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接着質な男

作者: 湯気

粘着質な男というのはよく聞くものだ。しかし、俺は接着質な男であった。

実際にそんな単語はないだろうが文字で表現するのであればそれが一番適切である。

理由は簡単だった。唾や汗、尿など俺の体から出た液体はすべて接着剤と同じ性質を持っていたのだ。

汗をかけば服がくっ付いて脱げなくなってしまい。トイレで用を足せばトイレが詰まってしまう。

唯一の救いは口の中が唾液によりくっ付かないことである。どうやら俺の体液は空気に触れた時点で接着剤に変化するらしかった。

そんな体質のせいで俺は今とんでもない窮地に立たされていた。

学校で突然の腹痛に陥っていたのだ。

ヤバイと思った時すぐにトイレに駆け込めばよかったのだ。しかし、俺は授業中に抜け出すことに恥じらいを感じ我慢をしてしまった。その結果、腹痛による脂汗で手が机に引っ付いたのだ。

何とか手が取れないものかと左右に動かしてみる。俺は一番後ろの席だったため多少おかしな動きをしても気付かれることはないハズだ。

しかし、左右に動かすと机がガタガタと鳴り周りから奇異の目で見られた。

「静かにしろよー」

黒板に文字を書いていた教師が適当な注意をした。

周りの目が逸れたことを確認し俺は次の手段に出ることにする。

立ち上がり机を引っ張った。

外れるかと思いきや机は宙に浮いてしまう。ここまで接着力がすごいとは思ってもいなかった。

その時、不意に教師が此方に振り向いた。彼の眼には授業中に机を持ち上げている生徒が写っている。俺だった。

「おい、どうした立ち上がって……トイレか?」

「い、いえ……特に何もありません」

周りの目が向く前に着席した。教師は怪訝な顔をしながらも授業について話し始める。

俺の腹痛はもはや限界の域に達していた。少しでも油断すればクラス中に恥辱を晒してしまう。

しかし、この手を取らなければトイレに駆け込むことすらできないのだ。

俺は一か八かの賭けに出ることにした。

まず床に唾を吐いた。空気に触れることでそれらは接着剤となる。

机の脚をそこに押し付ける。これで机が浮いてしまうことはなくなった。

俺は先ほどと同じように足に力を込めた。

手が机から外れた。勢いで後ろにひっくり返ってしまう。

イスが倒れる音がしたのと同時にチャイムが鳴った。。

「おーし、今日の授業はここで終わり。ちゃんと予習、復習しとけよー」

俺は教室から飛び出しトイレへと向かった。さっき倒れた衝撃で我慢の限界に達していたのだ。

素早く近くのトイレに入り洋式便所に走りこんだ。

「間に合った!」

後はズボンを下ろすだけだ。俺はベルトを外し一気にずり下げようとした。

しかし、ズボンは降りない。

俺は、気付いた。腹痛による油汗は体中から噴き出していたのだった。

お読みいただきありがとうございました。


体液が何かに変わるという物語を作りたかったんですがまさか接着剤になるとは思いませんでした。たまたま近くに接着剤があったために生まれた作品です。


汗が出ただけでもくっ付いてしまうため夏とか大変なことになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 発想が面白い点。実際に自分がこんな体質だったら……と、想像してみたら物凄く不便そうでした。そうやって考えさせられる設定が良いと思います。 [気になる点] 喋る時に口はくっついてしまわないの…
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