ぐっすりとお休み
部屋に戻ると私はすぐに検索を始める。
ネットでの話題を拾うために、掲示板をサーフィンしていると、横の部屋から度っ丹波ったんと大騒ぎしている音が聞こえてきた。
まるで、犬と猫が騒ぎ立てているような感じだ。
とはいっても、大雨が降っているわけではなく、娘さんが大騒ぎしているだけのようだ。
私は携帯電話をベッドの上において、忍び足で横の部屋のドアをちょっとだけ開けた。
「ムカつくー!!」
声までは向こうでは聞こえなかったが、どうやら本気で怒っているらしい。
部屋中がしっちゃかめっちゃかだ。
「入るよ?」
こそっと私は声をかける。
すぐに娘さんは気付いて、騒ぐのを止めた。
「どうしたの。横の部屋まで響いていたけど」
唐突に枕が投げつけられる。
「あっち行っててよ!」
その顔は、泣いていた。
「どうしたの」
私はもう一度聞き返す。
娘さんはわずかに顔を俯かせて、私から視線をそらしながら言った。
「…振られた」
「あらら」
私は落ち着いた娘さんをベッドに座らせ、その横に座った。
「それはね、ぐっすりと眠ってしまえば、何もかも忘れるわよ」
「それでも忘れなければ?」
「一発殴りに行けばいいのよ」
さらっと私は言った。
娘さんは考えて、それから私に答えた。
「そうよね。男なんていっぱいいるものね」
「そうそう。一人に固執する必要がある?」
「ないない」
涙をぬぐって笑ってみせる娘さんは、とても輝いているように見えた。
それから、私たちは仲良くなった。
いろいろと話し合って、それから娘さんはお昼寝をすると言ったので、私は部屋から出て、検索の続きを始めた。