連絡、待ってるから
ある日、私は娘さんへ手紙を書くことにした。
本当はしてはいけないと知っている。
でも、どうしても気になってしまったからだ。
私はその手紙を瓶に詰め、扉のところへ向かった。
扉のところには、ゼウスさんがいた。
「…待っていたよ」
「どうしたんですか、ゼウスさん」
私は瓶を背中に隠した。
「君が何をしようとしていることは知っている。君がそれをすることが、ダメだということも君自身は知っている。でも、私はそれを止めない」
「どうしてですか」
瓶は相変わらず、私の背中で流されるのを今か今かと待っている。
「君は、それが正しいと思っているからだ。規則でダメだと言われていても、キミが出会った娘さんとおじさんが心配なんだろう。だから、君は規則を破ろうとしている。君が正しいと思う行為を、私がどうして止めることができようか」
ゼウスさんは私にさらに付け足した。
「ただ、規則は破ったことについては、罰を受けなければならない。それは覚悟しておくべきだろう」
言いたいことは、おそらく言いきったのだろう。
私を見ずに、ゼウスさんはどこかへと行ってしまった。
私はどうするべきなのだろうか。
結局私は瓶を流した。
流れていく便を眺めながら、これから私はどうなるのかが気になった。
きっとこの返事は私へと来ないだろう。
でも、いつの日にか、娘さんたちから手紙が来る。
それだけが、私を、ここまで導いてくれた。
「どうか、お元気でね」
私は瓶が扉を通っていったことを確認した後、ネットを元通りに戻して、再び櫂を海へとゆっくりとさし入れた。




