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人形 二

少しグロいシーンがあります。

あと、想像以上に怖い話になりました。

その学校では、しばらく、屋上を出入りすることを禁止した……。


屋上に入ることができないのは、先生も同じだったため、もうお供えをすることもなく、次第に彼女のことも、忘れ去られていった……。


やがて月日が経って、先生たちも、屋上を閉鎖した理由を知る人は少なくなった……。


大半の先生は、落ちたら危険だから、という認識で、彼女のことを知る人も、非常に少なくなっていた………。


でも……、生徒たちの間では、『自殺日本人形』という名前で、学校の七不思議として広く定着してしまっていた。


屋上を解放してほしい、という生徒たちが大量に現れた。


無論、彼らの目的な七不思議の真相を確かめる、ということが目的に過ぎなかったのだが、先生たちも根負けしたせいで、屋上が再び、解放されてしまったのだ……。




そして、悲劇は起きた……。


とある六人の男子生徒が、噂を突きとめるために、屋上へ向かった。


放課後だったせいか、人も疎らで、夕日が差し込めていた……。


屋上には、何年も前に自殺した超優等生であった女子生徒のお供えとして、数体の日本人形が置いてある………。



『本当に日本人形が置いてあるぜ』



男子生徒はそう言ってはしゃいでいた。


普通、七不思議となるのは、事実とは全く無縁の、根も葉もないことばかりだから、実際にあったのを見て少し驚いた。


そして、その中心には、噂通りに一つだけ違う方向に向けられた、一体の日本人形が置かれていた。



『うわっ!マジで一体だけ違う方向向いてやんの!』



そういって、その日本人形を指差して笑った…。



この六人の男子生徒のなかには一人、霊感が強い人間がいた。


彼はしぶしぶ着いてきたわけだが、一人が人形を指差していたのを見て、急に真っ青な顔をして言った……。



「ぁ………うぁ……う…あぁ……」



「ん?どうしたんだ……?」



彼は、恐怖の目に染まり、腰を抜かし、よくわからない言葉を発しながら、後ろに下がっていった。



「どうしたんだよ!」



「そ、その人形の……真ん中のやつに……、幽霊がいる………。こっちみて……笑ってるっ…」



しかし、他の人が見ても、全く何も見えない。



「ま…、お前が言うんだから、軽視も出来ないわな……。ま、帰るか」



「む、無理だ……たぶん、帰れない……」



「何でだ?」



「今、その幽霊が……、鍵をかけた……。外側から……」



「は?意味がわかんねぇよ。鍵がかかったくらいなら、内側から簡単に開くだろ」



普通、鍵は外からの侵入を防ぐためのもののため、外側に鍵穴がついている。


ここの場合も、校舎の中側に鍵穴が取り付けられているため、こちらからなら簡単に入れる。


と、思ったが、



「な、なに……開かねぇ……」



「マジか……!?」



「ほらな…!?無理だ……。もうこれ以上は関わらない方がいいよ…。

マナミヤ…ナカタナカハ…」



ついによくわからない呪文を唱え出したのだ。


その手はガタガタと震え、泣き出しそうなその顔から、必死で声を出しているようだ。



「ぐっ。ぐっ。やべぇ………。押しても、引いても、っつうか、こっちからは押し戸のはずなのに……」



「ロナカハナマタヤナタヤラナタナヤハナタロワタカナハヤラ」



「どうしたんだよ!!落ち着けって」



「○×△◇※□……!!!」



すると、さっきまで呪文を唱えていた生徒が、発狂し、倒れた……。




カタカタカタカタ………


という音が聞こえる。


男子生徒が出している音ではなかった。


硬質の物同士が当たるような音。


金属などのものではなく、乾いた木が互いにぶつかり合うような音だ。




カツカツ………



カツカツ………



同じようなテンポでその音が響く。


屋上のため、風も結構あるはずだが、なぜかその音だけは、耳に強く鳴り響いた。



「お、おい………あの人形……動いてない…か?」



それは真ん中の、あの、向こう側を向いていたはずの人形だ。


確かに、確かに、顔は向こう側を向いていた……、はずだったのに………今は、男子生徒たちを、「じっ」と見ていたのだ…………。



「ねぇ……」



「ひっ!」



少女の声が聞こえる。


この場にいるのは、男子生徒と、おかしな「日本人形」だけ。


女の子の声が聞こえるなんてことは、あるはずがないのだ。



「い、今……聞こえたか?」



「しゃ、しゃべっ……しゃべ……しゃ、しゃべっ………しゃべった………。あの人形、喋った」



男子生徒一人が、震えた。


そして、全員の意識が、あの日本人形に集中する。



「ねぇ……。あなたたちは……また…私を……いじめるの……?」



やはり、あの人形が喋ったのだ。



「な、なんなんだよ?俺、お前のことなんか知らない!」



「嘘つかないで……。私……知ってる…………。私の机に……塵を捨てたり……、私の靴に……画鋲を入れたり……、私の……鞄の中に……虫を入れたり……、殴ったり……蹴ったり……、お金取ったり……、提出物を提出させなかったり……、私の宿題だけ……ゴミ箱に入れたり……、委員会の役員を押し付けたり……、カンニングできるようにさせたり……、ナイフで頬を切ったり、腕に刺したり、耳に無理矢理イヤリングをさせたり、無理矢理髪の毛を引っ張って抜いたり、雑巾を顔に押し付けたり。


私をいじめて……いじめて……何が楽しいの……っ……何が、何が……」



「待て……!違う……!俺らはお前の知ってるやつじゃない…っ!」



「これも……いじめなの?私のこと……いなかったことにするの……?死んだから……、存在しなかったことにするの……?」



「違うっ!!だから…!俺は……お前が生きてた時代から何年も後の……」



「いじめないで……いじめないで……いじめないで……いじめるやつは…殺してやる!!!」



すると、その人形は、となりにあった人形の、両腕を切り裂いた。



「これはあなた……」



そういって、彼女は男子生徒の一人を指差した。


すると、



「う、うぅ……っ!うがぁぁぁぁ!!!」



彼の両腕がぐちっ、と引きちぎられ、出血多量となり、意識を失った。



「きゃははは。これで私の仲間よ……。はははははは!!」



すると、反対側の人形を持ち、首を引きちぎる。



「うっわぁぁぁぁっ!!!」



すると男子生徒の一人の首がちぎれた。


その瞬間、残りの男子生徒は、自分にはもはや、助かる術がないことを、悟ったのだ……。


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