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潜入 二

俺は、凜がたまたま見ていた学校の地図で丸暗記したため、だいたいどのルートを通れば安全地帯なのかは、だいたいわかっていた。


凜からすれば、来たこともない場所を、たった一回見た地図なんかで覚えられるのはおかしいとのことだったのだが、別に自分的には普通だ。


さて、この学校は、教室は一階、二階。


副教科の教室が三階となっている。


ひとつに繋がった校舎のため、会議室から一番離れた道筋を通っていけば、先生たちの会議をすり抜けることができるだろう。


やっていることはまるで泥棒だが、これでも正真正銘の警察だ。


さて、普通の生徒用の出入り口は閉まっている。


学校を警備する人間がいないのだから、当然の処置である。


学校は個人情報の溜まり場だ。


逆に、がら空きだった方が怖いくらいだ。



「凜ちゃん。どうやって入る?」



「そうよね。中に入る方法がないから、入りようがない気がするんだけれど」



「じゃあ、ハッキングするか?」



「それって……大丈夫なの?」



「公務だから大丈夫だよ…………たぶん」



言葉の最後に微妙な不安を残しておきながらも、一応大丈夫だと思う、と信じたい。






さて、非常口の手前に来た俺と凜は、適当な針金でハッキング作業を行っていた。


やがてすぐに中の扉が開く。



「よし。できたじゃん」



「なんか、やってることは泥棒より質が悪いんじゃ……」



凜はボソッと呟くが、そんなことはもう後の祭りである。



「じゃ、今から、屋上まで行くぞ?」



「やっぱり、マジで行くの?」



「マジだよ!ほら、行くぞ?」



「うぅぅ……」



凜は今回、本気で拒否反応を見せるかもしれない。


俺としては、そうなってもらわないように祈るだけである。



この校舎は、横に長い作りになっていて、階段が、校舎内の西階段、東階段、中央階段の三種類、それに、非常用階段という校舎外の階段で計四種類ある。


今上っているのは東階段だが、屋上に行くためには、中央階段を利用する必要がある。


しかし、中央階段は会議室のすぐ近くを通るため、上手くやらないと、足音ですぐにバレてしまうことも考えられるのだ。


俺と凜は、泥棒が家宅侵入をするように、ゆっくりと慎重に入っていき、忍び足で歩く。


少しでも足音が鳴れば、誰もいるはずのない校舎で誰かがいるのがモロバレになってしまうのだ……。



「警備員くらい、一人いてもいいと思うのにな」



「そういえば、一人もいなかったね」



三階まで上がったときに、警備員の姿が見えないという違和感を抱いた。


そりゃ、確かに、見えない方がこっちとしてもありがたいのは確かではあるが、こういうときにいない、というのは、若干ではあるがおかしい気がした。


一度警備を終えたから、仕事は終了したと思っているのだろうか。


だとしたら、考えが甘いという話である。


まぁ、入っている俺たちがいうべき言葉ではないかも知れないが…。


今から、三階を通り、中央階段を歩く。


階段同士を繋ぐ通路が一本道のため、途中に誰かに見つかりそうになっても、隠れるスペースを確保しにくいということだ。


上手く教室に侵入できればいいが、もしもそこの部屋の鍵が掛かっていたら、それこそ本当におしまいだろう。



「凜は後ろを見てて。俺は前を見てるから」



「う、うぅ、後ろに……、なんか、幽霊みたいな、やつがいたら、どど、どうしたらいい?」



「知るかよそんなこと。肩でも叩いて呼べ。ま、そんなもんはいないから、安心しろ」



「で、でで、でででで、でも………」



「とにかく。ちゃんと見張っててくれ」



凜は少し震えながらも、ゆっくりと後ろを歩いて、警戒してくれた。




幸いなことに、前にも後ろにも、人の気配は感じられずに済んだ。


まぁ、会議中なのだから、先生がいるはずがないのは当たり前の話ではあるのだが。


さて、中央の階段をようやく登り始める。


十何段かある階段の先には踊り場が設けられ、一度反転して上に向かうようになっている。



「やっぱり屋上は暗いな……。まさか屋上も開いてないか?それだったらまたハッキングすれば問題ないしな」



「大丈夫……幽霊なんていない……幽霊なんていない……幽霊なんて……」



凜は一人で、「幽霊なんていない」って暗唱していた。


まぁ、分からなくもないが、暗唱する必要があったのかないのか……。



「じゃ、とにかく、任務を遂行す……」



「浩くん…?、ど、どうしたの……?」



「静かに……誰かいる……」



俺が誰かの気配に気が付いたのだ…………。


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