何でもないとごまかす
平穏が戻ったのは、延々1カ月後だった。
原因は、どうやらゼウスさんが間違ってドアを開けてしまったためらしい。
今では、封印をして、門番を立てるかどうかを話し合っている段階だ。
誰になるかは分からないが、おそらくゼウスさん以外になるのは既定路線だろう。
こうして私は、今日も櫂をさし入れて、ゆっくりと船を動かしていく。
そして、あの楽しかったわずかな時間を思い返すのだ。
「…クッキー、うまく焼けてるかな」
なぜか思い返されるのはそのことが多い。
ちゃんと彼氏と付き合えているのかとか、想うところはいろいろとあるだろうが、それが一番なのだ。
ややもすれば、砂糖ばかり入れ過ぎるという問題をどうにかしているのだろうか。
離れてみれば、あの甘ったるすぎるクッキーも、懐かしく思う。
そのことを見抜かれたのだろうか、ガニュメーデースさんのところで、シチューをごちそうになっている間に聞かれた。
「なにかあったのかい」
コップを白い布で拭きながら、私へと質問をしてくる。
「ふぇ?」
思っていない時に、想ってもいない質問をされると、何も答えが出てこない。
「いや、ぼんやりとしているのが最近多いからさ。何かあったのなら、相談に乗るよ」
だが私は、なんでもないですと言って、シチューを一気に食べた。




