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目覚める龍

奇跡とは、偶然により発生するものである

だが、ここで語られる真なる奇跡とは、自らの力で生み出すものである


ウィザード

それは、かつて全人類がその身に宿した奇跡を行使し、脈々と継承する者達である


これは富士の樹海に隠れるように存在するウィザード達の学び舎の物語である

日本のウィザードを束ねる院が運営する育成組織、学院がそこにある

学院は全国から素質あるものを集め、ウィザードとしての知識や技術を指導し、一定水準に達したものは院の一員として任務に従事することになる


午前零時

各地方の主要な駅から専用の列車が秘密裏に出発した

目指す駅は、学院前樹海門駅

そこから新入生は自分達で学院を探し出さなければならない

樹海は天然の迷宮であり、学院の存在を隠蔽する仕掛けが多数しかけられていた


午前八時

「ふぁー、長かったー」

列車が停車し、他の学生が列車から降りて学院を探し始めてから一時間経過したあたりで、(とどろき) 景都(けいと)は目を覚ました

「誰もいないか…

まぁ、ゆっくり探すかなー」

学院では、成績優秀者に奨学金と称して報奨金が与えられる

無論、この学院探しも成績に含まれる

だが、彼らにとって報奨金は二の次でしか無い

彼が最も欲するもの、それは名声と評価

学院の首席を取ることができれば、三流の家の出でも院の幹部クラスまで登りつめることができるとされている

無論、その家も同様に評価され、院との繋がりは強くなる

故に、一流と呼ばれる家の出の者はトップを取ることを半ば強制されていた

そんな中で轟の行為は異常と見えるだろう

「どうせ、ロジックで隠蔽がされているんだ

無駄にスタートダッシュするよりは他のやつの後ろから行った方が楽だろ」

轟がようやく列車から降りると同い年くらいの少年がホーム立っていた

「…間に合ったか」

彼は乱れていた呼吸を整えている

「へぇ、俺の他にも寝ていたやつがいるとはねぇ」

轟は少年に近づいた

「よう、あんたも寝坊か?」

「…誰だ?」

「俺は景都、轟景都

新入生だろ?仲良くしようぜ」

「俺は黒田(くろだ) 雅也(まさや)

訳あって今到着した」

「今?

おいおい、どこからきたかは知らないけどよ

列車以外でここまでくる方法なんてないはずだぜ」

「ああ、隠蔽されているからな

だから、線路を辿って走って来た」

「はぁ?走ってきた?」

不可能だと思う反面、それが事実だということがわかる

ここまで来るにはこの列車を使うしかなく、普通の方法では辿りついうことはできない

つまり普通じゃないウィザード

…面白い

景都は内心笑っていた

それはつまらないものだと思っていた学院生活がひどく楽しいものになると直感した瞬間だった

「おもしれぇ、おもしれぇよ

改めて自己紹介するぜ

轟景都だ、景都とよんでくれ」

「黒田雅也だ、雅也でいい」

「おう、よろしく

ところでよ、これって組んで進んではダメとかないよな」

「ああ、そんなルールはないはずだ」

「おし、じゃぁ一緒に行こうぜ

俺と一緒だと色々得するぜ」

二人は揃って駅を出た


駅を出た二人の目の前には樹海が広がっていた

「これはロジックでの幻覚作用か」

人はないものでもあると認識することであるような行動をとってしまう

これもそれを利用したものだ

「任せな、この類のロジックは俺には関係ない」

景都が右の拳に力を込めた

「ふぅ…解放」

景都の拳は樹海へ真っ直ぐと伸び、遥手前で止まった

………パキンッ

何かが割れるような音がした

ふぉぉぉぉ………

風のような何かが通り抜け、樹々が揺れる

その中で不動のものが見受けられた

「あれが幻覚でルートだ

行こうぜ」

「空気振動…いや、空間振動と呼ぶべきか」

「おお、一発で理解したか

そう、俺のマジックは振動

まぁ、多少のロジックも使えるがメインはこいつだな」

「いいのか、ばらして」

ウィザードにとって個人の能力の漏洩は死に直結する場合がある

「かまわねぇよ、ばれたところで関係ないからな」

樹々は振動の影響で葉を散らしており、二人は葉が落ちていない樹を目印にして進んだ

しばらく歩くと二人は洞窟の入り口へとたどり着いた

「光源はないな…」

「ロジック、アルス」

雅也の手に灯りが生まれた

「ほほぉ、やるじゃん」

「初歩中の初歩だ

先に進もう」

雅也はああいったが、今雅也が使ったタイプは発動時に範囲と強度を決め、それを維持することが必要になる

それはロジックにおいて経験とセンスが要求されるものであり、雅也のロジックは明るすぎず、暗すぎず、10m先まで照らす見事なものだった

二人は、景都が空気の流れを感知し、雅也は明かり維持し続けた

そして、開けた空間にたどり着いた

…………侵入者感知、これより排除する

ゴゴゴゴゴ………全長5mはあろうかという岩の巨人が立ち上がった

「ちっ、あいつの後ろにある通路がゴールみたいだ」

「倒さずにければ楽だが、動かないところをみるとそういうことは出来ないらしい

景都、さっきのは使えないか?」

「ダメだ、強くやりすぎちまったら洞窟が崩れる

せめてヒビでも入ってりゃ、直接ぶち込んで砕くんだが…」

「わかった、俺が先に切り込んできっかけを作る

そこを狙え…ロジック、アルスレイ」

雅也の灯りが一回り大きくなると宙に浮き、空間全体を照らした

「ロジック、アクセル」

雅也一歩踏み出すと体ごと消えたように加速する

タンッタンッタンッ!

素早いステップで巨人に近づき、巨人の右足にキックを打ち込む

バンッ!

巨人の足はひびが走るどころか、1mmの後退もはなかった

ブフォォォンッ!!

巨人の左腕が前方を横薙ぎにする

「アクセル、バースト」

ザザッ!!

先程よりも速いスピードで雅也が後退する

「ロジック、ジャンプ」

タンッ!

雅也が軽く地を蹴ると巨人の頭くらいまで跳び上がった

すかさず、巨人は右腕が空中の雅也目掛けて動く

ブゥゥゥゥン!!

………ピキッ

巨人の右足にひびが走る

そして、右腕が宙に伸びているためそこまでの道がガラ空きになっていた

ざしっ……

景都の足が地面踏みしめる

パシッ…

拳がヒビの部分に接した

「解放………砕」

…バキバキバキバキ!!!

巨人の右足に走った小さなヒビが急激に右足全体に拡大する

「砕けろ」

ゴゴゴゴゴゴ!!!!

脆くなった巨人の右足は自重を支えることができなくなり、前方へと崩れるように倒れた


巨人が塞いでいた道をしばらく歩くと洞窟を抜け、湖畔へと出た

「あれが『学院』か…」

そして、その反対側に古い城のような建物が見えた

「日本の組織なのに洋風な城とは、これいかに?」

「………さぁな

それで、どうやって反対側に行くかだが」

「まぁ、普通の奴らならロジックで飛んで行くかマジックで足場を作るのかね」

「………、水中を感知できるか?」

「ん?ああ、もちろん」

景都が右手を湖に近付けた

ぴちょ…

…ザバッ!!!

景都の手が触れて直ぐに湖の中央で何かが浮上した

「っ…」

シュバッ!!

その何かが水の塊を二人に向かって放つ

速い!?

不意をつかれていたため、回避が間に合わないと判断した景都は防御の姿勢をとった

「………」

バァァァァンッ!!!

水の塊は二人がいた場所の半径3mをごっそりえぐっていた

サァァァァァ…………

そして、湖には濃霧が広がり、見通しは効かなくなった

「…………あっぶねぇ」

景都が気が付くとさっきまでいた場所が水によって地面ごと削られていた

「あんなのがいるのであれば迂回するしかない

…行くぞ」

雅也は景都を先導するように歩き出した

だが、その背中には先程の存在感はない

「………」

景都にはそれが雅也の『マジック』だと理解していた

しかし、それを聞こうとはしなかった

「…俺だけ言わないのはフェアじゃないな」

沈黙した間を打開したのは雅也本人だった

「俺は俗にいう影法師の一族だ

最も満足に技を使えないが故に烙印を押された落ちこぼれだ」

「…はぁー、あの一瞬で俺ごと移動出来るのに落第とは厳しいね」

ウィザードにとって瞬間移動は最高難易度の技術と言われており、素養があってもそれを修得するだけ20年かかると言われている

「ただの力任せだ、たいしたことはない」

「そんなものかねぇ…

ところでさっきの奴何だったと思う?」

「………わからん

ただ生き物のような気がした」

二人は、湖に触れないように周りを通り学院正門へとたどり着いた

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