目覚める龍 2
最も遅れてスタートした二人は真っ直ぐに学院を目指し、湖の脇を通り、学院の門へとたどり着いた
景都と雅也がたどり着くと正門の前で時計を持った若い女性が立っていた
「あら、今年の新入生は優秀ね
まだ、お昼なのにもう到着するなんて…ちなみにどのルートから来たのかしら?
西回りの丘を越えるコース?それとも東回りの地下道を抜けてくるコース?
…でも、服の汚れが少ないから西回りかしら」
女性は自己完結しながら頷く
「そんなコースあったんだ」
「ああ、知らなかった」
「あらそうなの……………え?」
女性が固まる
「列車を降りる時に説明を受けなかったの!?
西回りと東回りの道があるっていう説明があったはず」
「俺、寝てたし」
「列車にすらのれてないしな」
「。。。も、もしかして…君達は、駅から真っ直ぐ洞窟を抜けてきたの?
あそこにはトラップや遠隔操作のゴーレムまでいるし、洞窟から出てきたとしても湖には守神がいるはず」
「あー、ゴーレムは片足ぶっ壊した」
「守神?
危うく殺されそうだったな、守神が率先して殺生か?」
「…………」
し、信じられない………
この子達、新入生のレベルじゃないわ………どうしよう
ドドドドド………
そこに、土煙を巻き上げながら何かが近づいてきた
ザザザザザ!!!
その正体は、景都達と同い年くらいの少女だった
「はぁはぁはぁ、これで一番………」
「残念ね、同着」
と、もう一人どこからともなく現れた少女だった
「くっ…詩織、なんで!?
一生懸命置き去りにしてきたのに!」
「………えーと、君達、名前を教えてくれる?」
女性が我に帰り、仕事を始めた
「轟景都」
「黒田雅也」
雅也が譲るような形で名前を名乗る二人
「「……え?」」
「じゃぁ、そちらの二人も教えてくれる?」
二人の少女は信じられないような顔でこちら伺っていた
「あっ、すみません
私は龍堂 綾佳です」
「…法院 詩織」
「では、四人とも中へどうぞ」
景都達は、綾佳達を気にせずに門をくぐり、大きな扉を開けた
「おや、今年は随分早いご到着だね」
入り口には景都達よりも少し歳上に見える青年が待ち構えていた
「まぁ、そんなことはどうでもいいか
さぁ、残りの新入生が来るまで談話室で休んでくれ」
青年はそういうと奥へと進み始める
「さぁ、ここですよ」
青年は扉を開けて、四人を導いた
バタンッ…
景都と雅也は部屋の奥にあるソファに腰を下ろし、そのまま景都は横になり、雅也は本を取り出した
逆に綾佳と詩織は入口の近くで腰を下ろし、景都達を訝しむように様子を伺っていた
時刻は十二時
ちょうどお昼時を迎えた
………ぐぅぅぅぅぅ
部屋に響く、お腹の音
景都は昼寝を続け、雅也も動揺することなく読書を続けた
それに反して綾佳の顔が赤くなっている
ぷるぷるぷる…
恥ずかしさもあったが、それ以上に無視されたことが腹が立っていた
気に入らなかった
自分達よりも早く到着したことや興味を示さないこと
その行動すべてに腹が立っていた
コンコン…ガチャ
入って来たのは、先程の青年だった
「いやー、まさかこんなに早く着くと思っていなかったから昼飯の用意がなくてね、食堂の方にお願いして軽食ですけど用意しました」
青年はカートに乗せてきた皿を綾佳達の前のテーブルに置くともう一つの皿を持ってケイト達の方へ近づいた
「君達もどうだい?」
「いただきます」
青年は皿を雅也の前のテーブルに置き、男女の中間に腰を下ろした
「他の新入生はもう少しかかるだろう
例年、十五時くらいに着くからね
ああ、申し遅れた
僕は三回生の高橋 大介
一応、君達の先輩になるかな」
高橋は食事を勧めながら話を続けた
「予定だと全員到着してから学院の長の講話などのオリエンテーションの後に自分達の部屋に移動してもらい、十八時から歓迎の宴会が開催されることになっているよ
…でも、他の子達が来るまでここで待っているのももったいないだろうっということでそれを食べたら僕が君達を案内することになった」
「そうですか…ありがとうございます」
ひょいっ
横になっている景都に向かって皿の上にあったおにぎりを放り投げた
パクッ
「もごもごもごも」
危ないだろ!
「寝たふりなんかしているからだ」
「ははは、いいコンビだね
付き合い長いの?」
「いえ、駅で初めて会いました」
「へぇ…長年組んでいるふうに見えるよ」
高橋は微笑みながら、綾佳達の方に視線を変えた
「で、どうでした?
ここまでの道のりは」
サンドイッチを手にとった綾佳が応える
「思っていたほど面倒って感じはなかったです
移動距離が少し長いかな程度です」
うんうん、と頷く高橋
「そうですね、丘に出るコースは迷わせの林道を抜けてしまえば、あと移動距離が問題ですからね
確か総距離で30kmくらいでしたかね」
高橋はあえて景都達にその話題を振らなかった
しばらく話しているうちに皿の上には何もなくなった
「では、行きましょうか
軽く一周くらいはできるでしょう」
高橋はカートを押しながら先導する
「学院は大きく分けて5つのブロックによって構成されています
まず、ここは南門から入る南棟
ここは新入生が主に使うことが多く、座学室が多数設けられています
また、この棟からのみ新入生の寮へ行くことができます」
高橋は廊下を真っ直ぐ北へと進む
「ここが中央棟
ここには、大講堂や食堂、教官室、生徒会室があります
最も教官室と言っても座学担当以外の教官は違う棟の各人の部屋にいますが…あと、学院長室もここです」
高橋は食堂にカートを返して、今度は東棟へと進んだ
「ここは東棟
実験室が多く、ロジックの研究をしているサークルが幾つかあります
また、海外の技術分析もここでします
ロジック関係はこの棟だと思ってください
また、この棟から2回生以上の男子生徒の寮へ行くことができます」
高橋は北へ向かわず、西へと道を戻るようにして西棟へ向かった
「ここはマジックの修練を行う棟で東棟同様、こちらからは二回生以上の女子生徒の寮へ行くことができます」
高橋はまたも西棟から中央棟へ戻り、最後の北棟へ向かった
「不思議そうな顔ですね
北棟には中央棟からしか行けません
そして、ここには全校生徒の上位十人専用の寮です
一部屋一部屋が、他の寮生とは比べものにならないくらい広いです
この部屋を手に入れるために努力する生徒もいるくらいです
新入生には最も縁がない棟ですね」
「おや、これはこれは副会長殿ではございませんか」
中央棟からゴージャスな私服をまとった金髪の青年が数人の女性を連れて歩いてきた
「これは、金栄君
宴にはまだ早い時間ですが、どうかしましたか?」
「はんっ、新入生の歓迎式はこの寮生は自由参加を許可されている
この俺が新入生なんぞのために時間を割くわけあるまい」
「…そこの二回生は原則義務ですよ」
「ああ、そうかもな
だが、こいつらは明日まで帰省願いを提出し、受理されている
今回はたまたま帰ってきたが、書面上はまだいないのだよ」
「………そうですか
でしたら、ご自由に」
金栄は連れていた女性陣と一緒に寮の奥へと消えて行った
「…さて、ああいう奴もいますが、一応この寮に在籍している限りは一目がおかれます
君達なら来年にはここにくるかもしれませんね」
高橋はそういいながら南棟へ向かって歩き出した
「…あの寮に入るためにはどうしたら良いのですか?」
雅也が聞いた
「半年に一回評価会というものが開かれ、そこで好成績を納めたものに挑戦権が与えられます
挑戦者は自分が挑む相手を選ぶことができ、選ばれた相手は競う競技を決めることができます
…まぁ、時がきたら解るでしょう
さて、いい時間ですね…戻りましょうか」
四人は高橋に連れられて南棟の談話室に戻った
談話室に戻ると次々と同年代の人間が入ってきた
どうやら、男女合わせて40人程いるらしい
どうやら相当消耗しているらしく、ほとんどの人間は無口になっていた
そこへ理事の一人が挨拶のため入室した
理事の挨拶は、当たり障りのないまるで普通の高校の入学式の祝辞のようだった
理事は挨拶が終わると早々に部屋から出て行った
かわりに門の前にいた女性が入って来た
「はい、皆さんお疲れ様でした
この一年間皆さんの担当をします皆月 佳奈です
早速ですが、まず新入生寮に皆さんをご案内します」
皆月は新入生を連れて寮へと向かった
「では、部屋割りの前に注意事項です
このあと皆さんに鍵を渡します
ですが、その鍵は2つ1つの鍵になるものです
いいですか、絶対になくさないでください
あと、十八時より上級生からの歓迎パーティが予定されていますので、それまでに自室に置かれた制服を着て準備していてください
では、女性の方から案内します」
皆月は女子を引き連れて行った
「2つで1つ………ね」
あんまりいい気がしない…
しばらくすると皆月が戻ってきた
「はい、ではついてきてください」
手前からどんどん部屋から名前を呼ばれて行き、最後の部屋…
「では、最後は君達です」
「結局」
「一緒か」
俺の同室は雅也だった
だが、雅也ならもうしぶんなかった