は150くらいだろうか。日本にいた頃は、それくらいの高さでも気にならなかったがこっちの世界は違う。
冒険者になる女性のほとんどは背が高く体格もいい。
そんな中にいるもんだから、よけいメルディが小さく見える。この子は冒険者として大丈夫なのかと初心者ながら心配になる。
「メルディのランクは?」
他愛もない話。そんな流れで聞いたのだが、これがまずかった。
黙りこくったメルディを不審に思い顔を見る。そこには、まるで敗戦から逃げ帰ってきた兵士のように疲れ切った顔をしたメルディがいた。顔は青く、目は濁りきり、正直に言えば引く。
ギャップ萌えという言葉があるが、ここまでギャップがあるともう引く。ドン引きである。
先ほどの笑顔はなんだったのかと思ってしまう。
「えっと…ごめん。聞いちゃダメだった、かな?」
「え?ああ、まあ、いいですよ、別に。私はEランクをずーーーーっとやってますね、はい。
ほら、私、攻撃魔術使えないんでね、モンスターが倒せないんですよね。私、後衛支援ですから。パーティを組めばいいって言わないでくださいね、もう散々やったんで。
結果?ほら、さっき言ったじゃないですか。Eランクですよ?ええ、今しの後衛支援なんて、攻撃も出来て当たり前ですから。
私、旧世代の魔術師ですから、笑います?いや、笑ってください。そのほうが楽なんで…はは。
ところで、なんで聞いたんですかね?ランク。私のこと知ってました?知っててわざと聞いたんですか、もしかして。
うわー…いるわ、こういう人。自分を持ち上げたいから他人を蹴落とすみたいな。
うわー…ちょっと…ちょっと…
ちょっとお手洗い、行ってきま…」
「もう喋るなっ!!」
「ひゃんっ!?」
ドン引きどころではない。卑屈すぎて可哀想になってくる。思わず抱きしめてしまうほどに。
話を聞くに、最近の魔術師というのは味方の強化や回復の所謂後衛支援の他に、敵を倒すための攻撃魔術も駆使しているらしい。
バルドには一般的なパーティは4〜5人で、前衛に2人か3人、後衛に攻撃支援と補助支援だと聞いていた。
補助支援とは今のメルディの立場で、攻撃支援とはその名の通り攻撃魔術に専念するものである。
今メルディが話したように補助支援役が攻撃魔術を使い始めれば、補助支援しかできない人間は肩身の狭い思いをしてしまうだろう。
おそらく、最近では何度もパーティ編成を申し込み、何度も断られているんだろう。
日本でもあの顔は見たことがある。
同じクラスの人間で、就職組みだったのだが余計なことを喋る性格が災いして内定を一つももらえなかったやつ。
そいつと同じ顔をしている。
慎也は今、純粋に優しくしてあげたいと思った。
「もし、メルディがよければだが…俺とパーティを組まないか?」
「ひゃぅぅぅううう……え?」
「俺と、パーティを、組まないか?
ほら俺は昨日初めて冒険者になったから、後衛支援にこだわりとかないし。メルディとは歳も近そうだしさ。やっぱ楽しい人と依頼をうけたいじゃん?」
卑屈になられたらたまったものではないが。
「で、でも…最初はそれでいいかもしれませんが…他の人と組んだ時、あ、やっぱメルディダメだわ。解散だわってなったりしません?」
「しないしない。なんなら俺の専属になってくれてもいいんだぜ?まぁ、それは「なります!!!!」ない…え?」
「私、シンヤさんの専属魔術師になります!」
フンッと鼻息を荒くして意気込むメルディ。
「あ、ああ…よろしくな?」
「はいっ!!」
慎也は思う。これ、冗談でしたってもう言えなくね?と。
「まあ、いいか、可愛いし」
「え?なんですか?」
「いや、こっちの話。ところでバーンズに会いたいんだけど、どこに行けばいいかな?」
早くもパーティメンバーが決まったが、それよりも大事なことがある。
昨日のまでの詳しい話をバーンズに聞かせるのだ。
確か昨日そう言っていたはずなのですぐに会えるだろうと考える。
「あ、そうでした!私、バーンズさんに言われてシンヤさんのところへ行ってたんでした!」
「…。」
「ご、ごめんなさい」
涙目で上目遣い。許すしかない。
「許す」
「ありがとうございますっ!」
ひまわりのように明るい笑顔を向けるメルディ。可愛いは正義である。
(何もなければ、最高に可愛いんだけどなー)
卑屈モードには気をつけようと心に決めながら、メルディに案内されてバーンズのいる執務室へむかうのだった。
◇
「で、遅れたのか」
「そうですね」
「うう…すみません〜」
バーンズは呆れて何も言えなかった。要件を伝え忘れただけでなく、ここまで来るのに3回も問題を起こしているのだ。
割れたガラスを捨てに行く途中で丁度帰ってきたパーティとぶつかって、討伐部位を入れた袋をぶちまけたり。
ガラスを割ったことを厨房に謝りに行ってウエイターとぶつかって、運搬中の食事をぶちまけたり。
いざ執務室へ行こうとしたら階段を踏み外して転げ落ち気絶してしまい、医務室に逆戻り。
要件は自分がいれば大丈夫だとは思ったがパーティを組んだので一緒に行動しようと思い、メルディが起きるまで待っていたのだ。
本来医務室から二階の執務室まで5分もかからない。それを3時間以上かけて来たのだから怒るより先に呆れてしまうというものである。
「…まぁいい。で、パーティを組んだのなら今からの話にも参加させるんだな?」
「メルディがよければ俺は」
「わ、私は参加したいです!専属魔術師なので!」
「専属…?」
「気にしないでください」
「お、おう。
んじゃあ…」
そして、バルドと出会ってからここに来るまでの経緯と、あのオーガに対する疑問を話していく慎也。
途中で質問を挟みながら最後まで聞きに徹するバーンズ。
あまり内容を理解できていないが、慎也の父親が亡くなり、その父親の力を今は慎也が受け継いでいる。というところまではわかったメルディ。
全てを話し終えた慎也にバーンズが話しかける。
「ふむ、大方理解できたな。オーガの件は各地のギルドにも報告しておこう」
「ありがとうございます」
「シンヤさん、お疲れ様です!」
「ああ、ありがとな」
「あと、お前が見つけた冒険者パーティなんだがな。次からは、全員分の証明になるものだけでも持って帰ってきてくれ。これは規則じゃないが、残された家族へ渡してやりたいからな。
お前の持つワンドはお前が持っていていい。あいつは独り身だったから、使ってたほうが供養になるだろう」
「そういうことなら、いただいていきますね」
「おう。まぁオーガの件がはっきりするまで、しばらくはゆっくりしてな。まだ町も見て回ってないんだろう?」
「ああ、宿屋と武器屋と雑貨屋を探さないと」
「あ、私、それぐらいでしたら知ってるんで、明日行きませんか?案内します!」
「いいの?俺は助かるけど」
「もちろんです!」
「じゃあ頼むよ。あとは宿屋だなー。バーンズさん、この辺りで一番安くてまさに寝るだけの部屋って宿を教えて欲しいんですけど」
「そんな条件でいいのか?なら、夕日の小鳥亭なんてどうだ?町はずれにあるんだが、その条件は満たしてるぜ」
「わかりました、そこに行ってみますね」
「俺からも言っておくよ。宿へは外壁沿いの道を南門から東へ進め。そしたら一つだけ宿がある」
説明されて今回はお開きとなった。
明日からしばらくは町の観光や身につけた力を自在に操るための修行の日々だと意気込む慎也。
「シンヤさん!明日、二つ目の鐘が鳴ったらギルドに来てください!起きれる自信がなければ宿の人に言えばいいと思うので!」
「わかった、ありがとうな」
「いえいえ!仲間ですから!」
「そうだな、これからよろしくな」
「っ…!!はいっ!」
見惚れてしまうような綺麗な微笑みを向けられて顔があつくなる。それを誤魔化すように足早にギルドを去る慎也。
(町に着いてからたった1日なのに、色々ありすぎだよ)
疲れたような呆れたような、そして嬉しそうな気持ちで宿へと向かう。
苦楽を共にするであろう仲間ができた。
昔の義父を知る人物にあえた。
お人好しな先輩冒険者に知り合えた。
一癖も二癖もある人間たちだったが、慎也は心が暖かくなるのを感じて宿に着き、目を瞑る。
明日からの生活に備えて。
因みに宿は四畳半ほどの一室で、藁を布で囲ったようなベッドが一つあるだけの部屋だった。
こんなヒロインはいかがですか?
あんな感じのセリフはいくらでも浮かんでくるのに肝心のシナリオはもうね
やっと次からほのぼの書けるぜっ
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