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言いたかった言葉
ハマルさんと一緒にいたのは、双子のポリュデウケース君とカストール君だった。
「お姉さんも飛ばされてきたの?」
顔がそっくりだから、どっちがどっちかは分からないが、多分ポリュデウケース君だろう。
「どうやらそうみたい」
「ねえねえ、戻ったら、またお話聞かせてくれる?」
きっとカストール君が、私に近づきながら声をかける。
「ええ、いろんなお話を聞かせてあげるわ」
それは、これまでと余り変わらない内容だろう。
でも、彼らにはそれで十分なのだ。
「よし、今度はこっちだな」
ハマルさんが私たちを案内する。
空を飛んでいるからか、どんどんとおじさんたちの家が小さくなっていく。
私たちの呼吸は大丈夫なのが、一番不思議だが、それよりも私は、娘さんたちに別れを言いたかったと思っていた。
いつの日にか、きっとただいまという時が来る。
そう信じて、私は飛び去った。