どんまい!
何度作っても、娘さんは、砂糖の量を多めに入れてしまう。
何しろ、何を作るにしても、軽量という概念がないようにも思えてくるほどだ。
袋から直接、目分量で投入されていくその粉末の数々は、私が指摘を続けても直ることはなかった。
だが、3時間ほどみっちりと教え込んだおかげで、最初とは比べ物にならないほどおいしいクッキーが、どうにか出来上がった。
ついでに、好きそうだからというそれだけの理由で、プレーン、チョコレート、ミルクの3種類を用意することとなった。
なぜか大半が私が作ったのだが、とりあえず娘さんが作ったプレーンでもダマにならず、ちゃんとした適正な範囲の甘みになっているから、大丈夫だろう。
ただ問題は、作り方を間違えた山のようなクッキーの数々である。
私は娘さんとしばらくその山を見て、ぽんと不意に娘さんの肩をたたく。
それから、はっきりと告げた。
「どんまい!」
あとは簡単だ、さっさと逃げるだけ。
部屋へと戻ると、携帯で掲示板の続きを見る。
押しつけられた山となったクッキーの半分をつまみ、どうにか台所にあったアメリカンコーヒーで洗い流す。
食べれないわけではないが、どうも頭が割れそうに痛くなるクッキーだ。
だが、それどころではない事態が起こった。
私の体が、急に軽くなったのを感じたのだ。