1、いつもの日々
「アグル〜」
誰かが僕の名を呼んでいる。
「アグル、無視するなよ。」
彼は少し怒ったように問いかけてくる。
彼は僕の幼馴染で名はマイル。結構短気だがそれを補うようにやさしさもある。
「ごめんマイル、ボーっとしていて。」
「ボーっとしているとは、お前にしては珍しいな。なんかあったのか?」
「別にないけど・・・」
僕は、幼き日の夢を思い出していた。まだ果たされていない夢。
「そういやお前ってランカー目指していたよな。まだ、あきらめてないだろ。」
彼は僕の心を見抜いたかのようにそう告げると、少し僕から離れさらにこう告げた。
「久々に組み手でもするか。」
「えっ・・・」
彼から予想しない言葉が発せられ少し驚いてしまった。
彼も、昔はランカーを目指していたのを僕は忘れていた。
「嫌か?」
「嫌じゃないけど何でいまさら?」
「いまさらって、俺もランカー目指しているからな。」
さらに思いがけない言葉に思わずきょとんとしてしまう。
「お〜い、聴いているか〜?」
「聴こえてる。お前はあきらめたとばっかり。」
「ん〜まぁ、半分あきらめているのかもしれないけどな。」
彼は歯切れの悪い答えを告げた。
「じゃ、いくぞっ!!」
「なっ!!」
ドサッ!!
いきなり飛び掛られたので転んでしまった。
「おいおい、そんなのでランカー目指していたのか?」
「いきなり飛び掛るなんて、卑怯だろ!!」
「ワリイ、ワリイ」
彼は悪びれた素振りも見せずそう告げた。
僕が怒った素振りを見せると、彼はどこかへ走っていってしまった。
僕は「本当に騒がしい奴だな。」と心の中でつぶやいたのだった。