んー、味付けが濃すぎるなぁ
娘さんが彼氏と仲直りした翌日、私は携帯の掲示板に重要な情報が書き込まれているのを見つけた。
どうやら、世界中のいくつかのところで、同一の時刻に大雨と共に人や物が落ちてきたという。
世界崩壊の前兆かとネットでは騒がれているが、確かに、私がいた世界は崩壊したも同然かもしれない。
そして、私もその目撃者の一人だとして、いろいろと情報を交換してみた。
分かったことと言えば、アイダホ地域では私一人だけしかいないということと、アメリカでは3件、東アジアで2件、中央ヨーロッパで3件の目撃例があるということだ。
でも、彼らのことだから、きっと元気にしているだろうと思っていると、コンコンとドアがノックされた。
「どうぞー」
娘さんが、ひょっこりと顔をのぞかせる。
「ねえ、クッキーやいてみたんだけど、味見してくれないかな」
「いいわよ」
トレイにクッキーを置いてあったので、熱々のクッキーを一つつまんで食べてみる。
トロットと溶けたのは、カラメル状になった砂糖。
それがダマだらけのクッキー記事の中にあるザラメとよくマッチしている。
「けっほ、けほけほ」
思わずむせてしまうほど、砂糖だらけだった。
甘すぎる。
私は、まっさきにそう考えたが、もしかしたらこの土地ではこれが普通なのかもしれない。
だから、私は娘さんに言った。
「んー……ちょっと味付けが濃すぎないかなぁ」
「そうかなぁ。これでも控えめにしたつもりなんだけど…」
「ねえ、私がクッキー一緒に作ろうか。昨日約束したしね」
「分かった」
娘さんは、何事もなさそうにして、その甘々なクッキーをつまみながら、一緒に台所へと向かった。