蹴り飛ばされた私
なぜアイダホに来てしまったかは、さておき。
私はしばらくの間、おじさんのところで身を寄せることとなった。
理由は深くは聞いてくれなかったが、ありがたいことに、衣食住は確保してくれて、さらには警察にも通報しないと約束してくれた。
その代わりとして、ぐちゃぐちゃになった土地の整地作業をすることになったわけだが、それぐらいは簡単なものだ。
1日かからずに、全ての土地の整地を終わらした。
「いやはや、お嬢ちゃん。君はすごいなあ。数十ヘクタールの土地をあっというまに整えてしまうんだから」
おじさんが喜んでくれると、私もうれしい。
「これぐらいは当たり前です。下宿させていただいていますから」
私は朝ごはんを食べながら、おじさんへと話す。
そこへ、誰かがやってきた。
「やあ、おかえり」
おじさんは、振り返りもせずに、朗らかな同じ口調でその人へと声をかける。
「ただいま。って、また女の人ひっかけたの」
「何を言っているんだ。この人は、空から落ちてきたんだよ」
「ハッ。お父さん、どうせラリッていたんでしょ」
娘さんらしいその人は、私をじっと見ている。
「ふーん、こんな人なんだぁ」
そう言う娘さんに、私は立ちあがってお辞儀をしてから話しかける。
「昨日からお世話になってます」
だが、名前を言う前に、娘さんが言葉を投げつけてくる。
「本当に空から落ちてきたっていうんだったら、なにか特殊な力でもあるんでしょ?」
そう言った娘さんに、私はため息をついて近くにあったコップを手を使わずに娘さんに差し出す。
「とりあえず、落ち着いてください。まだ、自己紹介もまだなんですから」
そうは言ったものの、娘さんは驚いて声が出てこない。
「あんた、ホントに?」
「そうですよ」
そう言った瞬間、足に痛みを感じる。
「ったー」
どうやら、娘さんが蹴ったようだ。
「ッハ。これぐらいの力、きっとあたしにだってあるさ」
きっとと言っていることから、きっと娘さんには力が無いのだろう。
家の2階へと上がっていく娘さんを見ながら、私はおじさんに言った。
「私以外に、なにか空から降ってきたって話、聞いてませんか」
「そうだなあ、インターネット見れば、何か情報があるかもな」
私に、携帯を貸してくれたおじさんに礼を言って、私は部屋へと戻るために2階へと上がった。
どうやら、娘さんと横並びになるようだ。